荒地の家族 佐藤厚志 (著) 新潮社 (2023/1/19) 1,870円

第168回芥川賞受賞作!

あの災厄から十年余り、男はその地を彷徨いつづけた。

元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。

40歳の植木職人・坂井祐治は、災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。

地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。

仙台在住の書店員作家が描く、被災地に生きる人々の止むことのない渇きと痛み。

「亘理大橋、阿武隈川、蔵王連峰、仙台一番町等地元民としてはなじみのある場所が随所に見られ入り込みやすい小説だった、東日本大震災=災厄の2年後妻を亡くした主人公祐治、6年後再婚した妻には逃げられる、淡々とした物語の中に喪失感が巧みに表現されている、元の生活に戻りたい、一番平穏だった感情を取り戻したいという主人公の願い、これが作者の言いたかったことではないかというのが読後の感想である。」

「災厄が人の心にどう響くのか、様々あると思う。この作品は、その一つを描いている。淡々と、静かに、ゆっくりと、僅かながらに、時の移ろいとともに変化していくその様を、断絶された海の情景を背景に、しっかりと描き出している。このような想いもあるのだと感じさせてくれた。」

「東日本大震災の時は中学生で震源地から遠く離れた関西に住んでいたため、少し揺れた程度で被害も全く無かったのですが、今なおあの時の瞬間を鮮明に思い出すくらい記憶に残っています。
そうして時間が経つたびに、人間の手ではどうすることもできない、そして私が経験しなかった災害を経験した人たちはどうだったのか、ふとした瞬間に考えることが多いのですが、この本を読んで多分私はこれからも大阪で起きた小さな揺れと、テレビに流れる海の様子を忘れずに生きていくのだろうなと思いました。」


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