あきらめる 山崎ナオコーラ (著) 小学館 (2024/3/15) 1,980円

登山で頂上まで行く? 途中で降りられる?

「『あきらめる』って言葉、古語ではいい意味だったんですってね。『明らかにする』が語源らしいんです」

近所の川沿いを散歩するのが日課の早乙女雄大。

入院中の愛する人との残り少ない日々の過ごし方や、

ある告白をきっかけに家を出てしまった家族のこと、

あれこれと思い悩みながら歩いていると、親子風の二人組に出会う。

親に見える人は何やら思い詰めた表情で「自分の人生をあきらめたい」と言う…。

ふとしたきっかけで生まれた縁だったが、

やがて雄大は彼らと火星に移住し、「オリンポス山」に登ることを決意する…!?

「あきらめる」ことで自らを「あきらかにしていく」――

火星移住が身近になった、今よりほんの少し先のミライが舞台の新感覚ゆるSF小説。

山崎ナオコーラさんデビュー20周年に刊行される本作のテーマは「あきらめる」。

現代では一見ネガティブな響きのある言葉ですが、あきらめることで自分の輪郭が見えて、きれいなばかりではない本音や進みたい方向、ありたい姿、自分の限界が「あきらかになっていく」物語です。

何かの頂点に立つことや他者からの評価などをあきらめたときに、登場人物たちに起きる変化は、読者の皆様にもぜひ追体験していただきたいです。

読後に清々しい風が胸に吹き込んでくる長編小説です。

ぜひお楽しみください。


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