コロナ禍での運動不足に警鐘…医師が言い切る科学的理由

コロナ禍で運動不足な人に伝えたい… 現役医師が「運動が大切」と言い切る“科学的な理由”

健康ブームの一方で、コロナ禍になり運動をする機会が減ってしまった人も多いと思います。

最近ではオミクロン株が猛威をふるい、多くの感染者がでていることで部活動やスポーツ活動の機会が減ってしまっている人も多いのではないでしょうか。

感染予防対策として、ジムなど人が集まる場所には行かない、在宅勤務となって外を歩かなくなった、など皆さん思い当たることがあると思います。

長引くコロナ、運動する人が減っている?

5000人を対象としたある調査では、全体として運動やスポーツを行った人の割合が約4%減少したと報告されました。(「新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査」 2021年2月調査 笹川スポーツ財団)

その他にも1日あたりの歩数が減少した、テレワークや座っている時間が長くなったことにより肩こりや腰痛などの不調の訴えが増加したなどの意見も聞かれます。

スポーツ庁からも「新しい生活様式におけるスポーツの在り方 コロナ禍の健康二次被害」として次のような資料がでています。

運動やスポーツと言うと、そのために時間をとって走らないといけない、ジムに行かないといけない、と思っている人も多くいますが、学術的には考え方が変わってきています。

実際に国が出している指針においても「運動」という言葉から「身体活動」という言葉に変化しています。

これは家事で身体を動かしたり、通勤の時に歩いたり階段を上ったりするときも身体を動かしているため、ずっと座ったり寝たりしているのとは違うからです。

このように多くの人は意識せずに身体を動かしていましたが、コロナ禍で外出を控え、テレワークになったことによって身体活動の機会そのものが減少したことは大きな問題だと思います。

今こそ意識的に身体を動かしたり、運動したりすることがとても大切です。

なぜ運動したほうがよいのか?

運動を積極的に勧めても「時間がない」「なかなか自分ではできない」という返答が聞かれます。

ではなぜ運動をしないといけないのでしょうか。

実は運動不足、身体不活動によるリスクは多くの国で指針が出され、警鐘が鳴らされています。

2012年の報告では、全世界の死者数5700万人/年のうち、運動不足は530万人の死亡に起因したといわれています。

また少し古いデータですが、日本での報告では、運動不足はリスク要因別の死亡者数の第3位となっています(平成26年度厚生労働白書より)。

このように運動不足や身体活動不足は多くの人の死亡リスクとなっていることが分かります。

一方で運動することの効果についてですが、WHOが推奨する運動量を行うことによって全世界の早期死亡を15%減少させ、390万人/年の早期死亡を避けることができると報告されています。

このように運動不足や身体不活動のデメリット、運動することのメリットは科学的にも明らかになってきていますが、なかなか運動できない人が多いというのが現実です。

有酸素運動は「週に3回」

運動は主に有酸素運動、筋力トレーニングに分けられます。

これに加えてストレッチやバランストレーニングも比較されることがありますが、今回は有酸素運動と筋力トレーニングについて考えます。

有酸素運動というとウォーキングやジョギング、水泳などが挙げられます。有酸素運動の目的は全身の筋肉のエネルギー消費です。

そのため心拍数があがる程度の運動負荷で、ある程度の時間、運動を継続する必要があります。

このような運動強度、運動時間に加えて、「週に3回行う」といった運動頻度も有酸素運動を行う上では重要になります。

一方で筋トレの目的は特定の筋肉にストレスをかけることです。

普段よりも筋肉にストレスをかけることで筋肉量や筋力の増加を目指します。

筋トレは一般化しにくいため運動や身体活動の指標となりにくいのですが、筋肉は使わなければ加齢によって衰えていきます。

ずっと寝ていれば寝ているのに必要な筋肉だけになりますし、走っていなければ走るのに必要な筋肉は衰えていきます。

さらに最近では、高強度インターバルトレーニング(HIIT:High Intensity Interval Training)も広がってきています。

これは負荷の高い運動と小休憩(インターバル)を交互に繰り返すトレーニング方法で、短時間で効果が得られる方法として行われることが多くなってきました。

病院では骨折をきっかけに歩かなくなり、結果的に寝たきりとなってしまう人も多くいます。

有酸素運動と筋トレはどちらか一方を行うのではなく、どちらも行えると理想的ですが、運動というと多くの人が有酸素運動をイメージされます。

そのため意識的に筋トレを行うようにしていきましょう。

運動を「自分でやる」という行動が大切なワケ

有酸素運動や筋トレなどの運動および身体活動は健康な生活を送る上で欠かせないものです。

しかしなかなか重い腰をあげられないのが正直なところでしょう。

それでも運動することを勧めます。

何故なら、「運動は自分でやるしかない」からです。

確かにリハビリなどは人が手伝って動かすことで関節の動く範囲が広くなるなどの効果があります。

しかし関節が他の人によって動かされる範囲と自分自身で動かすことができる範囲は必ずしも一緒ではありません。

自分で動かす、動かそうとすることは非常に重要なのです。

現在世界中の研究機関で、加齢に伴う筋力低下であるサルコペニアや心身が虚弱した状態であるフレイルに対する薬の開発が行われていますが、現時点で薬はできていません。

つまり筋肉を勝手に増やしてくれる薬はないということです。

まずはここからやってみよう

いきなり「1日30分間散歩をしよう」「週に2回はジムに行こう」と目標を立ててもなかなかできません。

もしそれで継続できるのであれば、おそらく運動について元々困っていない人だと思います。

多くの人は健康のためにも運動が重要と分かっていても始められない、続けられないということが多いのではないでしょうか。

必ずしも時間をとって運動をしなければいけないわけではありません。

いつもよりも少しでもいいから身体を動かすことが一番重要です。

下図は運動量と死亡率を表したグラフです。

最も死亡率が低い運動量が、現在の国の推奨量となっています。

しかし一番大切なことは、少しでも運動をすると死亡率が0.8倍に低下することです。

繰り返しになりますが、大事なポイントは、「少しでもいいから運動をすることで死亡率が大きく下がること」です。

ほんの少しの変化が人生の大きな一歩になります。まずは今の日常生活でできることから始めてみましょう。

いきなり大きな目標を立てて無理をする必要はありません。

いつもはエスカレーターのところを階段にすると、階段の上り下りのカロリー消費自体はそれほど多くないですが、筋力がつくことにより有酸素運動と筋トレを合わせた効果が期待できます。

テレワークの合間に散歩やストレッチ、簡単な体操をすることだけでも十分運動となります。

寝転がってテレビを見ていたのをスクワットに変えてみる、自分自身で思いつくことであれば何でも構いません。

自分を変えられるのは自分自身だけ。是非今日からほんの少しだけ身体を動かしてみましょう。

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