ロッキード 真山仁 (著) 文藝春秋 (2021/1/13)

角栄はなぜ葬られたのか? 新証言と膨大な資料を駆使した人気作家渾身の超弩級ノンフィクション、ついに刊行!。

フワフワとした事件――元最高裁判事が抱いた違和感とは。前総理逮捕という「特捜の金字塔」は神話に過ぎなかったのか。

関係者多数に徹底取材。多くの新証言を得て田中角栄を葬った“真犯人”に迫る。いまロッキード事件の真実が明らかになる。

ロッキード事件を見つめれば、この国のかたちが見えてくる。

〈自民党の長期政権の功罪、金権政治、日米関係、政治と検察庁の関係、さらには熱しやすく冷めやすい国民感情等々。それは、まさに日本の現代史を象徴する事件だった。ならば、すべての先入観を捨てて事件を再検証する必要がある〉(序章「霧の中の大迷宮」より)

「ロッキード事件を追った600ページに迫る大著。その最後は著者が田中角栄の生家の前に立つ場面で終わるが、その最終盤の一節に「初めて明かされる新事実に驚愕することもあった」とある。長い時間をかけ、数多くの当事者に取材し、取材のためには全国各地にも足を運んだゆえか、新事実に驚愕という感慨にふけることになったのかもしれないが、そこまでの新事実が本書では明かされたとは思えない。むしろ、既に出尽くされた情報を再確認した上で新たな見方を提示することによって、本書は読者を驚愕させるのではないだろうか。

優れたノンフィクションがそうであるように、本書も謎解きのように記述が進んで行く。そのテンポが良く、さらに山場が何度も出てくるので、読んでいても600ページ近くあることを忘れてしまう。特に、第二部では、角栄の裁判の顛末を追った後、全日空ルートに迫った第八章。第三部では、児玉誉士夫を追った後、中曽根康弘につきまとう疑惑に迫った第十三章。第四部では、角栄が葬られた理由を追いながら、佐藤栄作の役回りに迫った終章。各部の最後の章に本書で提示するところの新たな見方が配置され、そこまでに至る記述が見事にその見方につながるように工夫されている。
戦後史を代表する事件を「まだ終わらないもの」として蘇らせることに成功した快著である。」

「私は40代。ロッキード事件はリアルタイムの記憶にない。
本やテレビでロッキード事件は知ってはいたが、それは、後年のマスメディアによるものであり、田中角栄が賄賂を貰って捕まったくらいはしっている。
つまりはロッキード事件を良くしらない世代である。

多くの同世代の人がロッキード事件を意識するとすれば憲法の授業の『ロッキード・丸紅ルート事件』(最大判平7、7、22)の最高裁判例であろう。
民間会社の旅客機導入につき、内閣総理大臣は職務権限があるかいなかを問うた裁判である。

学生の時、「不思議」な判例と多くの人が思ったのではないか。憲法の授業で旅客機導入の話…

この判例をなんとなく学習して、そのままの人に言いたい。
その事件の司法手続きは、証拠資料を含め検察、裁判所まで異例づくしの無茶苦茶である。
詳しくは本書を読んで欲しいが、この本を読んだ感想は「田中角栄は冤罪なのではないか…」
そのくらいのインパクトのある本である。

もちろん、田中角栄が今の基準でクリーンな政治家であるとは思わないが、この裁判は手続上問題がありすぎる。
600ページ近い本であるため時間がない人はとりあえず第二部だけでも読む事を薦める。

なお、真山仁氏が伝えたかった時代の空気感の描写はお見事。大著であるがおそれる無かれ。」


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