深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 辻真先 (著) 東京創元社; 文庫版 (2021/1/28) 990円

2020年ミステリランキング第1位『たかが殺人じゃないか』の前日譚、ついに文庫化。

戦前の名古屋と東京にまたがる不可解な事件。

実在の博覧会が舞台の長編ミステリ

昭和12年(1937年)5月、銀座で似顔絵描きをしながら漫画家になる夢を追いかける那珂一兵のもとを、帝国新報(のちの夕刊サン)の女性記者が訪ねてくる。

開催中の名古屋汎太平洋平和博覧会の取材に同行して挿絵を描いてほしいというのだ。

取材の最中、名古屋にいた女性の足だけが東京で発見されたとの知らせが届く。

二都市にまたがる不可解な謎に、那珂少年はどんな推理を巡らせるのか?

ミステリ界で話題となった『たかが殺人じゃないか 昭和24年の推理小説』の前日譚が、待望の文庫化!

「「このミス」2021年版で「たかが殺人じゃないか」が1位になったので、3部作の最初であるこの本を注文したのだが、一気読みしてしまった。昭和12年当時の銀座、名古屋の雰囲気がよく伝わってきたし、何よりもラストの仕掛けが秀逸。一兵の最後の最後に残った疑問が特急燕の中で氷解するところまで、全編にわたって作者の戦前に対する強い思いが伝わってくる。何で、これが「このミス」2019年版で20位以内に入らなかったのか摩訶不思議。まさか、「このミス」評価者連中は大日本帝国無謬性信奉者ばかりということではないだろうなあ。それはともかく、「たかが殺人じゃないか」を読む前にこの作品を読んでおくことが不可欠でせうね。」

「名古屋に生まれ育った私には、懐かしくも美しい物語。
当時の社会と政治状況を背景に、乱歩もかくやというトリックの犯罪が描かれる。何より主人公の一平をはじめとして、登場するキャラクターたちの魅力的なことよ。
血なまぐさい事件でありながら、読後感が爽やか。
一平の恋は成就しないけど、これまたほろ苦くも爽やかなエピローグに最後まで酔わされた。
名人芸を堪能した気分。」

「日中戦争前夜という微妙な時期を舞台にしたミステリです。
次作にあたる「たかが殺人じゃないか」でも同様でしたが、事件やその解決そのものよりも、当時の風俗を描いた描写のほうが興味深く読めました。
登場人物の善悪で単純に分けることのできない複雑で陰影に富んだキャラクターも本作の魅力の一つだと思います。
読後感も爽やかで、個人的にはミステリランキングで高評価だった次作よりも、こちらのほうが楽しく読めました。」


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