元祖ハイブリッド…プリウスの役目は終わった?

プリウスの役目は終わったのか? 

元祖HV車の功績と現在の立ち位置

1997年12月、「21世紀に間に合いました。」のキャッチコピーで歴史的な登場をはたした、トヨタ「プリウス」。

世界初のハイブリッド量産車として華やかなデビューを飾り、また先進技術搭載車でありながら使い勝手と省燃費性能を併せ持った存在として重宝されたプリウスは、かつて販売台数ナンバーワンの座を獲得。

しかし直近2021年度(2021年4月~2022年3月末)の年間販売台数は44,935台(前年同期比76%)に留まり、登録車販売ランキングでは15位まで順位を落としています。

もちろんかつて「ほぼ唯一のハイブリッド車としての選択肢」だった頃と比べると、日本自動車界の様相は大きく変化しました。

ではプリウスはその変化についていけているのでしょうか。

それとも取り残されているのでしょうか。

初代プリウスは売れば売るほど赤字だった!?

初代プリウスに搭載されたのは、1.5L ミラーサイクル式ガソリンエンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステム。10・15モード燃費は28km/Lと、当時としては驚異的な数字だったのです。

ボディは5ナンバーサイズで、ちょっと高さのあるセダンという印象。

室内空間は広く、後部座席でも大人がラクに座れる高効率パッケージングでした。

車両本体価格は215万円から。

この価格は「21世紀へGO」という語呂合わせから付けられた価格、という噂もありましたが、こうしたジョークがあったことも面白いエピソードです。

バッテリーやモーター、制御ユニットなど、新たに搭載されたテクノロジーを考えると、当然この価格では利益が出なかったため、初代プリウスは売れば売るほど赤字だったといわれています。

時代がプリウスに追いついた!! 三代目は大ヒットを記録

販売において、プリウスは二代目までは苦戦をしていました。

メカニズムの観点からするとお得な値段だったとしても、同クラスのカローラに比べたら相当割高でしたし、いくら燃費がよくても通常のモデルサイクルでは、価格差をガソリン代で回収するのは難しかったのです。

バッテリーだっていつまで持つのか未知数。

ハイブリッドだからといってめちゃくちゃ走りが良いわけでもありません。

ネガティブな要素を考えていくと、新しいもの好きでなければ簡単には手が出ない存在だったのです。

ところが、2009年5月に登場した三代目プリウスは大ヒットとなりました。

ハイブリッドシステムはほとんど新開発ともいえる「リダクション機構付THS-II」を搭載し、高速道路での燃費向上を図って1.8Lのガソリンエンジンを採用しました。

スタイリッシュでモダンなデザインもバランスが良く、プリウスのクリーンなイメージに直結するものだったのです。

もちろんメカニズムやデザインだけが売れた原因ではなく、著名なハリウッドスターやセレブが「エコカー」に乗ることの意義を発信してプリウスを選んでいたことや、政府のエコカー減税、補助金導入によるバックアップも大きいものがありました。

日本では2009年から2012年の年間販売台数で首位、2015年に登場した4代目も2016年と2017年、2019年の前半まで首位を獲得。

プリウスはこうして人気モデルへと駆け上がったのです。

エコカーの代表選手として存在意義を維持できるか!?

プリウスのすごいところは、ハイブリッドモデルとして先進的なメカニズムを搭載しているのに、いたって走りが「普通」であるところです。

ものすごいスポーティなわけでもなく、運転が難しいわけでもありません。

デザインも決して奇抜ではなく、親しみ深さがありつつも、先進性と機能性を随所に盛り込んだディテールです。

もし初代プリウスの価格が庶民には手の届かないほど高かったり、ハイブリッドシステムが既存の高級車の一パワーユニットとして登場していたとしたら、ここまでハイブリッドは浸透していなかったでしょう。

プリウス自体は初代も二代目もヒットしなかったとはいえ、三代目の登場までには確実に「庶民が買えるエコカー=プリウス」として認知されていきました。

今これだけハイブリッドが浸透しているのもプリウスの存在があったからこそです。

ところが今は、SUVもミニバンもコンパクトカーも高級セダンもハイブリッドが選べますし、クリーンディーゼルやダウンサイジングターボによってエコカーの選択肢は広がっています。

欧州モデルを中心にバッテリーEVも続々と登場しており、プリウスを選ぶ理由が少なくなくなっているのです。

プリウスがあくまでもエコカーの絶対王者として残りたいのであれば、次世代のエコカーとして進化していくのが必要です。

「カーボンニュートラルとは選択肢を1つに(つまりバッテリーEV一点に)絞ることではない」と主張する豊田章男社長の言葉通り、トヨタは、バッテリーEVのほかにも、プラグインハイブリッド車や水素エンジン車の開発にも積極的です。

もし次のプリウスが「水素エンジン+モーター」のようなハイブリッドとして登場するなら、トヨタの看板モデル、そしてエコカーの代表選手として存在意義を維持できるのですが、はたしてどうなるのでしょうか。

クルマ自体がエコカーであることが大前提となってきている昨今、プリウスが生き残るには総合的な性能でもライバルを圧倒していく必要があります。

ハンドリングや実用性、デザインなどでどこまで存在感・優位性を示せるのか。

次期プリウスにも大いに期待したいところです。



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