運転免許は国家資格だけどスキルを保証するものではない

「運転免許」は運転スキルを保証するものでは無い? 「国家資格」でも他資格と異なる存在となる訳

毎年2月から3月は、卒業後の進路が確定した高校生や大学生などが中心となって自動車教習所が賑わいを見せる時期です。

運転免許証を取得すれば、履歴書などの資格欄に記載することができますが、民間資格と運転免許は根本的に異なるものです。

では、「免許」の本当の意味とはどんなものなのでしょうか。

「運転」とは、本来法律で禁止されている行為?

運転免許を取得する目的は人それぞれですが、日常の移動手段としてクルマが必要不可欠である地域に在住しているためであったり、あるいは将来的にクルマの運転が必要になる可能性が高いことを見越してだったりというケースが多いようです。

一方、なかには「資格」のひとつとして、将来の就職や転職に有利になる可能性を考慮して、運転免許を取得するという人もいます。

また、それが主目的ではないにせよ、運転免許を取得したことで、履歴書の「資格」欄が空白にならずに済んだという人は、意外と多いかもしれません。

実際に、少しでも就職や転職に有利になるように、あるいは自分磨きのために資格の取得に励む人は少なからずいます。

例えば、就活中の大学生向けのメディアを見ると、在学中に取得しておくべき資格として、「日商簿記検定」や「マイクロソフトオフィススペシャリスト(MOS)」などと並んで、運転免許が挙げられています。

しかし、日商簿記検定やMOSが民間資格であるのに対して、運転免許は国家資格であり、なかでも「業務独占資格」と呼ばれるものです。

この点が、運転免許が、ほかの多くの民間資格とは根本的に異なるものといわれる理由です。

では、業務独占資格とはどのような意味を持っているのでしょうか。

これは、端的にいえば、その資格を持たない人が携わってしまえば、刑事罰が与えられるものということになります。

いうまでもなく、運転免許を持たない人が公道でクルマを走らせると「無免許運転」として検挙の対象になります。

仮に、十分な運転スキルを持っていたとしても、運転免許を持っていないということが問題となります。

一方、日商簿記検定やMOSなどの民間資格は、基本的にはその能力を客観的に示すためのものです。

もし日商簿記検定1級を取得していれば、相当な会計知識を持っていることがわかります。

しかし、たとえ日商簿記検定1級を取得していなくても、高いレベルの会計知識を持っている人であれば、その力を発揮することは決して悪いことではありませんし、当然のことながら違法行為になることもありません。

日本で定められている業務独占資格には、医師免許や看護師免許、弁護士や税理士、美容師などがあります。

ただ、これらの免許(国家資格)を取得するためのハードルは非常に高く、相当な覚悟を必要とするものです。

一方、運転免許の保有者は2019年時点で8215万8000人となっており、民間資格を含めたすべての資格・免許の中でも圧倒的な数を誇っています。

このことからもわかるように、運転免許の取得自体は決して難しいものではありません。

しかし、公道での運転という、本来法律では禁止されている行為を、国によって特別に許可されているものであるということを忘れてはいけません。

運転を許可されていることと、上手に運転できることは違う

ここまで述べたように、運転免許は各種の民間資格とは根本的に異なるものです。

ただ、あまりにも保有者が多いものでもあるため、その意味合いを理解する人が少ないのも事実です。

運転免許を持っていれば、公道でクルマを運転できることは事実です。

しかし、それは「運転することが許されている」という意味であり、ほかの民間資格のように、一定以上の能力があることを示すものではありません。

この点が、運転免許がいわゆる「資格(=能力を示すもの)」とは根本的に異なる部分です。

つまり、運転免許を持っていることと、十分な運転スキルがあることはイコールではないということです。

例えば、国語の教育職員免許状、いわゆる教員免許を保有しているとします。

さらに修士課程を修了しているため、より上級の国家資格である専修免許状を保有しています。

しかし、実際に教員であったことは一度もありません。

この場合、あくまでも、教員になるための必要要件を備えているというだけであり、実際に教員になるためには各自治体や学校法人の採用試験を受けるなどの過程を経なければなりません。

そういった人を、優れた教員と評する人はまずいないでしょう。

教員免許は保有していたとしても、教員としての実績がないのですから、それは当然です。

なので、運転免許を取得したからといって過信は禁物!

一方、若い頃は「運転免許を持っている人=上手に運転する能力がある人」というイメージを持ってしまいがちです。

けれども、20歳そこそこであれば、どんなに長くてもせいぜい2年程度の運転経験しかありません。

高齢者による痛ましい交通事故の報道が多く見られる昨今ですが、統計上は10代および20代前半の交通事故件数のほうが多いのが実態です。

これから運転免許を取得しようと考えている若い人、あるいは運転免許を取得したばかりの若い人には、運転免許とはあくまでも公道で運転する許可を得ているだけであり、上手に運転できることを示すものではないということを覚えておきましょう。

もちろん、若い人に限らず、いま現在運転免許を保有し、公道でクルマを走らせている人にも、いま一度、「運転免許」の意味を考え直す機会になれば幸いです。

ネットの声

「運転免許の場合、その資格に知識・技能が伴っていることを間接的に担保する実務経験の有無を証明することが難しいというのが、他の資格と明確に異なる点です。他の資格は、所属する機関等によって実務経験を証明しうるけれど、運転免許は一律にはできない。」

「一つ提案。免許更新時に技能試験を義務付けること。更新が煩雑になるとかは言い訳だ。行政は責任をもって運転スキルのある人間にだけ免許を与えるべき。車を動かせるのと運転できるのは全く次元が違う。」

「厳格に運転免許取得制度を遂行したら 取得できない人が大勢発生するだろう。そうるべきかもしれないがね。スキル保証などということいいだしたら高齢者はどうなる?100%に近い人が更新不可になるよ。これも運転免許の免許という意味が形骸化している証拠だろう。」



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