騙る 黒川博行(著) 文藝春秋 (2020/12/14)

大物彫刻家が遺した縮小模型、素人の蔵に眠っていた重文級の屏風、デッドストックのヴィンテージ・アロハ……。

こいつは金になる――。

古美術業界の掘り出し物にたかる、欲深き人びと。

だましだまされ、最後に笑うのは誰?

著者の十八番、傑作美術ミステリー連作集!

「2019/11月に読んだ「桃源」以来になりますが、「騙る」(黒川博行 文藝春秋)を読み終えました。6篇の短編が収録されていますが、そのテーマは著者にとって自家薬籠中のものに思える古美術ミステリ。すべてとは言えませんが、美術年報社の「佐保」と菊池が狂言回しの役割を担っています。

(1)「マケット」
キレがいい。
(2)「上代裂」
ストレートなコン・ゲーム。
(3)「ヒタチヤ ロイヤル」
ヴィンテージ・アロハ。2019/11月に読んだ「1939年のアロハシャツ」(早川書房)を想起。
(4)「乾隆御墨」
古墨。贋作。
(5)「栖芳写し」
狩野派の屏風。最も充実した一篇だと思います。
(6)「鶯文六花形盒子」
国立美術館の常設展示などでいつも難儀するのは、(私の場合)つけられているタイトルの漢字をまともに読めたことがないことにあります(笑)。殷、周時代の青銅器。

すべて、その巧みな会話と語り口で読ませますが、ミステリ的な「はなれわざ」はありません。そういえば、登場人物の嫁や娘たちは、海外旅行、買い物、フラの稽古で家にいることがありません。その平和な日本的風景が応えられない。読んで、ひと時の楽しさに耽る「騙し」の短編集だと思います。」

「直木賞作家黒川博行のアートビジネス小説。その名も『騙る』…胡散臭さがたまらない作品です。黒川作品の真骨頂の大阪弁が小気味いい。もったいないが一気読み。(しかし黒川博行はどこで小説のネタを仕入れて来るのか?)
テレ東『なんでも鑑定団』を楽しみにしている人にはぜひとも読んで欲しい。アートビジネスの暗部の一分を知る事ができます。題材は、マケット(彫刻の試作品)、上代裂(古い繊維)、アロハシャツ、古い墨、金屏風、青銅器。値段がつくマーケットには、プロがいて生兵法の素人がカモられる。美術品に手を出すにはそれなりの知識と経験が必要ってことです。『なんでも鑑定団』視聴者にはお薦めしますが、すでに古美術品に手を出している人は背中がす~す~になるのかもしれないので注意。」

「『騙る』は、主に美術関係の出版に関わる人物を主人公(語り部)としていますが、6つの独立した短編からできています。すべての話に共通しているのが、今時、大阪とはいえ、こんな商人はいくらなんでもいないだろうと思うような誇張した感はありますが、いわゆるビジネスマン(ビジネスパーソン)とは違って、人の欲望や感情を読んだうえで発する会話や行動に、いまだに大阪人の奥底に残っている気質が垣間見れて興味深いです。」


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