高齢者は太ったほうがいい!?そっちのほうが長生きできる説

「野菜をしっかり」「バランス良く」が、一般に「健康的な食事法」といわれます。

しかし、元気な高齢者には、肉や甘いモノをモリモリ食べる人が多いと感じたことはないでしょうか。

そのような中、「年をとったら、食は質より量が大事」と説く本が登場しました。

高齢になると低栄養がリスク

紹介するのは、在宅医療のエキスパートである医師、佐々木淳氏(医療法人社団悠翔会理事長・診療部長)の著書『在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい』(飛鳥新社刊)。

編集を担当した古川有衣子氏が語ります。

「先進国の中でも高齢者の『やせ』が目立つ日本ですが、じつはやせている人ほど、骨折や誤嚥性肺炎、寝たきりの割合が高くなるのをご存じでしょうか。65歳からは『ちょっと太め』『毎年ちょっとずつ太る』ほうが死亡率も下がるのです。必要なのはとにかく食べること、と本書では解説しています」

中高年になると肥満や高血圧や中性脂肪、コレステロール値が気になるのは事実。

しかし、高齢者の場合、こうした心配より「低栄養」と「虚弱(フレイル)」のほうが大きなリスクであり、それを防ぐ有効な手段が「太ること」だそう。

実際、文部科学省の研究班が65~79歳の高齢者を11年間追跡調査した「高齢者の死亡リスクとBMIの関係」によると、BMIが男性は27・5~29・9、女性は23・0~24・9と、成人では〝やや肥満〟とされる数値のとき、一番死亡リスクが低い結果となった。

ギアチェンジが必要

著者は長年の在宅医療を通じ、高齢者では「やせた人と太った人の病後や退院後の回復力に差がある」と感じたそう。

やせていると入院したとき体力や筋力が落ちて寝たきりになることが多いのですが、太っていると体力や筋力があまり落ちず、回復できるケースが多いそうです。

在宅高齢者が緊急入院する理由の約3分の1を占め1位なのが「肺炎」、2位が「骨折」。

双方に低栄養による「やせ」が大きく影響しているそう。

健康習慣を若年・中高年向けから高齢者向けのにギアチェンジすることが重要と説きます。

難しいのは、そのタイミングで、著者が勧める指標の一部を紹介します。

①ペットボトルのフタを開けられなくなった

②片足立ちで靴下を履こうとすると、よろけるようになった

③最近、歩く速さが明らかに遅くなった

④横断歩道を信号が青のうちに渡り切れない

⑤15分以上続けて歩けない

⑥布団の上げ下ろしなど、力を込める家事がつらい

お肉たっぷりで

詳しくは本書を参照してほしいのですが、これらに複数当てはまる場合、ギアチェンジが必要です。

そして、本書が高齢者に向けて提唱するのは、「1にカロリー、2にタンパク」。

毎食おいしく、しっかり食べること。

特に「野菜たっぷりよりも、お肉たっぷり」「ごはんだけではなく、おかずをしっかり」「脂ものもなるべく避けない」ことを勧めています。

■カロリーやタンパク質をプラスできる食品

【サバ缶】1缶で300~400キロカロリーあり、タンパク質たっぷり。DHAやEPA、カルシウムやビタミンDも摂取。安く保存がきき、すぐ使える

【卵】アミノ酸スコアが100でタンパク源として優秀。ごはんにかけたり、味噌汁に落としたり、うどんやそばに入れても

【チーズ】種類が豊富でいろいろな料理にトッピングできる。カッテージチーズは良質な乳タンパク、ホエイのかたまりで、100グラム中約20グラムとタンパク質の割合が多い。

【オリーブオイル】どんな料理にも5ccほどひと回しかけるだけで、45キロカロリープラスできる。オメガ9系の脂で体内の炎症を抑えるホルモンを活性化させる働き

在宅医療のエキスパートが教える 年をとったら食べなさい 佐々木淳 (著) 飛鳥新社 (2021/12/7) 1,400円

65歳を超えたら、BMI25~30の「ぽっちゃり体型」が正解!

あなたは、流行りの断食やダイエットをしていませんか?

そもそも、日本の高齢者は「やせ過ぎ」です。

少食や糖質制限などで体重を減らすと、高齢者にとっていちばん危険な「フレイル(虚弱)」を招くことに。

さらに「肺炎」と「骨折」のリスクも高めます。

体重が少ないと、万が一入院してしまったとき大きな危険が伴います。

やせている人は、太っている人に比べて退院後の死亡リスクが高いことがわかりました。

生きることは食べること。

食事を楽しみ、しっかり食べることで体重と体力をつけてください。

全国から、たくさんの「ありがとう」が届いています!
「痩せてきた高齢の親のために買いました。好きなものを食べさせます! 」(42歳・男性)
「80代の親と同居しています。両親とも少食で病気やケガが多く、困っていました。カロリーの高いものをしっかり食べさせているうちに元気になり、いまは入院ゼロです」(55歳・女性)
「高齢者の食事、薬について、目からウロコの情報でした。80代の方の食事指導に生かします」(72歳・女性)
「毎日歩いています。血圧の薬も飲んでおり、しょっちゅうおなかが空くのですが、ダイエットと思って食べるのを控えていました。たくさん食べて、たくさん動きます」(75歳・女性)
「マクドナルドや吉野家がいいなんて、画期的! メタボだのなんだの言われて食を控えている人は多い。私はまだ50代だが、高齢になったらガンガン食べよう」(56歳・男性)
「80歳をすぎて食欲が出てきたが、太ることに抵抗があった。この本を読んで、食べていいんだとわかった」(81歳・男性)

著者について
佐々木淳(ささき・じゅん)
医療法人社団悠翔会理事長・診療部長
1973年京都市生まれ。手塚治虫の『ブラック・ジャック』に感化され医師を志す。1998年筑波大学医学専門学群を卒業後、社会福祉法人三井記念病院に内科研修医として入職。消化器内科に進み、おもに肝腫瘍のラジオ波焼灼療法などに関わる。2004年東京大学大学院医学系研究科博士課程に進学。大学院在学中のアルバイトで在宅医療に出会う。「人は病気が治らなくても、幸せに生きていける」という事実に衝撃を受け、在宅医療にのめり込む。2006年大学院を退学し在宅療養支援診療所を開設。2008年法人化し、現職。2021年 内閣府規制改革推進会議専門委員。 現在、首都圏ならびに沖縄県(南風原町)に全18クリニックを展開。約6000名の在宅患者さんへ24時間対応の在宅総合診療を行なっている。

ネットの声

「この本のポイントは「あとがき」にある「身体の衰えのサインが出てきたら、健康習慣をギアチェンジする」「老化を防ぐのではなく、老化に伴うリスクを減らす」のように、若い人と高齢者では健康に関する考え方を変えるべきだということ。
これまでの健康本とはかなり方向性が違い、それだけに発見の多い本です。ただし、「『マクドナルド』『吉野家』は理想的な食事」のように、あまりにもこれまでの常識とはかけ離れた意見も多いので、特に糖質制限を実行している人などは戸惑うことも多いでしょう。
最終的には自己責任という前提の上で、高齢者である人、これから高齢者になる人は一読の価値がある本だと思います。」

「考えが変わりました。ガンガン食べようと思います。高齢者はこの本を読んで良く考え、実践することをお勧めします。」

「年を重ねるほど、フレイルの怖さはヒシヒシと感じていました。この本では高齢者の食事の仕方は、若い頃のそれとは違うということを、理論的に分かりやすく書かれています。この本の根底にある優しさが溢れて伝わってきます。」

 



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