アニメの社会学 永田大輔, 松永伸太朗 (編集) ナカニシヤ出版 (2020/10/29) 2,860円

アニメについて社会学的な視点で考え、研究するために

多様なファン活動、アニメ産業の特性、それらを支える技術や制度、メディアといった多様な角度からアニメ研究と文化社会学の拡がりを捉え、両者の接続を試みる基本論集

本書は多様な課題について議論しながらアニメを社会学的に検討するために「娯楽」「産業」「技術・想像力」の結びつき方について検討する文化産業論的な試みである。

こうした視点を通して、本書ではアニメ研究と文化社会学的な研究双方の研究の拡がりと両者の接続を試みている。

アニメ研究でも文化社会学でも、読者が研究を進め考えていくうえで本書がその一助となることを望んでいる。

00 アニメを社会学する視点 永田大輔

1 社会事象としてのアニメ
2 アニメの「社会学」の可能性
3 「文化産業」の「楽しさ」を捉える「娯楽」と「技術」
4 本書の概要

Part 1 アニメファンのさまざまな実践

01 アニメについて語ること――エスノメソドロジーとライフストーリー法の視座から 佐々木啓・池上 賢

1 アニメを語ること
2 EM/CA「:みんなでジャンルを作る」ということ
3 ライフストーリー法:アニメのストーリーと個人のストーリーの関係
4 再び,アニメを語ること

02 ファンカルチャーの理論――ファン研究の展開と展望 瀬尾祐一

1 なぜファンに注目するのか
2 ファン研究の中核的アイデア
3 ファンへの参加型文化論的アプローチ
4 ファンへのマルチパースペクティブ・アプローチ
5 理論と経験の往還

03 ファンとして歩むライフコース――「スレイヤーズ」ファンの事例から 杉山怜美

1 アニメファン/アニメ作品を通時的に捉える意義
2 通時的にファン経験を分析する視座
3 ファンとして歩むライフコースの経験
4 ファンのライフコースへの着目がひらく可能性

04 ファン対象の推移からみる水樹奈々ファンの多様性――商品の意味連関とアクセスポイントに着目して 高艸 賢

1 ファンの多様性の記述をめぐる問題
2 商品の意味連関とファン対象の推移
3 水樹奈々をめぐる商品の意味連関とファン対象の推移
4 ファンの社会学が取り組むべき課題

Part 2 アニメ産業を支えるさまざまなアクター

05 「大東亜共栄圏」のための「アイウエオの歌」――『桃太郎 海の神兵』の想定される観客をめぐって 萱間 隆

1 占領地におけるアニメーション上映
2 『海の神兵』の概要と先行研究
3 「日本語普及映画」としての『アイウエオの歌』
4 シンガポールでの収録と日本でのラジオ放送
5 日本語教室の場面の考察
6 占領地政策に関する研究の今後の課題

06 軍事教育映画はいかにして制作されたか――視覚化の論理を手がかりに 雪村まゆみ

1 戦争と映像の不可分な関係
2 軍事教育映画の構成『:爆撃教育用映画取扱説明書』の発見
3 軍事教育映画の制作実態
4 視覚化の論理:機上する制作者と視聴する兵士
5 視覚の優位性が隠ぺいする支配

07 非創造的なクールジャパン政策におけるアニメ産業――創造産業とアニメへの無理解 玉川博章

1 社会変化とクールジャパン戦略
2 日本におけるコンテンツと政策:クールジャパン戦略
3 政策変化とソフトパワー論,創造産業論,国家ブランド論
4 文化のグローバル化,創造産業・ブランドとアニメの特質
5 結論:非創造的なクールジャパン政策

08 アニメーション制作事業の不安定性とその対策――歴史研究の視点から 木村智哉

1 アニメーション制作事業をとらえる視点
2 契約者制度とテレビアニメ制作
3 内製から外注へ
4 フレキシビリティへの対策
5 歴史研究の意義

09 作り手の労働者像をめぐって――生活者としてのアニメーター 松永伸太朗

1 アニメーターの労働者像
2 フィールドワークから作り手の労働者像を描く
3 「月15万」という生活水準
4 スタジオにおける賃金交渉と育児
5 配偶者の出産・育児を契機とした海外転勤
6 生活者としてのアニメーター

01 日本のアニメビジネスの海外展開と中国――鍵概念としてのブローカー 三原龍太郎・山下一夫

1 世界の映像産業の「地殻変動」とアニメの日中関係
2 「地殻変動」を理解するためのケーススタディと「ブローカー」の分析視角
3 今後の方向性と課題

Part 3 アニメ産業を支える「技術」と制度・メディア

10 OVAという発明――「テレビ的なもの」の位置づけをめぐって 永田大輔

1 「オタク向けアニメ」とOVA
2 アクターのせめぎ合いの場としてのアニメ雑誌
3 OVAをめぐる環境的条件
4 「テレビアニメ」の可能性と限界
5 第三のメディアとしてのOVA
6 アニメの区分を捉える視点

11 『ドラえもん』ブームにみるパロディー的想像力――1970年代後半~80年代初頭の『コロコロコミック』(小学館)の分析を通じて 森下 達

1 『ドラえもん』を論じる視点
2 ブーム時の評論が捉えた『ドラえもん』
3 SFブームの中の『コロコロコミック』
4 パロディーの方法論と読者共同体
5 児童向けコンテンツとホビー文化

12 アニメブームのインフラストラクチャー――『機動戦士ガンダム』をめぐる放送格差と雑誌読者 近藤和都

1 アニメブームの経験
2 アニメブームの多様な時間性
3 アニメブームとトランスメディア環境
4 間接的/擬制的な映像経験
5 物語の過剰な読解
6 分解的なまなざし
7 一回性と反復性のあいだで

13 人間の表象としてのキャラクターとファンのコンテクストとしてのキャラクター――消費者集団の社会活動が生み出すキャラクターの二面性 足立加勇

1 キャラクター論と社会学の間の断層
2 キャラクターの成立条件と拡張される同一性
3 消費者集団の社会活動と〈キャラ〉の強度の連動
4 社会学の対象としての現在のキャラクター表現

02 メディア史の観点からみた戦後韓国社会の日本アニメ受容――日本のアニメは韓国アニメーションをどのように枠づけたのか金泰龍

1 はじめに
2 劇場から始まったアニメーション受容とその変化
3 TVを通じた日本のアニメ流入の始まり
4 ビデオを通じた日本のアニメの氾濫
5 1990年代の韓国の文化産業論と日本アニメ
6 結 論

14 「アニメの社会学」の可能性 松永伸太朗

事項索引
人名索引

「作者が色々勉強したことを自分だけがわかるようにまとめた読書感想文のようになっていて、非常に読みづらいです。
また言葉のセンスがないので、色々な単語(ファン対象など)がてでくるが何を意味した単語か、はっきりとわからないため、読んでいてイライラする。」


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