信仰 村田沙耶香(著)文藝春秋 (2022/6/8) 1,320円

世界中の読者を熱狂させる、村田沙耶香の最新短篇&エッセイ

「なあ、俺と、新しくカルト始めない?」

好きな言葉は「原価いくら?」で、現実こそが正しいのだと、強く信じている永岡。

同級生から、カルト商法を始めようと誘われた彼女は――。

信じることの危うさと切実さに痺れる8篇。

〈その他収録作〉
★生存
65歳の時点で生きている可能性を数値化した、「生存率」が何よりも重要視されるようになった未来の日本。
生存率「C」の私は、とうとう「野人」になることを決めた。

★書かなかった小説
「だいたいルンバと同じくらいの便利さ」という友達の一言に後押しされて、クローンを4体買うことにした。
自分を夏子Aとし、クローンたちを夏子B、C、D、Eと呼ぶことにする。
そして5人の夏子たちの生活が始まった。

★最後の展覧会
とある概念を持つ星を探して、1億年近く旅を続けてきたK。
彼が最後に辿り着いた星に残っていたのは、1体のロボットだけだった。
Kはロボットと「テンランカイ」を開くことにする。

ほか全8篇。

「表題の「信仰」が面白い。
ビジネスとして宗教を始める男と、バカにする女。
騙されているのか本当に信じているのか分からない女。
みんな一筋縄でいかない個性を短編で上手くまとめている。
ラストの話も良い。」

「①著者の作品を読むのは『コンビニ人間』以来であり、今回も素晴らしかった。第一短編「信仰」は、カルト教団そうせつに関与する主人公と開祖、真面目な女性との関係を描くものだ。主人公は「夢や幻想」にとりつかれ無駄遣いする人間を「現実」に連れ戻す役割を正義と見なし、カルトと闘うことを使命と心得、知人女性を「現実」に連れ戻そうと試みる。
②しかし、「現実」だけの人生は味気ない。詰まらない。そこでカルトへ潜入する。知人女性は浄水器の販売の失敗を天動説体験を売り物にリベンジしようと試みる。さて物語はどうなるか?これ以上は書けないが、この小説の問題提起は、人は騙されてカルトに入信するのではない。騙されていることを承知の上で教祖を狂信する。嘘でもよいから誰かを信じたいのである。そのためなら金を惜しみ無く遣うのも惜しくない。
この心理を堪能できるのが、この短編の面白さである。よくてきた小説だ。
お勧めの一冊だ。」


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