バブル期に登場した国産グランツーリスモは世界と勝負できたよね

「グランツーリスモ」「世界で勝負できる車」バブル時代生まれの高級セダンたち

1980年代は大衆車やスポーツカーのみならず、もちろん国産高級セダンにも大きな変革をもたらす時代でした。

当初は中型タクシーや社用車、公用車などで輸入車に取って代わることを目指し、マイカー時代には企業の管理職など成功した人物が乗る、ステイタスシンボルとしての国産高級セダンは、そうしたイメージが染み付いた保守層からの脱却を図っていきます。

そしてそれは、互いに同じ路線で切磋琢磨していたトヨタと日産の高級セダンにとって、それぞれのカラーを色濃く打ち出す分かれ道でもありました。

日産 セドリック/グロリア グランツーリスモ(Y30・1987年)

元祖「やっちゃえ日産」的な国産ヒール系高級スポーツセダン

日産 セドリック 4ドアハードトップV20ツインカムターボ グランツーリスモSV(7代目Y31)

430系(1979年)で国産乗用車初のターボ車を設定以来、なんとなく保守層向けセダンからの脱却を図りかけていたセドリック/グロリアにとって、決定的な転換点となったのが1987年にモデルチェンジしたY31系の「グランツーリスモ」でした。

ブロアムを筆頭とする従来の保守層向け路線とは全く別に、2リッターツインカムターボを搭載した痛快な動力性能とアグレッシブな外装を持ち味とする「ちょいワル高級スポーツセダン路線」を打ち出したのです。

後にライバルのクラウンもアスリート系でスポーツセダン化しますが、サワヤカな優等生的なライバルに対し、セド/グロは若い頃にヤンチャしていた人物がそのまま出世したようなヒール系の魅力で攻めていき、そのまま最終型のY34系まで両者の特徴となりました。

後にライバルのクラウンもアスリート系でスポーツセダン化しますが、サワヤカな優等生的なライバルに対し、セド/グロは若い頃にヤンチャしていた人物がそのまま出世したようなヒール系の魅力で攻めていき、そのまま最終型のY34系まで両者の特徴となりました。

日産 シーマ(初代・1988年)

端正?エレガント?何それと言わんばかりの豪快パワフル高級セダン

日産 セドリックシーマ タイプIIリミテッド(初代)

セド/グロの「グランツ」系「ちょいワルオヤジ路線」をさらに進化、バブル時代に乗ってエナメルの靴にアルマーニのスーツ、高級サングラス、とどめに18金ネックレスでもしていそうなバブル貴族の高級スポーツセダン。

3リッターツインカムターボにフルブーストをかけると、高級セダンにあるまじき「テールを沈めた豪快な加速」で走り去るという、それまでの個人向け最高級セダンに求められた要素をどこかに置いてきたようなクルマで、国産らしからぬイタリアンルックスも魅力。

セド/グロともども、「トヨタとは違う日産らしい魅力」を全開で振りまいて国産高級車のあり方に一石を投じ、願わくばそのままの路線で突き進んでほしいものでした。

セルシオ登場とバブル崩壊で迷走した挙げ句に年々シェアを落とし、2022年で廃止されたのは、単にセダン不振ばかりが理由ではなかったと思います。

トヨタ セルシオ(初代・1989年)

世界で通用する高級セダンへ、長い道のりの始まり

トヨタ セルシオ(初代・画像は海外仕様の初代LS400)

世界的にはあくまで大衆車メーカーに過ぎなかったトヨタが「日本でも世界で通用する高級セダンを作れる!」と証明するため本気を出し、徹底的なマーケティングで新時代の富裕者層へターゲットを絞った超高級セダン。

元気よくターボエンジンでカッ飛ばしていた日産のシーマやセド/グロを尻目に、新設した高級車ブランド「レクサス」のフラッグシップとして世界の高級車作りへ影響を与えるとともに、日本国内でもライバルに「こりゃたまらん」と地力の差を見せつけました。

ただ、日本では2005年までレクサスを展開せず、トヨタ セルシオとして売る間にクラウンの立場が中途半端になり、4代目からレクサスLSへ移行する頃には反撃してきた海外のライバルに対し分の悪さが目立つなど、初代の頃の威光が見られなくなっているのは事実。

電動化や運転自動化でクルマのあり方が問われる今、初代セルシオの初心に帰り、もう一皮むけてほしいものです。



おすすめの記事