日本の高速道路は世界一高額…その理由とは

世界一高速道路料金が高額な日本、理由はなに?海外の高速道路はいくらなの?

海外には、高速道路が無料の国があることをご存知でしょうか。

その一方で、日本の高速道路料金は訪日旅行者がビックリするほど高額です。

なぜ、日本と世界の高速道路料金には、これほどまでに違いがあるのでしょうか。

それには日本ならではの切実な事情があります。世界の高速道路料金事情を詳しくみていきましょう。

無料の国も!? 海外の高速道路料金はいくら?

日本の高速道路料金は1kmあたり約24.6円であり、これは世界水準に比べて非常に高額です。

一方、世界の多くの国々では日本の半額以下で高速道路を利用できます。

韓国の高速道路1kmあたりの料金は100ウォン前後(約9.6円)、中国は0.5元(約9円)であり、同じアジアでも日本とはずいぶんと大きな差があります。

続いてヨーロッパはどうでしょうか。

アウトストラーダの名称で呼ばれるイタリアの高速道路は0.07ユーロ(約9.1円)です。

さらに、イタリア南部の14%ほどの高速道路は地域振興等の目的で無料になっています。

高速道路をオートルートと呼ぶフランスは0.1ユーロ(約13円)とやや高めではあるものの、無料の高速道路が国中を走っているためそれほど不便はありません。

1kmあたり0.1101ユーロ(約14.3円)のスペインは、そのときどきの政権交代の度に無料と有料とが切り替わります。

現在は高速道路の80%が無料で利用できます。

そして、速度制限がないアウトバーンがあるドイツや、モーターウェイと呼ばれるイギリスは原則無料です。

フリーウェイがあるアメリカは州によって異なるものの無料。

カナダやシンガポールも高速道路が無料の国です。

これら以外の国でも、高速道路の利用料金は日本より遥かに安価です。

それに対して日本は、道路によって多少の増減や割引があるものの、1kmあたり24.6円+初乗り料金に相当するターミナルチャージが150円が追加されたうえ、さらに消費税がかかります。

世界各国に比べ、日本はなぜこうも高速道路料金が高いのでしょうか。

なぜ!? 高速道路無料の国々と世界一高額な日本

高速道路の建設には膨大な費用がかかるため、あらかじめ道路建設費用を借り入れ、利用者から料金徴収し借金を返済する形で維持運営されるのが一般的です。

高速道路料金が無料の国々は、道路の建設や維持を国費で賄っているため、タダで高速道路が利用できます。

とはいえ、高速道路が無料のドイツとイギリスは租税負担が高い国として有名であり、高速道路の建設・維持管理費も税金で賄われています。

広大な国土面積をもつアメリカは、高速道路がなければ経済が成り立たないため各州政府が管理しています。

税金が安いシンガポールは、そもそも国土面積が東京23区ほどしかないため費用がそれほどかかりません。

結局のところ有料・無料に関わらず、どこの国であっても高速道路料金は利用者が直接支払うか、国民全員が間接的に支払うかのどちらかになります。

しかし、日本はやや事情が異なります。

日本は山が多いため、高速道路を通すためにトンネルや橋梁工事が多くなります。

また地震も多いために耐震性を高めなければならず、他国に比べてどうしても建設維持費用が高くなりがちです。

そのしわ寄せが、世界一高額な高速道路料金として利用者にのしかかっています。

日本の高速道路料金が高いのはこういった事情があるのです。

しかし、海外でも高速道路の有料化・高額化が進む……

とはいえ、近年は世界各国でも高速道路の有料化や値上げがされています。

スイスとオーストリアの高速道路は建設当初は無料とされましたが、2000年初期に維持管理・環境改善のための費用確保を目的として有料化されました。

また、高速道路が無料と謳われる国でも、建設費がかさむトンネルや橋梁区間は有料であることが多く、道路に負担をかけるトラックやバスなどの大型車も有料です。

長くに渡って高速道路が無料であったドイツでも2005年から大型車は有料となりました。

アメリカでも有料化の流れが起きており、カリフォルニア州ではフリーウェイの中央にHOTレーン(HOVレーン)と呼ばれる条件付きの有料車線が設けられており、その他の州でも高速道路有料化実験が行われています。

しかし、有料化されたとしても各国の高速道路料金は日本より遥かに安価です。

また、世界の平均料金は年々上昇を続けているとはいえ、日本は世界で断トツに高い料金設定であることに変わりありません。

日本の高速道路無料化の話はどうなった?

日本の高速道路建設当初は、建設時の借入金が返済されれば無料にできるものと見込まれていました。

しかし、2050年までに道路建設費を返済するはずだった計画は、トンネル崩落事故などの補修費や維持費の膨れ上がりによって、現在では2065年以降まで延長する方向で検討されています。

もちろん、返済を国費でまかなえば高速道路の無料化や料金値下げも可能でしょう。

しかし、その代わりに国民全員の税負担が増すことになり、高速道路利用における受益者負担原則に反することになります。

また、道路の老朽化はどんどん進行するため、今後も莫大な補修・維持管理費用が必要であり、現在の料金制度のままでの高速道路無料化実現は困難を極めます。

少なくとも現在免許を持っているドライバーが、完全無料で日本の高速道路を走れる日が訪れることはないでしょう。

せめて利用料金を安くできないの?

海外には区間や時間帯、車両重量などによって高速道路料金が細かく設定されている国があります。

また、電気自動車か否かで料金が変わる国もあります。

日本でも建設費の違いによって利用料金に差が設けられていたり、上限料金設定やETC割引・休日割引などの緩和措置が採られていますが、基本料金は24.6円です。

もちろん、道路負担が少ない地方の高速道路も同じく一律です。

現在、高速道路から得られた収益は、合算されて補修費を含めた赤字路線の負担を補う形で運用されています。

しかし、利便性を高めるために建設したはずの地方高速道路が赤字で有効活用されていないのでは、それは本末転倒です。

空いている地方道路の利用客増加を見込むために、一時的な割引や無料化ではなく、現在の一律料金を根本から見直し、地域ごとに最適化することはできないのでしょうか。

無料化社会実験の結果は? ETC専用化で今後どうなる?

2010年6月から半年にわたって実施された高速道路無料化社会実験では、利用者が少なかった路線でも利用者が無料化でおおよそ2倍にもなり、一般道の混雑が減ったうえ、無料道路からつながる有料道路の利用者も増えたとの結果が出ています。

一部地域では流入過剰による高速道路上の渋滞が発生したものの、これらの実験結果から料金設定に必要なデータはある程度集まっているものと推測されます。

そして、今後順次進められていく高速道路のETC専用化によって、路線や区間ごとの細かな料金設定も可能になるでしょう。

そうなれば、地域や時間帯ごとの渋滞状況を加味しつつ、利用者増加を見込める最適な料金設定ができるようにもなるでしょう。

テクノロジーを用いて、誰もが使いやすいように全国の高速道路料金体系を地域ごとに最適化することが、SDGsに基づくサスティナビリティな日本の自動車社会といえるのではないでしょうか。

当然、こういったことは国土交通省ではもちろん、公益財団法人 高速道路調査会や研究委員会などの有識者会議によって検討されています。

世界一高い日本の高速道路料金がどのようになっていくのか、今後の取り組みに期待が集まります。

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