朝日新聞政治部 鮫島浩 (著) 講談社 (2022/5/27) 1,980円

地方支局から本社政治部に異動した日、政治部長が言った言葉は「権力と付き合え」だった。

経世会、宏池会と清和会の自民党内覇権争い、政権交代などを通して永田町と政治家の裏側を目の当たりにする。

東日本大震災と原発事故で、「新聞報道の限界」をつくづく思い知らされた。

2014年、朝日新聞を次々と大トラブルが襲う。

「慰安婦報道取り消し」が炎上し、福島原発事故の吉田調書を入手・公開したスクープが大バッシングを浴びる。

そして「池上コラム掲載拒否」騒動が勃発。

ネット世論に加え、時の安倍政権も「朝日新聞バッシング」に加担し、とどめを刺された。

著者は「吉田調書報道」の担当デスクとして、スクープの栄誉から「捏造の当事者」にまっさかさまに転落する。
保身に走った上司や経営陣は、次々に手のひらを返し、著者を責め立てた。

そしてすべての責任を押し付けた。

社長の「隠蔽」会見のあと、待っていたのは「現場の記者の処分」。

このときに「朝日新聞は死んだ」と、著者は書く。

戦後、日本の政治報道やオピニオンを先導し続けてきた朝日新聞政治部。

その最後の栄光と滅びゆく日々が、登場人物すべて実名で生々しく描かれる。

【目次】
記者人生を決める「サツ回り」
刑事ドラマ好きの県警本部長
政治記者は「権力と付き合え」
清和会のコンプレックス
小渕恵三首相の「沈黙の10秒」
古賀誠の番記者掌握術
朝日新聞政治部の「両雄」
虚偽メモ事件
社会部とは違う「調査報道」を生み出せ!
社会部出身デスクとの対立
内閣官房長官の絶大な権力
小沢一郎はなぜ総理になれなかったのか
原発事故が突きつけた政治部の限界
「手抜き除染」報道と特別報道部の全盛期
吉田調書報道の「小さなほころび」
危機管理の失敗
動き始めた安倍政権
「池上コラム問題」はなぜ起きたのか
バッシングの嵐と記者処分
ツイッター騒動と「言論弾圧」 ほか

「これほどの生きたジャーナリズム論に出会ったのは、はじめてだ。
ここにはメディアの未来を考える重要な実体験が描かれている」
ーー中島岳志(政治学者)

「社内政治と保身にエネルギーを浪費する幹部たち。
失敗と批判を恐れ、委縮していく現場。新聞社の政治報道が光を失った理由がここにある」
ーー望月衣塑子(東京新聞記者)

著者について
鮫島 浩
鮫島浩(さめじま・ひろし)
ジャーナリスト。1971年生まれ。京都大学法学部の佐藤幸治ゼミで憲法を学ぶ。1994年に朝日新聞社入社。つくば、水戸、浦和の各支局を経て、1999年から政治部。菅直人、竹中平蔵、古賀誠、与謝野馨、町村信孝ら与野党政治家を幅広く担当し、2010年に39歳で政治部次長(デスク)に。2012年に調査報道に専従する特別報道部デスクとなり、翌年「手抜き除染」報道で新聞協会賞受賞。2014年に福島原発事故を巡る「吉田調書」報道で解任される。2021年に朝日新聞を退社してウェブメディア「SAMEJIMA TIMES」を創刊し、連日記事や動画を無料公開している。

「本書、290頁中の1文、「彼らは読者の立場から権力を監視するジャーナリストというよりも、上司から与えられた業務を遂行する会社員だった。」。
胸糞悪いエリート意識と、「会社員」をバカにした言いよう...要は、この本を読んでいて著者に感じるのは、「朝日新聞」を読んでいて浮かび上がる違和感と同じもの。
ちなみに、一番強く感じたのは、「単行本じゃなく、新書版でいいんじゃねえの?」ってことでした。」

「あの誤報の担当デスクでありながら、反省もなく、上層部に処分されたことの恨みつらみと、自己弁護だけで綴った本。どこがトップ記者だ!読む価値ゼロ。」

「一気に読んでしまった。吉田調書に対する今の評価に一石を投じる内容なのでは。この30年間の政治動向を自身の記憶と照らし合わせながら、あの時あんなことがあったんだと、懐かしくもあり、驚きもあり興味深く読み進めることが出来ました。

星一つの評価が多いのは、それだけインパクトある内容の裏返しで、間違いなく良書だと思います。まずは、読んでみることをお勧めします。

鮫島さんのこれからの活躍に期待します。」


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