アウトサイダーたちの太平洋戦争  知られざる戦時下軽井沢の外国人 高川邦子 (著) 芙蓉書房出版 (2021/5/11) 2,640円

外国人が厳しく監視された状況下で、軽井沢に集められた外国人1800人はどのように暮らし、どのように終戦を迎えたのか

聞き取り調査と、回想・手記・資料分析など綿密な取材でまとめあげたもう一つの太平洋戦争史

深刻な食糧不足、そして排外主義的な空気が蔓延し、さまざまな国籍、背景の外国人は狭い地域の中で日本人とどう向き合って暮らしていたのか

ピアニストのレオ・シロタ、指揮者のローゼンストック、プロ野球選手のスタルヒンなど著名人のほか、ドイツ人大学教授、ユダヤ系ロシア人チェリスト、アルメニア人商会主、ハンガリー人写真家などさまざまな人々の姿が浮き彫りになる!

  • 東京大空襲を機に、中立国の外国公館は軽井沢に強制疎開させられた
  • 外務省は軽井沢事務所を設置(著者の祖父大久保利隆公使が所長)
  • 「外国人居住絶対禁止区域」に指定された横浜から強制移住させられた人々
  • 憲兵や特高だけでなく軽井沢にはナチの秘密警察ゲシュタポもいた

目次
第1章 「発見」された軽井沢の外国人たち
第2章 落葉松林の中のモザイク社会
第3章 戦時下軽井沢の暮らし
第4章 昭和二十年
しのびよる栄養失調/東京大空襲/外交団の強制疎開と外務省事務所の開設/憲兵隊と特高警察の監視/ドイツ降伏す/一足早く終戦を知った外国人たち/八月十五日午前/正午の玉音放送
第5章 終戦後
消えた特高/移動始まる/アメリカ軍の軽井沢進駐/アメリカ色に染まる/逆転した立場――無国籍者とドイツ人/二種類の日本人/近衛文麿元首相の「最後の晩餐」/ドイツ人の送還/ドイツ人第二陣の送還
第6章 家族の物語

・シンチンゲル家
ドイツ語教師として来日/ナチスの影響/軽井沢/終戦後、アンネリーゼの死

・ブッス家
若き宣教師として来日/戦争の影響/軽井沢で生きた農業経験/終戦後/ケーテの死、続く日本との縁

・エルクレンツ家
独ソ開戦で日本から動けなくなる/ナチ党との距離/軽井沢/終戦後 ?シャピロ家
近衛秀麿と山田耕筰の招聘で来日/強制移転と空襲/軽井沢/終戦後

・ペトロフ家
「ロマノフの金塊」の返還を求めて来日/横浜と東京/軽井沢/終戦後

・アプカー家
初代アプカーと「アルメニアの母」/日米開戦、マイクの逮捕、従業員の裏切り、長女の死/軽井沢/終戦後

・フランク家
文部省招聘学者として来日/軽井沢/長男フーゴの逮捕と死/戦後と四十四年後の雪冤

・コーン家
ホロコーストを逃れて来日/軽井沢/終戦後

著者について
1961年東京都生まれ。日本郵船㈱勤務の後、1991年より㈱NHKグローバルメディアサービス登録翻訳者として、NHKで翻訳に携わる。2001年慶應義塾大学法学部政治学科卒業。大久保利隆の孫。著書に、『ハンガリー公使大久保利隆が見た三国同盟-ある外交官の戦時秘話』(芙蓉書房出版)がある。

「スッキリとした的確な文章、取材や資料収集の上でチョイスされている文体が読みやすい。
事実を書き残そうとする執筆者の姿勢が貫かれている。
取材で明らかになった事の中には歴史的にも学問的にも、きっと、すごい内容を含んでいるのだろう。
一方、
軽井沢の山の中に集められた人々の生活を開拓時代のアメリカのように感じてしまうのは脳天気だろうか。
また、戦後、いくつかの家族が辿った歴史を、現代にどう繋がってきているかを書いてある部分を読むと、
まるで、アメリカングラフティのような映画を見た後のような感じがする。

読んだ後には少し涙目になっている、そんな本に出会えた。」

「戦争史というと、どうしても自国民が中心になりがちですが、文書に残る資料とそれを裏付けるための国内外の生存者へのインタビューは数年経ったらもう不可能になる、新しい視点でまとめられたこの著作は今後貴重な資料になるはずです。
小学生の子どもが「戦時中の人々の暮らし」について調べる宿題に取り組みましたが、在日外国人の暮らしについての資料は他になく、この本も大いに参考にさせていただきました。
将来、平和な世の中を築くためにも若い世代にぜひ読んでもらいたいと思います。」

「軽井沢にかくも多くの外国人が暮らしていたとは吃驚しました。それもドイツ人(ユダヤ系も含めて)がメジャーだったんですね。
日本でもゲシュタボが暗躍していたとは……、ポーランドでホロコーストを実践したマイジンガーが河口湖にいたとは……、これまた驚きでした。」


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