『ゴーストバスターズ』はなぜ1984年から現在まで、観客を魅了し続けるのか?
いまから38年前、1984年に公開された『ゴーストバスターズ』は社会現象ともいえるヒットを記録し、シリーズ化、アニメ化、リブート版が制作されるなどの展開で、時代を超えて新たなファンを生み続けています。
ジャンルとしてはコメディですが、当時最先端のSFXを駆使してゴーストとの戦いを描いたビジュアルは、ホラーやアクション・スペクタクルとしても見ごたえ満点。
そんな“全部入り”が、幅広い層から支持されている理由でしょう。
ちなみに日本では、1984年12月に正月映画として公開。
同時期には『グレムリン』(84)、『ゴジラ』(84)も公開され、その頭文字から3G対決とも呼ばれましたが、興行成績は『ゴーストバスターズ』の圧勝でした。
シリーズ最新作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2月4日公開)の登場で再び注目度がアップしている今、あらためて魅力を振り返ってみましょう。
目次
1作目で描いているのは、実は「ベンチャー企業の奮闘記」
『ゴーストバスターズ』をひと言で言えば、中年男が起業する物語です。
大学で超常現象を研究していた3人の博士、ピーター(ビル・マーレイ)、レイモンド(ダン・エイクロイド)、イゴン(ハロルド・ライミス)は経費節減のため失職してしまいます。
困った彼らは研究成果を生かし、ゴースト駆除のベンチャービジネスを思いつくのです。
この、権威を剥奪された男たちが、害虫駆除さながらの汚れ仕事で一発逆転をねらう発想がおもしろい。
怪物退治といえば“正義や平和のため”がお約束ですが、彼らにとっては“お仕事”。
4番目のメンバー、ウィンストン(アーニー・ハドソン)の志望動機も「雇ってくれるならなんでもいい」でした。
ゴースト退治の大騒動だけでなく、請求書を発行したり、忙しすぎて休みが取れずぼやいたり、安全性や衛生面で行政と対立する台所事情は地味にリアル。
食うためにゴースト退治を始めた彼らが、使命感に目覚めていくカタルシスある展開も根強い人気の要因でしょう。
5年後に公開された『ゴーストバスターズ2』(89)は、時制通りに5年後のゴーストバスターズの物語。
彼らは邪悪なゴーストからニューヨークを救ったのですが、壊した建物の損害賠償や「ゴースト騒動は自作自演」との疑惑によって解散という、ヒネリまくりの幕開け。
ピーターはテレビ番組の司会者、レイモンドはオカルト書店を経営しながらウィンストンと共に子ども相手のゴースト退治パフォーマー、イゴンは研究者として生計を立てていました。
今夜の金ローで放映される「ゴーストバスターズ」の微妙に駄目なメンバーを紹介するぜ!(全人類観て) pic.twitter.com/6hTlwV2hjX
— 妖介?? (@gurumeda) February 3, 2022
笑いと映画作りのエキスパートが集結!
『ゴーストバスターズ』の魅力の一つが、個性派俳優たちのとぼけた名演。
主演のマーレイ、エイクロイド、ライミスは、ラジオ「ナショナル・ランプーン・ラジオ・アワー」やテレビ「サタデー・ナイト・ライブ」などお笑い番組で活躍していたコメディアンの出身です。
エイクロイドはすでに『ブルース・ブラザーズ』(80)で人気スターの仲間入りをしていたのですが、マーレイとライミスは『ゴーストバスターズ』の大成功でワールドワイドな人気と知名度を獲得しました。
特にマーレイの飄々とした演技はいま観ても新鮮。
演じているのか地のままか、悩んでしまうほどのハマりっぷりなのです。
ヒロインのディナ役は、『エイリアン』(79)で最強の宇宙生物と死闘したシガニー・ウィーバー。
お笑い3人組と対照的なチョイスがおもしろい。
そのほかウィンストン役のハドソン、事務員ジャニーン役のアニー・ポッツらもハマり役で、メインキャストはそのまま『ゴーストバスターズ2』で続投しました。
映画はニューヨークでロケが行われ、ニューヨーク公共図書館やコロンビア大学など街のランドマークが次から次に登場。
『ゴーストバスターズ2』でも、アレクサンダー・ハミルトン合衆国税関やワシントン・スクエア公園ほか各所で撮影が行われました。
なお、ゴーストバスターズが会社を構えた元消防署の外観は、実際に使われていた消防署。
歴史的建造物が多く、下水道には巨大なワニが棲むと言われる街だけにゴースト騒動の舞台にぴったりで、その景観も映画の魅力です。
そんなシリーズを監督、製作したのがアイヴァン・ライトマン。
マーレイやレイミスと何度も組んできたコメディの名手です。
『ゴーストバスターズ』でヒットメーカーとして定着したあとは、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ツインズ』(88)、ハリソン・フォード主演の『6デイズ/7ナイツ』(98)などメジャー作品で活躍しました。
『ゴーストバスターズ』の脚本はエイクロイドとライミスの共作で、ライトマンを含め3人で練り上げたストーリーがベースになっています。
ちなみに、エイクロイドは脚本家として、ライミスは脚本家、監督として数々のコメディ映画を手掛けた才人なのです。
ほかにも「スター・ウォーズ」シリーズなどでオスカーに輝いたリチャード・エドランドがILMやSFXを担当。
美術監督を『クレオパトラ』(63)や『ハロー・ドーリー!』(69)などハリウッド大作を支えたジョン・デ・キュアが務めるなど一級のスタッフが集結したのです。
金曜ロードショーで久々にゴーストバスターズが放送されたので1984年のマシュマロマンとゴジラのツーショットを上げておきます pic.twitter.com/Dylyw3XiWL
— よし@3月20日第2回新潟特撮交流会 (@lapis0122) February 5, 2022
主題歌は誰もが一度は耳にした大ヒット曲
たとえ映画を観ていなくても、公開当時『ゴーストバスターズ』の名前を知らない人はいなかったでしょう。
その知名度に貢献したのが、レイ・パーカーJr.の主題歌「ゴーストバスターズ」です。
楽曲はライトで覚えやすく、特にサビのフレーズ「Who You Gonna Call? Ghostbusters!(誰を呼ぶ?ゴーストバスターズ!)」は世界中で大流行。
ビルボードで3週連続1位を獲得したほか、MTVでは連日のようにMVが放映されました。
MVを監督したのは、本編と同じくライトマン。
映画の名場面をちりばめながら展開するドタバタ劇やメンバー4人のゲスト出演、さらにチェビー・チェイスやダニー・デヴィート、ピーター・フォーク、テリー・ガーほか、コメディ界隈を中心に多くの俳優たちの友情出演も話題を呼びました。
たまに聴きたくなるし、聴けば映画が観たくなる楽しい主題歌です。
一方、『ゴーストバスターズ2』の主題歌は、10代でアルバムチャートNo.1に輝き、のちにホイットニー・ヒューストンとの結婚でも話題を呼んだボビー・ブラウンの「オン・アワ・オウン」が使われました。
手作りだけどパワーは最強!ゴースト退治の秘密兵器
本シリーズの目玉の一つがゴーストを捕獲するガジェットの数々。
これらは開発担当イゴンの手作りで、ありものを組み合わせたパーツむき出しのリアルな質感も楽しい。
ゴースト退治の要がメンバーが背負う“プロトンパック”で、ゴーストの動きを封じ込む陽子ビームを放射します。
メンバーはブンブン振り回していましたが、使用法を誤ると人間が細胞レベルで粉々になるほど高いパワーを秘めているのです。
そして、プロトンパックで動きを止めたゴーストを収納するのが“ゴーストトラップ”。
その名の通り、ネズミ取り(マウストラップ)のゴースト版。
取っ手の付いた金属製の四角い箱で、収納口は離れた場所からケーブルで繋いだペダルで開閉します。
ほかにも霊的エネルギーをキャッチする探知機“PKEメーター”、見えないゴーストを視覚化する“エクトゴーグル”、移動時に欠かせないバスターズ専用車両“ECTO-1(エクトワン)”が大活躍。
『ゴーストバスターズ2』では、粘着液でゴーストを押さえ込む火炎放射器型の“スライム・ブロワー”、磁気エネルギーでゴーストを探知する“ギガメーター”など新兵器も加わりました。
#ゴーストバスターズ
ほんとに30年後のアフターライフでそう答える。 pic.twitter.com/dVxYnmQCio— 清水弘 (@shimizu54kaidan) February 4, 2022
日本の一流アーティストも手掛けたキャッチーなゴーストたち
これらのガジェットを手にメンバーが立ち向かうのが、ニューヨークに出現したゴーストたち。
図書館を徘徊する本格ホラー系のライブラリー・ゴースト、食欲旺盛なユーモア系のオニオン・ヘッド、エロティックなドリーム・ゴースト、そして世界に破滅をもたらすラスボスの破壊神ゴーザなど多彩なゴーストが登場しました。
なかでも見せ場を作ったのが、ゴーザの番犬テラードッグとゴーザの化身マシュマロマン。
前者は四つ足のアクティブな野獣系、後者は丸くてかわいいけれど45メートルの巨体で街を破壊する怪獣系でクライマックスを盛り上げたのです。
本作のゴースト作りには、日本を代表する特殊メイクアーティストの江川悦子が参加しています。
当時アメリカに在住し駆けだしだった彼女は、造形などのアシスタントとして見せ場作りに貢献したのです。
ちなみに本作の前に彼女が参加したのがデヴィッド・リンチ監督作『デューン 砂の惑星』(84)。
のちに帰国し、ハリウッド仕込みの特殊メイクで大活躍する江川ですが、助手時代から大作に縁があったようです。
『ゴーストバスターズ2』では死刑にされたマフィア兄弟が怪物化したスコレーリ・ブラザーズ、ドロドロの生命体ピンク・スライム、進化系オニオン・ヘッドなどのほか、ゴーストバスターズの援軍として自由の女神も出陣!
前作に負けない超個性派ゴーストたちは、またもニューヨークを大混乱に陥れたのです。
『ゴーストバスターズ アフターライフ』、ちょーーーーー面白かった。ゴーストバスターズで泣く日が来るなんて思ってなかったからちょっと悔しい。 pic.twitter.com/XsZLqH7ONc
— サメ映画ルーキー (@Munenori20) February 4, 2022
レガシーを受け継いだ最新作はオリジナルへのリスペクト満載
そんなシリーズの最新作が、2022年上半期の話題作『ゴーストバスターズ/アフターライフ』。
舞台はオリジナルシリーズの30年後、田舎町で孤独な晩年を送ったイゴンの幼い孫たちが、祖父のレガシーを受け継ぐ物語。
監督はライトマンの息子ジェイソン・ライトマンで、父とはまた違う切り口で新世代のゴースト退治を描いています。
主人公の科学少女フィービーにクリス・エヴァンスと共演した『gifted/ギフテッド』(17)に主演し絶賛されたマッケナ・グレイス、彼の兄トレヴァーに「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や『IT/イット“それ”が見えたら、終わり。』(17)でブレイクしたフィン・ウルフハードと、注目の天才子役が出演。
彼らと共に怪事件に巻き込まれる教師役は「アントマン」シリーズのポール・ラッドで、笑いのツボもしっかり押さえています。
ほかにも意外なゲスト陣、テラードッグやマシュマロマンなど人気ゴーストも登場と、オリジナルへの愛情がたっぷり詰まった作品です。
映画という枠を超え、カルチャーとしてすっかり定着している『ゴーストバスターズ』。
新作の公開に続き、2年後の40周年にもなにかサプライズが待ってるかも?
いまだ古びることのないその魅力を、映画館で堪能してみてはどうでしょうか。
ネットの声
「オープニングの図書館で幽霊にファーストコンタクトし幽霊の鼻汁の件で完全に引き込まれた。ビル・マーレイの飄々としたお芝居、ホント最高で、常に無表情なところがいい。センスが良いのか悪いのか微妙な邦題をつけられた 恋はデジャブ なんかもビルの独特な笑いが堪能できる。リック・モラニスも何気においしい。でもしばらくして俳優業を休養してしまったのが残念。今だに復帰したとか耳にしないので、もはや引退してしまったのかもしれない。スペースボール好きだったのに・・・主題歌は大ヒットしたのはいいけど、後に盗作疑惑が浮上したと記憶してるけど、はて?」
「元々はダン・エイクロイドがジョン・べルーシーのために書いていた脚本なんだけど完成前にべルーシーが亡くなったから代わりにビル・マーレイが演じたんだけど…。ジョン・べルーシーが主演のゴーストバスターズが観たかったなぁ。。先月に映画「べルーシー」を観てきたから何となく感慨深くなってるけど。。」
「昔、初めて観た時は余り面白いとは思えなかった。ビル・マーレイ、マシュマロマンもよく知らなかったし。主題歌を含めて何でこんなにアメリカで大ヒットしているんだろうって不思議だったな。あれ以来観ていないので未だにその凄さがよく分からない。同じ時期の「フットルース」、その少し後の「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は嵌まったけど。」