いじめのある世界に生きる君たちへ 中井久夫(著) 中央公論新社 (2016/12/7) 1,320円

いじめられっ子だった精神科医の贈る言葉

本書は、2011年10月に滋賀県大津市で市立中学の男子生徒が自殺をした「大津いじめ事件」の第三者委員会報告書に引用された、中井久夫氏の『アリアドネからの糸』(みすず書房)の「いじめの政治学」を小学校高学年から読めるよう、再編集したものです。

「大津いじめ事件」は「透明化」の段階だったとされています。

いじめのニュースが後を絶ちません。

格差社会、子どもの貧困も、いじめに拍車をかけ、限度がわからず、同級生を殺してしまうようないじめ、SNS、原発など、現代ならではのいじめも発生しています。

「いじめをなくせ」というのは簡単でも実現するのは不可能。

82歳、自身をもいじめられっ子だった日本を代表する精神科医が、「翻訳者」を付け、名著「いじめの政治学」を小学生以上に書き下ろしたメッセージです。

中井氏は「子どもの社会が権力社会である」としいじめを「孤立化」「無力化」「透明化」の三段階に分けました。

「いじめられても、逃げる、死なない」ために、子どもたちに、やさしく、大切な情報を的確に伝え、サバイバルのきっかけをつかんでほしいと作った1冊です。

そして、親や教師、子どもの近くにいる大人たちが、いじめを軽く見ず、子どもたちのメッセージを見落とさず、真剣に向き合うための必読の書でもあります。

小学6年生で読めない漢字にはすべてルビを振っており、いわさきちひろさんの画を添えているので、親子で読んだり、親が子どもに贈ることもできます。

目次より
1、いじめは犯罪でないという幻想
2、いじめかどうかの見分け方
3、権力欲
4、孤立化
5、無力化
6、透明化
7、無理難題
8、安全の確保
構成・編集者によるあとがき」

「報道されるいじめの問題を見るにつけ「いじめに気付かなかった」というコメントをきいて憤りを感じている。この本を読んでいじめが見えにくいように巧妙に仕掛けられているのが少し理解でした気がする。こども向けに書かれているので、分かりやすく心に響く一冊です。是非沢山の方に読んでほしいと思います。いじめを受けた悲しみも突き刺さります。」

「現在、思春期に深刻ないじめ体験を受けた方の支援していますが、その後遺症たるや破壊的です。家庭、学校、職場における安全を保障するためには、まずは加害者の戦略を知り、その戦術に楔を打ってできるだけ被害者を出さない環境を作っていく必要があります。本書は、私たちへの、中井先生からの大切な、大切な贈り物です。」

「世間では、それがいじめかそうでないかの見分け方を、やられている側がいじめだと思ったら、それはいじめであるとよく言われる。しかし、そういう判断基準としては、自分はそのことに非常に曖昧な印象があった。それに対して、著者は、いじめの判断基準は、やる側とやられる側の立場の入れ替えがあるかどうかだと言う。なるほど、すごく納得がいった。そのほかにも、目からウロコのいじめ論だと思う箇所が多くあった。ページ数も少ないし、子供でも読めるように書かれている。いわさきちひろさんの優しい挿絵も良い。学校の教室に一冊置いておくべき本だと思った。」


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