『逃亡刑事』の高頭冴子シリーズ第二弾!
“県警のアマゾネス”の異名を持つ千葉県警の高頭冴子は、留学生の不審な失踪が相次いでいるという噂を耳にする。
その数日後、中国国籍で新疆ウイグル自治区出身の留学生カーリの死体が発見された。
捜査に乗り出した冴子は、事件に中国公安部が絡んでいることを掴むも、カーリの雇い主のカーディルも殺害される。
冴子に保護を求めていたカーリの同僚のレイハンも連れ去られてしまい、その容疑者は逃亡。
レイハンを救い、事件の真相を暴くため、冴子と部下の郡山は中国への捜査を強行するが、そこで二人が目にしたのはウイグル民族が置かれた恐るべき状況だった――
中山七里『越境刑事』を読了。
千葉県内で新疆ウイグル自治区出身の者たちの失踪が相次いで起こる。
千葉県警のアマゾネスこと高頭冴子が捜査を進めるうちに犯人は中国公安部らしいとの見方が強まってくるが…。
胸糞悪い拷問の描写もありつつ、かつてないほどハラハラドキドキな展開でした。 pic.twitter.com/ruPhBU6wJH— よーじ (@yoji83) September 13, 2022
「日本在住のウィグル人が迫害・拉致被害を受け、主人公のアマゾネス刑事が担当して真相に迫るのが概要。その活動の中でCCPの酷いジェノサイドの実態も書かれてますが、ここまで書かれた中山氏の勇気に敬意を表します。単に小説だからとは言えない真に迫った。内容は恐らく多数のウィグル人から取材しないと書けないからです。それにしても、国民を拉致されても手も足も出ない日本政府、ウィグル人ジェノサイドにも海外の民主主義国の対応と異なる沈黙のみの国会のだらしなさやノー天気さは目に余るので、それらへの警告も兼ねていると推察します。」
「①本作も最高傑作の一つである。高頭冴子という女警部は、乃南アサ『凍える牙』の音道貴子を読んで以来の傑作キャラである。男性顔負けの巨人刑事である。
②今回は中国公安部のウイグル人弾圧と殺害をテーマにしているが、ウイグル人とイスラーム過激派テロ組織、日本の警察三つ巴にした政治的関連を追求する作品にすれば、政治的ミステリー小説として、もっと国際ハードボイルドな作品に変貌していたかもしれない。
③それにしても中国公安部のウイグル人弾圧は凄まじい。民族や文化ご異なるウイグル人を漢人に同化させようとするのだ。しかも著者は創作ではなく、文献を読んで事実として書いている。あまりにひどいではないか。中国には時差が1時間しか設定されていない。経度15度分の時差1時間は、漢人の生活圏を示すもので、ウイグル人やチベット人等の少数民族の広大な生活圏は無視されている。中国はあくまでも漢人中心、漢人ファーストの国なのだ。
それにしても息つく暇もなく快速で読める傑作である。
お勧めの一冊だ。」「実際の日本警察の内情、組織風土は置いておくとして、日本の刑事がウイグルに潜入し、彼の地の世にもおぞましい民族浄化に立ち向かう、というストーリーは、フィクションの勧善懲悪小説の題材としては面白い。はっきり誰が見てもどちらが悪か解りやすいからだ。
が、お気楽に読み流すにはウイグルの実情は余りに悲惨で理不尽で、とても軽い気分で目に出来る話ではない。
それだけに、巻末のランボーシリーズのような展開にはガッカリ。ご都合主義、荒唐無稽過ぎるし、第一中国大陸の広大さを余りにも無視し過ぎている。
もっと真面目なポリティカルアクションとして見たい内容だった。」
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