昭和のクルマに書いてあった「自家用」って何?

走り屋漫画の金字塔「頭文字(イニシャル)D」で藤原拓海が乗るハチロクには、ドアに「自家用」という文字が書かれています。

確かに昭和のオジサン世代が子どもだったころは、近所のスーパーのハイエースに同じ文字が書かれていたのを覚えていることでしょう。

なんで「自家用」と書く必要があるのか。真相を調べてみました。

お金を取って人を乗せるクルマと区別させるため

いきなり答えをいうと、法律で記載が義務付けられていたというのが正解。

昭和26年に定められた「道路運送法」という法律の第九十五条に、以下の記載があります。

「自動車(軽自動車たる自家用自動車、乗車定員十人以下の乗用の自家用自動車、特殊自動車たる自家用自動車その他国土交通省令で定めるものを除く。)を使用する者は、その自動車の外側に、使用者の氏名、名称又は記号その他の国土交通省令で定める事項を見やすいように表示しなければならない」

どうしてこのような決まりがあるのでしょうか。

それには「道路運送法」の意図を知る必要があります。

同法を簡単にいうと、お金をもらって人を乗せるバスやタクシーといった事業(旅客事業)を管轄するために作られた法律。

当然そこでは、旅客事業を行えるクルマを定義する必要があるのですが、そのために「有償で人を乗せないクルマは、それを明示せよ」というルールが作られ、結果「自家用」という表示が誕生したのです。

ここでいう「自家用」というのは、一般的にイメージされる「個人が所有して私用に使う車両」ではありません。

「有償で人を乗せないクルマ」のことだという点に注意。

つまり、バスであっても社員の移動などに使う車両は、「事業用」ではなくて「自家用」となるのです。

今でも人気の「自家用ステッカー」

それではどうして現在のクルマには「自家用」と書かなくていいのでしょうか。

これは、冒頭に書いた道路運送法の条文をよく読めばわかります。

以下のような但し書きがあるのです

「軽自動車たる自家用自動車、乗車定員十人以下の乗用の自家用自動車、特殊自動車たる自家用自動車その他国土交通省令で定めるものを除く」

つまり、法律が変わったりしたのではなく、軽自動車や定員10人以下の乗用車などは、当時から自家用と書かなくてよいというルールだったわけです。

それにしても、この条文の例外規定がなかったらどうなっていたでしょうか。

フェアレディZを買っても、アルファードを買っても、フロントドアの下に「自家用」と書かねばならないとしたら、カーデザイナーのモチベーションもダダ下がりだったはず。

ディーラーには「自家用ステッカー」が何種類か用意されていて、「こいつは書体がかっこ悪い」などと悩んでいたかもしれません。

いっぽう逆に、「自家用」を懐かしがるユーザーも存在しているそう。

ネットショップでも「自家用ステッカー」は多数販売されているから、愛車に貼って昭和を思い出すのもありでしょう。

ネットの声

「藤原豆腐店では豆腐の配達をしていた。今風に言えばデリバリー。しかし配達はあくまでも豆腐の販売が目的で、豆腐の配達で利益を得ているわけではないという意思表示のための「自家用」表記。白ナンバーのトラックやバンによく表記されていた「自家用」表記のパロディ的な作者によるお遊びだろう。」

「40年ほど前は「無鉛ガソリン使用」の青や「有鉛ガソリン使用」の赤のステッカーがあったが軽自動車に軽油入れる奴がいる今こそ復活が必要かも。」

「超ローカルルールで、軽トラのアオリには屋号と名前を書き入れておく地域がありましたよ。寄合等で集合すると、集会所の履物みたいに間違えて乗って帰る人が出るからだったそうで…。田舎だから鍵は付けっぱなし。」

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