草にすわる 白石一文(著) 文藝春秋 (2021/1/4)

「五年間はなにもすまい」。大企業を辞めた洪治は無為な日々を過ごしているがある日付き合っていた彼女から昔の不幸な出来事を聞かされる。

絶望に追われた二人の間には睡眠薬の山があった――(表題作)。

なぜ人間は生まれ、どこに行くのか。一度倒れた人間が一歩を踏みだす瞬間に触れる美しい短編「草にすわる」「花束」「砂の城」「大切な人へ」「七月の真っ青な空に」を収録。

「白石一文氏の本を読みたくて、でも、さあ・・・という時になるとこちらの身にトラブルが起きて、ようやく『草にすわる』を読了できました。本当は『一瞬の光』から順番に読んでみたかったのですが。
好感がもてました。そして、読んでいる間に居住まいを正している自分がいたのでした。オビに「小説の大きな役割に挑む」という言葉がありますが、読後、なるほどなるほど!と納得しました。まるで、中高生の頃に戻ったような気持ちです。なぜ生きるのか、生きるってなんなのか、そんなことばかり考えていたあの頃。この本に今一度、その問いを突きつけられて、おまけに有り難いことに、白石氏は「生きることそのものの真の祝福」という力強い言葉を、私に与えてくれました。長らく考えようともしなかったことを、もう一度見つめるきっかけになりました。」

「「草にすわる」「砂の城」「花束」の3つの中篇からなる。書いた時期がそれぞれ10年違い、作品や文章のタッチもずいぶん違うように思うが、どれも濃くて身があり、読み応えがあって、引き込まれるストーリーだった。登場人物たちが人生について考え、自分なりの答えを探していく。脇役で出てくる人も存在感がある。最後にある著者による「文庫本のためのあとがき」は著者の考えが簡潔に述べられていて白石氏の作品が好きな方なら必読だと思う。」

「「私という運命」を読んで以来、氏の作品はすべて手にとりました。「僕のなかの壊れていない部分」だけは途中で挫折しましたが。新刊が出ると真っ先に買うのですからファンと言えるでしょうが、これまでは主人公の口から語られる女性観に反発したり、これを書きたいという主張が強すぎて物語の作為性が鼻につくことが多かったように思います。それでもひかれてやまないのは「何のために書くのか、何を書こうとしているのか」という「何か」が私が本に求めるものと一致しているからでしょうか。他の作品に比べると主人公をいたって平凡な男性にしたことで、初めて筆者の主張を主人公の姿にのせて体現させることに成功していると思います。他の作品に較べるとこじんまりとしていますが、いい作品だと思います。「僕のなかの壊れていない部分」再挑戦しなくては!」


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