定年後は無趣味がまずい!寝たきりにならないために

無趣味の定年後に要注意!「寿命が延びても寝たきり」にならぬためには

寝たきりや認知症の原因となる心身の虚弱化(フレイル)の意義・予防を多くの人に認識してもらうよう、日本老年医学会等4団体が共同で、2020年に「フレイルの日」を設定しました。

2月1日が「フ(2)レ(0)イ(1)ル」と語呂合わせできることから、同日を「フレイルの日」と定めたのです。

フレイルを意識して健康寿命を延ばす

昨今、平均寿命もさることながら、健康寿命が話題に上ることが多くなりました。

この概念は、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱したもの。

“平均寿命から寝たきりや認知症などの介護状態の期間を差し引いた期間”とされます。

厚生労働省の統計情報によると、2016年の健康寿命は男性が72.14歳、女性は74.79歳であり、平均寿命の80.98歳、87.14歳と比較すると、それぞれ8.84歳、12.35歳短くなっています。

ここから、女性の方が健康でない時期が長いことがわかります。

この健康でない期間は、2001年では男性が8.67年、女性が12.28年であったので、この15年間に平均寿命が延びたにもかかわらず、健康寿命は改善されたといえない状況です。

通常、男性は約7割の人がまず虚弱の状態になり、少しずつ弱りながら亡くなる一方、女性は約9割が虚弱状態になったのちに虚弱度を高めつつ亡くなります。

この虚弱状態をいかに短くするかということが社会全体の課題であり、日本老年医学会等がその意識を向上させるべく、マイナスイメージのある虚弱という言葉を、英語で虚弱を意味するフレイル(frail)という言葉に言い換えて定着させることにしました。

フレイルとは、元気な状態と介護が必要な状態の中間の状態を指し、年齢を重ね心身の活力が低下した状態をいいます。

従来は、要支援などかなりフレイルの進んだ人に重点が置かれていたのですが、より早めに可逆性のある段階から対策を打つべきだとして、フレイルになることを予防することに焦点を置くことになりました。

認知症発症の引き金ともなり得るフレイル対策は、日頃の生活習慣に注目することであり、ミドル世代の課題でもあるのです。

フレイルを予防するための3本の柱

まず意識すべきフレイルは意外にも“社会性の虚弱化”だとされます。

これが“心・心理の虚弱化”につながり、やがて“身体の虚弱化”を引き起こすとされるのです。

その予防策としては、社会参加と食事(栄養)、身体活動の3点に留意することが大切とされます。

1.社会参加

家族や友人、あるいは地域の人との交流が少なくなったり、何かを学んだり情報を得ようとする意欲が減退すると、生活範囲が狭まり神経・心理状況も低調となります。

さらには栄養などの食生活にも気を配ることが少なくなり、身体活動もおろそかとなるのです。

その結果、サルコペニア(筋肉量が減少し筋力や身体機能が低下する状態)を引き起こし、内臓の劣化も招いてしまうのです。

特に、交流が職場中心だった男性が定年になると、家にこもりがちになる人がいます。

友人と会ったり、趣味の会やボランティアなどをすることで人との接触を図ることが欠かせません。

社会性を失うことで、フレイル化が進むとされるのです。

105歳の長寿を全うした故日野原重明医師は、健康の3つの要点とされる“快食・快眠・快便”以外に、人と楽しく話し合う“快談”の必要性を強調しています。

英語にも「笑いが最善の薬」(Laughter is the best medicine)ということわざがあります。

会話の中で笑い転げる心地よさは、心身を活性化させるようです。

2.食事(栄養)

食事はバランスよくとることが大切ですが、特に年齢を重ねた場合、筋肉・骨・血液の材料となるタンパク質の摂取に気を配る必要があります。

タンパク質の摂取には肉や魚、卵や乳製品などの動物性食品にとどまらず、豆類などの植物性でも対応できるのですが、炭水化物や脂質といった他のエネルギー産生栄養素などとのバランスも肝心です。

同時に、口腔機能が衰えると肉類が食べにくくなり、つい噛み応えのない炭水化物や糖質ばかりに手を出すようになるリスクがあります。

歯科への定期的な通院による口腔関連のチェックは欠かせません。

3.身体活動

周りを見渡しても、健康で長寿の人には定期的な運動を心がけている人が少なくありません。

中には運動するのが嫌いだとして、周りの忠告にもかかわらず運動を怠けた結果、やがて後悔しきりになった人も見かけます。

運動に真面目に取り組む人は、意志の強い人であり健康維持・増進面で留意すべき他の事項にも前向きに取り組む傾向があるようです。

たっぷり歩くことを習慣にしたり、腕立て伏せやスクワットなど筋肉を鍛える運動は、シニアになる前から身につけたいものです。

見かけることが多くなったフレイルに無縁の高齢者

現在94歳の指揮者、ブロムシュテット氏の姿は、テレビでもおなじみですが、背筋をピンと立ててオーケストラを指揮する姿は、年齢を全く感じさせません。

酒もたばこも全くやらないベジタリアンだそうです。

従来から健康に人一倍気を遣ってきたようですが、いまは仕事をやり過ぎないことをモットーにしているそう。

高齢者は、疲れをためることが一番よくないと説いています。

身近にもカクシャクたる人がいます。

94歳になっても、毎週ゴルフをプレーする人がいました。

健康の秘訣を聞くと、人間も動物だ、家事でも何でもよいから意識的に体を動かすことが大切だと強調されます。

ワシントン大学による「シアトル縦断研究」(約5000人を50年以上追跡調査)によると、認知力を測定する6種類のテストのうち4種類で、高齢者が20代を上回っていました。

また、15%の高齢者は若い世代より記憶力が優れていたのです。

衰える一方でないことが立証されています。

また、知力だけでなく、体力でも日頃の生活次第で大きくは劣化しないことを裏付ける研究報告もあります。

年齢を重ねることに、マイナスイメージを持ち過ぎることはよくないようです。

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