カラー世界パンデミックの記録 マリエル・ウード (編集), 青柳正規 (監修), 前島美知子 (翻訳) 西村書店 (2022/5/22) 3,850円

コロナに立ち向かう人類の挑戦

2020年冬から2021年春までのあいだ、AFP通信は未曽有の事態に遭遇した世界の風景と人類の姿を撮影してきた。

中国に、インドに、スペインに、セルビアに、ポーランドに突如野戦病院が出現した。

日本でもエルサルバドルでも、マスクのある生活は当たり前となり、ソーシャルディスタンス、テレワークは日常となった。オリンピックも延期された。

緊急事態宣言やロックダウンが実施され、赤の広場からも、シャンゼリゼ通りからも、サン・マルコ広場からも。タイムズスクエアからも、人の姿はなくなった。

韓国でも、コロンビアでも、街や教会など人が集まるところはすべて徹底して消毒された。

病床は足りなくなった。ニューヨークでは遺体置き場が、メキシコシティでは墓場すら、足りなくなっていった。

家がないベルギーのホームレスやセネガルの遊牧民は、途方に暮れるしかなかった。

常に緊張を強いられる医療従事者の顔からは、なかなかマスクの痕が消えない。

しかし、人類は挫けない。

ブラジルの奥地でも検温が行われ、人里離れたトルコの村でもワクチン接種が実施された。

ステイホームが推奨されるなかでも、キプロスやドイツやパレスチナの人々は健康を楽しく保つ術(すべ)を見つけていった。

キューバでもタイでも、最前線で働いてくれているエッセンシャルワーカーに感謝を送る習慣が根づいていった。

マスクを着飾り、閉められたシャッターを彩る陽気な光景も見られるようになっていった。

本書は、「疫病の真っ只中で学んだのは、人類には軽蔑することより賞賛することのほうが多いということだ」
というカミュ『ペスト』の一文からはじまる。人々の連帯感や創造性、息遣いまでもが活写された、何度でも振り返りたい一冊。本書は、未来への道しるべとなるであろう、「希望に満ちた」地球の記憶である。

◇ ◇ ◇

・61の国と地域、165の都市や町、481点の写真。
・世界はいかに闘ってきたか、闘っているか。
・未来への道しるべとなる地球の記録。
・各国からの声―世界の著名人が寄せたエッセイ、5本掲載。
・日本語版の出版に際し、写真を増補。

著者について
編 ◆ マリエル・ウード(Marielle Eudes)
フランス国立東洋言語文化大学(INALCO)でロシア語とアラビア語を習得し、パリ政治学院で学んだ後、1987年にAFP通信(フランス通信社)にジャーナリストとして就職。ロシア専門として1990年代初頭からモスクワ赴任、コソボ紛争を含むソ連崩壊後の15年以上を追う。特にチェチェンの紛争に関し、1995年にAFPモスクワ事務所としてアルベール・ロンドン賞受賞。2006~2007年にパリに帰任しAFP経営管理、人事管理、大規模交渉などを担当し、現在は10年に渡り写真部門統括を務める。

日本語版監修 ◆ 青柳正規(あおやぎ まさのり)
多摩美術大学理事長、東京大学名誉教授。1944年大連生まれ。古代ギリシャ・ローマ考古学者。1967年東京大学文学部美術史学科卒業。国立西洋美術館館長、独立行政法人国立美術館理事長、文化庁長官など歴任。2006年紫綬褒章受章、2017年瑞宝重光章受章、2021年アメデオ・マイウーリ国際考古学賞受賞、文化功労者。ポンペイ「エウローパの舟の家」、シチリアのレアルモンテのローマ時代別荘、ソンマ・ヴェスヴィアーナのいわゆる「アウグストゥスの別荘」の発掘にあたる。著書に『皇帝たちの都ローマ』(中公新書)[毎日出版文化賞] 、『興亡の世界史 人類文明の黎明と暮れ方』(講談社学術文庫)、監訳書に『地図を旅する 永遠の都ローマ物語』(西村書店)などがある。

訳 ◆ 前島美知子(まえじま みちこ)
慶應義塾大学大学院(修士)修了後、2005年にパリに渡り、建築史研究のかたわら、ワインやモード業界での通訳や翻訳を手がけ、フランス文化と世界の関係について新たな視座を開拓中。共著書に『サンゴバン ガラス・テクノロジーが支えた建築のイノベーション』などフランスでの出版物、訳書に『パリの街並みと暮らし 知られざる魅力』『ぼくは建築家 ヤング・フランク』(以上、西村書店)など。フランス国立科学研究センター(CNRS)ポスドク研究者、ユネスコ日本政府代表部(パリ)専門調査員を経て、現在、CNRS共同研究室(AHTTEP)研究員および個人事業主(通訳・コンサルティング、フランス)を兼任。学術博士(日本、フランス)。


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