ジミー・ハワードのジッポー 柴田哲孝(著) U-NEXT (2021/11/30) 1,980円

2019年7月、小説家の桑島洋介はベトナム戦争を題材に新作を書こうと思い立ち、取材のため彼の国を訪れた。

ベトナム人女性で、旧知の新聞記者ホアン・タオにホーチミン市内を案内してもらった折に、戦時中に米兵が所有していたらしいひとつのジッポーを、桑島は手に入れた。

約50年前、激戦地で任務に就いていた兵士の名は「JIMMY HOWARD」と刻まれている。

俄然、興味が湧いた桑島が調査に乗り出すと、次々に意外な事実が明らかになり、やがてアメリカで殺人事件が発生する。

いまだ癒えぬ戦争の影と米軍の闇を暴く正統派ノンストップ・サスペンス?

著者について
1957年、東京都出身。日本大学芸術学部写真学科中退。フリーのカメラマンから作家に転身し、現在はフィクションとノンフィクションの両分野で広く活躍する。パリ?ダカールラリーにプライベートで2回出場し、1990年にはドライバーとして完走。1991年『KAPPA』で小説家デビュー。2006年、『下山事件 最後の証言』で第59回「日本推理作家協会賞・評論その他の部門」と第24回日本冒険小説協会大賞(実録賞)をダブル受賞。2007年、『TENGU』で第9回大藪春彦賞を受賞し、ベストセラー作家となった。他の著書に『DANCER』『GEQ』『デッドエンド』『WOLF』『下山事件 暗殺者たちの夏』『クズリ』『野守虫』『五十六 ISOROKU異聞・真珠湾攻撃』『ミッドナイト』『幕末紀』など、多数ある。

「柴田哲孝を読むのは、「野守虫」(2020/1月)以来になりますが、「ジミー・ハワードのジッポー」(U?NEXT)を読み終えました。
1968年、ヴェトナム戦争、クアンチでの或る出来事から、2019年、ホーチミンへと時系列が飛び、主人公であり、小説家の桑島は、一軒の店で「ジミー・ハワードのジッポー」を手に入れます。そのジッポーは、本物なのか?
そして、米国、ジョージア州、コロンバス、フォートベニング基地。アメリカ陸軍第四七歩兵連隊に所属するアライアの下へ、そのジッポーが届けられることになります。引き起こされる殺人事件。1968年1月22日、戦火のヴェトナムで一体何があったのか?
桑島の視点とアライアとその恋人・ジェイソンの視点によって、ヴェトナム戦争時のアメリカ軍の”MIA”と或る謀略が骨太なストーリーによって語られていきます。残念ながら、そのミステリの根幹を語るわけにはいきません。
特に、米国側を描き込むディティールに支えられながらの違和感のないストーリーは読ませますが、一方、昨今のより複雑なストーリー展開による欧米のスリラーを読み慣れた読者からするとその「謎」は少し物足りないと感じられます。凄みを感じさせる部分があるとすれば、それは「ヴェトナム戦争」というマテリアルの凄みであって、ストーリーテリングにあるわけではないと言っていいかと思います。」


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