食生活と睡眠は密接な関係にあった

「食生活と睡眠」はお互いに影響し合うことが判明、研究で分かった「健康的な睡眠をもたらす食事」とは?

人間は1日のうち約3分の1を睡眠に費やす必要があり、睡眠時間が足りないと心身へのダメージが悪化し続けたり、体重が増えたりといった悪影響が及ぶことがわかっています。

コロンビア大学で睡眠と栄養に関する研究を行っているMarie-Pierre St-Onge氏は、「睡眠と食生活は相互に影響を及ぼしており、食生活を改善することで健康的な睡眠をサポートできる」と述べています。

睡眠と体重の関係

St-Onge氏らの研究チームが2011年に発表した論文では、1日の睡眠を4時間程度に制限した状態を4日間続けたところ、1日当たりの摂取カロリーが300kcal増加することが示されました。

また、睡眠時間が長くなると摂取カロリーが減り、体重が落ちるという研究結果も報告されています。

睡眠時間を長くするだけで摂取カロリーが減り体重が落ちると研究で判明

St-Onge氏は睡眠が不足すると摂取カロリーが増える理由について、睡眠時間が不十分になることで食物に関連する脳の報酬系における活動が増加し、満腹感を制御するホルモン分泌が変化するからだと主張。

「言い換えれば、睡眠が少ない人はより空腹を感じ、砂糖と脂肪が多い食べ物を渇望する傾向があります」と述べています。

長らく「睡眠時間が食事に及ぼす影響」についての研究を進めてきたSt-Onge氏でしたが、アメリカの食事ガイドライン諮問委員会は2014年に、「食事は睡眠にどのような影響を与えるのか?」という逆方向からの質問をSt-Onge氏に投げかけたとのこと。

アメリカ人の35%は1日当たりの睡眠時間が7時間を下回っており、10~30%は不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害に苦しんでいるとのことで、睡眠の改善はアメリカにとって重要な課題です。

今度は「食事が睡眠時間に及ぼす影響」についての研究を始めたSt-Onge氏らは、いくつかの食品が睡眠を悪化させたり良化させたりするトリガーになっていることを発見したとのこと。

2016年の研究では、日中により多くの食物繊維を摂取し、飽和脂肪と砂糖を摂取量をより少なくすることは、夜の睡眠をより深くすることが示されました。

また、2018年の研究では、特に果物・野菜・豆類・ナッツ・全粒粉・オリーブオイルが豊富な地中海式食事法を採用したグループでは、地中海式食事法を採用しなかったグループより「よい睡眠」がとれる割合が1.4倍高く、不眠症を患う可能性が35%低かったとのこと。

悪い睡眠と食生活のサイクルを逆転させる

St-Onge氏は、ナッツ・種子・魚・鶏肉・卵などに豊富に含まれている必須アミノ酸であるトリプトファンが、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの生産に重要な役割を果たすと指摘。

また、トマト・パイナップル・タルトチェリー・バナナ・リンゴ・植物油・ナッツ・動物性食品にはメラトニン自体が含まれているとのことで、これらの食品を摂取すると睡眠の改善が期待できると述べています。

メラトニンのサプリは睡眠までの時間を平均4分ほど短縮するとの研究結果がありますが、St-Onge氏らの研究では、健康的な食事が睡眠までの時間を平均12分ほど短縮することがわかったとのこと。

また、食生活の改善は全体的な睡眠の質を改善する効果もあったとして、食生活の改善が睡眠を改善するフィードバックがあるとSt-Onge氏は主張しています。

「結局のところ、悪い睡眠と悪い食生活は悪循環に陥ってしまいます。睡眠不足が食生活の乱れを招き、その結果として睡眠の質が低下してしまうのです。しかし、このサイクルを中断し、好転させることは可能です。1日しっかりした食事をとることで、より安らかな睡眠を得ることができ、その結果としてよりよい食事を選ぶことが可能になるのです」

と、St-Onge氏は述べました。



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