地図バカ 地図好きの地図好きによる地図好きのための本 今尾恵介 (著) 中央公論新社 (2023/9/7) 990円

地図ほど、面白いものはない!

「東が上」の京都市街地図/鳥瞰図絵師・吉田初三郎/アイヌ語地名の宝庫/職人技のトーマス・クック時刻表/非常事態の地図……

著者は小学校の先生が授業に持参してきてくれた国土地理院の一枚の地形図に魅せられて以降、半世紀をかけて古今東西の地図や時刻表、旅行ガイドブックなどを集めてきた。

その“お宝”から約100図版を厳選。ある時は超絶技巧に感嘆し、またある時はコレクターの熱意に共感する。

身近な学校「地図帳」やグーグルマップを深読みするなど、「等高線が読めない」入門者も知って楽しい、めくるめく世界。

■本書の目次■

はじめに 地図はみんなのもの

1章 余はいかにして「地図バカ」となりしか
・バングラデシュの小包
・架空都市「敏道市」の地形図
・相模湖まで四五キロを歩く
・北見枝幸駅のホタテ
・売り込みの日々

2章 地図を愛した先人たち
・鳥瞰図絵師・吉田初三郎の「沿線案内図」
・鉄道史研究家・和久田康雄が書いたバイブル
・近代ツーリズムの祖・トーマス・クックの時刻表
・恩師・地図エッセイスト堀淳一さん

3章 お宝地図コレクション
・海ばかりの地図
・パリの古書店で買ったアルプスの銅版画
・旧制中学校の世界地図帳
・懐かしの教科書「地図帳」を深読みする
・地形図に捺された蔵書印
・御即位礼紀念「京都近傍図」の美しさ

4章 西へ東へ、いざ机上旅行
・幻の高速鉄道! 山手急行電鉄
・新幹線の運転士が持つ「お宝図面」
・戦前の鉄道旅行ガイド『旅窓に学ぶ』
・都電の路線図
・「東が上」の京都市街地図
・明治末のカナダ太平洋鉄道全図
・古い時刻表を読む
・変貌する街・大阪の市電路線図

5章 地名・駅名・バス停名あれこれ
・原稿を積み重ねれば五メートル! 『大日本地名辞書』
・アイヌ語地名の宝庫・北海道庁二〇万分の一地図
・都バスの路線図 停留所名の楽しみ
・イマ風のキラキラ駅名
・なぜ駅名は変わるのか
・全国の珍名踏切を訪ねて

6章 地図に刻まれた栄枯盛衰
・新旧地形図を比べる楽しみ
・小笠原諸島にはかつて「一戸二人」の島も
・平面交差と立体交差
・電線はどこからどこへ?
・森が開かれ賑わい、そして湖に消えた町
・大学の郊外移転 先駆けは明治大正期

7章 天災と人災
・洪水と堤防の戦い
・非常事態の地図
・東ドイツ秘密地形図の解説書
・グーグルマップをどう使う?

おわりに 紙の地図がなくなったら

「地図研究家によって書かれた、地図好きの地図好きによる地図好きのため本である。
本の成り立ちがちょっと分かりにくいが、『中央公論』の2017年?2020年の連載「地図のある人生」をまとめたもののようである。単行本の新書化ではなく、新書オリジナルということか。
私は地図は嫌いではないが、好きというほどではないので、読者の資格を満たしていないかもしれないが、地図好きの人の話を聞くのは好きなので、購入させていただいた。
章は、1章から7章まで。
個人的には3章「お宝地図コレクション」と6章「地図に刻まれた栄枯盛衰」が一番面白かった。
「お宝地図」といっても、旧制中学校の世界地図帳とか、戦後の学校地図帳とか、さほどお宝とは思えない地図帳の話であるのも面白い。内容は、いい話。
「栄枯盛衰」のほうは、歴史的定点地図観測かな。面白い。さすがに地図だけでは難しく、社史や市史などが頼りとなってくる。
最後のほうに出てくる「東ドイツ秘密地形図」が面白い。地図をもう少し大きくしてもらえるか、巻頭カラー図版に入れてもらえるとよかったのだが・・。
最後の最後はやっぱりグーグルマップの話。」

「2023年9月20日に日本でレビュー済み
中央公論掲載時は最近なかなか書店に置いてない雑誌なので読む機会がなかった連載がようやくの書籍化。今尾ファンにはたまらない一冊でしょう。編集側の提案で『地図バカ』というタイトルに変えたようですが、『地図オタ』としなかったのが老舗中公の面目躍如たるところか。
地図情報からさまざまな風景を読み解きながら、地名や鉄道のほか土地の産物、そこに暮らす人びとにも想いを馳せる読図詩人たる“今尾恵介”がいかに誕生したかが明快にわかる自伝小説のような記念碑的作品です。氏の著書の愛読者としては願わくばハードカバーの単行本として刊行して欲しかったくらいです。タイトル副題に『–今尾恵介のできるまで–』とか『–今尾恵介の作り方–』などを付けても良かったのでは…。
先月筑摩書房がようやく文庫化した『ふらり珍地名の旅』と併せて読めば、本書をはじめ今尾本の魅力がさらに再認識できるでしょう。」


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