変わる日本史の通説と教科書 本郷和人(著) 宝島社 (2021/6/10)

昭和、平成、令和と変わり、いまや親子で歴史の知識や認識も大きく異なることがしばしばです。

かつて1万円札の顔だった「聖徳太子」の肖像は「聖徳太子と伝えられる肖像画」となり、その存在も議論を呼んでいます。

鎌倉幕府の始まりの年号といえば、1192年で「いい国作ろう」と覚えましたが、現在では1185年で「いい箱作ろう」という語呂合わせに。

新事実や研究の進展で変わる日本史の教科書。

その経緯や事例の紹介を通じて、新しい通説がわかる一冊です。

「我々大人達が学生の頃に習った日本史が、その後の研究等により新たな事実や学説が出てきて、その内容が大きく変わった。
聖徳太子は実在しなかった?鎌倉幕府の創設は1192年ではない?源頼朝の肖像画は別人?江戸時代の鎖国はなかった?生類憐みの令は優れた政策だった?・・・
なるほど、歴史も学問だから時代が進めば新たな発見があり、変化していくのだな。これは私達大人も知っておかなければならない重要なことだと思った。
今度本屋に行ったら、日本史の参考書でも見てみるかな。」

「昨今の研究の成果で、教科書の日本史の記載が変化してきているのは日本史のファンならば大なり小なり承知しているところであるが、この本ではその教科書の変化を、古代から近世まで幅広くかつ簡潔で分かりやすく日本史の教科書の変化の動向を解説している。
日本史のマニアならば知っている内容も多いとは思うが、非常に読みやすく楽しいので教科書の変化の総まとめ的に楽しむのもいいかもしれない。繰り返すけれどマニアには少し目新しさは少ないとも事実だと思う。」

「著者がなぜ「今」この本を書いたか、我々読者はよく考えなければならないだろう。
本書には、政治的なイデオロギーによって学問の成果がねじ曲げられることの危険性がはっきりと示されている。また、地域経済の発展などの利害によって学説が歪むことへの警鐘も併載される。歴史の教科書は戦前には大きく右に触れた。「古事記」や「日本書紀」、いわゆる記紀を史実と捉える皇国史観の勢いが増大したからだ。だから逆に、敗戦後にはその反動で大きく針は左に動いた。現在は中立になっているが、それも危ういバランスの上に成り立っていることは、五輪開催についての専門家の論説に対する過小評価等々、現在の政府の動きを見れば一目瞭然だろう。
本書は、歴史についての記述が興味深いのは間違いないのだが、歴史を楽しませるというよりも、歴史という学問における中立の大切さを啓蒙する意図のほうが大きいように個人的には思われる。ぜひお手に取っていただきたい。

補足 やはり、江戸時代後期にリテラシーが向上したことにより、庶民たちがどんな世界観を獲得していったのかについての著者の考察が興味深かった。」


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