両手にトカレフ ブレイディみかこ (著) ポプラ社 (2022/6/7) 1,650円

西加奈子氏、推薦! 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』の著者が14歳の少女の「世界」を描く、心揺さぶる長編小説。

この物語は、かき消されてきた小さな声に力を与えている。
その声に私たちが耳を澄ますことから、全ては始まるのだ。
――西加奈子氏

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』には出てこないティーンたちがいました。

ノンフィクションの形では書けなかったからです。あの子たちを見えない存在にしていいのかというしこりがいつまでも心に残りました。

こうしてある少女の物語が生まれたのです。

「ここではない世界」は、 今この場所から始まっていく――。

寒い冬の朝、14歳のミアは、短くなった制服のスカートを穿き、図書館の前に立っていた。そこで出合ったのは、カネコフミコの自伝。

フミコは「別の世界」を見ることができる稀有な人だったという。

本を夢中で読み進めるうち、ミアは同級生の誰よりもフミコが近くに感じられた。

一方、学校では自分の重い現実を誰にも話してはいけないと思っていた。

けれど、同級生のウィルにラップのリリックを書いてほしいと頼まれたことで、彼女の「世界」は少しずつ変わり始める――。

著者について
1965年、福岡県生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2017年、『子どもたちの階級闘争 ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞。2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で毎日出版文化賞特別賞、Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞などを受賞。ほか著書に『女たちのテロル』『ワイルドサイドをほっつき歩け ハマータウンのおっさんたち』『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2』など多数ある。

「全体を通して、扱っているテーマの重さからこれまでのブレイディさんの作品と比べて、読みにくいと感じる方もいるかもしれません。ただ、この作品は時空を隔てても弱者が酷い目に遭わされ続ける現状に対し、そんな中でも人生を生きるに値するものにするためにどうすれば良いのかということについての一つの答えを示しているようにも感じます。ブレイディさんのファンであってもなくても、手に取って読む価値のある作品だと感じています。」

「現代(2022年ぐらい)のイギリスの少女が日本の大正時代の金子文子の生涯に興味を持ち・・・というお話。

金子文子の人生と現代のイギリスの少女の話しを絡めて、現代の人間の尊厳を問う、という小説だと思いました。

金子文子という大正時代の実在のアナーキストの事を知っていないと判らない部分があるかもと思われる方も多いと思いますが、この小説に簡潔にまとめてあるので心配しないで読めます。また同じ著者の「女たちのテロル」でも読めます。
その思想は、私もよく理解しているかどうか疑問ですが、自分が自分であっていい、世界に他の人が存在している様に自分も存在していていい、という物だったらしいですが、最近の面接等で自己肯定感即ち自分がどれくらい有能か、人より優れているかを強調しないといけないみたいですが、そういう風に生きていい、或いはそういう風に生きなければならない、という事だったらしいです(違ったらすいません)。

現代のイギリスの少女の部分でも、進化して自分を表現するツールがスマホになっておりますし、表現の媒体はラップのリリックになっておりますが、金子文子の時代と本質は変わっていない、普遍、という風になっております。

個人的な事を申すと、私も面接等であまり自己肯定感を出せずに不採用が多かったりしますが、何にも才能がないうえ、携帯電話も持てない貧乏人なので、この小説に出てくる少女みたいに、スマホを持っていないで劣等感を感じてしまうのも真実だったりもします。なので身に詰まされますが、現代の人間の尊厳をテーマにした重要な作品に思えました。しかもあまり難しくならずに判りやすい所が良かったです。私的にはケインの「郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす」やマッコイの「彼らは廃馬を撃つ」に比肩する傑作ではないかとも思いました。

現代の人間の尊厳と実存をテーマにした判りやすい小説。是非ご一読を。」


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