バッテリーがあがったときの奥の手…バイクの”押しがけ”って知ってる?

“押しがけ”って何? 

バッテリーがあがった時の必殺技!? 

どのバイクでもできるの?

バッテリーが弱っていたり、ライトの点けっぱなしなどで、バッテリーが上がってしまった…。

スターターボタンを押してもセルモーターは“ギュッ…、ギュッ…”と力なく、エンジンがかからない…。

特に冬の朝はそんなシーンをよく目にします。

一泊ツーリングの朝だったら、まあまあ大変……。

そんな時、先輩ライダーに「押しがけでエンジンをかければいいんだよ」と言われることがあるのですが、どうやってやるの?

本当にかかるの?

というか、そもそも「押しがけ」って何?

元々はレースのスタート方法

じつは昔のロードレースは「押しがけスタート」が主流でした。

スタート位置に並んだライダーはマシンの横に立ち、スタートの合図とともにマシンを押し出し、勢いが付いたところでポンッと飛び乗ってエンジンをかけ、そのまま加速する……というモノだったのです。

もう少し詳しくやり方を解説すると、スタート前にギヤを1速か2速に入れておき、クラッチレバーを握って待機。

スタートの合図で押して走り出し、ある程度勢いが付いたところでクラッチをパッと繋ぐと、後輪の回転がトランスミッションを介してエンジンのクランクを回すことでエンジンがかかります。

クラッチを繋ぐ直前にポンッと飛び乗るのは、後輪をロックさせないためです(レーシングマシンは軽量なのでロックしやすい)。

昔のレーシングマシンは軽量化のため、スターターモーターはもちろんキックアームも付いていませんでした。

そこで「押しがけスタート」だったのですが、エンジン始動に失敗したマシンやライダーに後続車が突っ込むような事故も少なくなく、世界GPでは1986年を最後に、その後はエンジンをかけた状態からの「クラッチスタート」に変更されたのです。

市販バイクでも押しがけできるの? どのバイクでもできるの?

そもそも昔のレーシングマシンはバッテリーを搭載していませんでした。

電気が必要なのは点火プラグに火花を飛ばすことだけなので、押しがけでエンジンをかければ(クランクを回転させれば発電してプラグの火花が飛ぶ)、後はエンジンが駆動する発電機が電気を生み出したからです。

この辺りはキックスタートと同じ原理です。

市販バイクの場合は、点火プラグの他にヘッドライトやウインカー等の灯火類も電気を使いますが、もっとも電気が必要なのはスターターモーターを回す時。

ですからバッテリーが上がっても、押しがけでエンジンさえかけてしまえば、後は発電機が電気を賄ってくれるのです。

ちなみにレースのスタートのように1人で押しがけするのはそれなりに練習しないと難しいのですが、仲間に手伝ってもらえるなら意外と簡単。

ライダーはあらかじめバイクに跨り(キーON、ギヤ2~3速、クラッチレバー握って待機)、仲間にバイクを押してもらって、勢いが付いたらクラッチを繋ぐ。そしてエンジンがかかるまで仲間が押し続ければ良いのです。

しかし、これでエンジンをかけられるのは、基本的に2000年代前半頃の「キャブレター車」まで。

フューエルインジェクション車は、ほとんどが無理

バイクは1980年代中頃から、燃料供給方式がキャブレターから徐々にフューエルインジェクション(電子式燃料噴射装置)に移行しました。

BMWやドゥカティ等の欧州車が早く、日本車のインジェクション化は1990年代後半からが主流でした。

現在は一部の競技用車両などを除けば、ほとんどがフューエルインジェクション車となっています。

キャブレターが重力や物理現象のみでガソリンを霧化してエンジンに供給しているのに対し、フューエルインジェクションはガソリンを圧送する電磁ポンプや、噴射する電気式のインジェクター、そして噴射量を制御するECU(エンジンコントロールユニット。いわゆるコンピューター)などが必要で、これらはすべて電気で動きます。

いくらエンジンさえかかれば発電するとはいえ、それ以前の問題。

押しがけはセルモーターの代わりにはなりますが、まずはバッテリーの電気でポンプやインジェクター、ECUを稼動させなければ、エンジンをかけることは不可能なのです。

この辺りは「バッテリーの上がり具合」や車種にもよりますが、セルモーターがまったく回らず、ホーンなども鳴らないくらいバッテリーが弱っていたら、大抵は無理だと思った方がいいでしょう。

車種によってはバッテリーが大丈夫でも押しがけ不可の場合もアリ

ならば、フューエルインジェクションがきちんと作動するバッテリーが元気な状態なら、押しがけできるのでしょうか。

(押しがけする意味の有り無しは別として)これはメーカーや車種によって異なるのですが、一般的な公道用のスポーツバイクだとかからない場合が多いかも…。

誤作動やトラブルを防ぐため、クランクが設定以上の回転数にならないと燃料噴射や点火を行わないようにプログラムされているからです。

ですので、昔のGPの映像などで押しがけのカッコ良さに憧れてチャレンジするのはありですが、エンジンがかからないからといって、くれぐれも無理しないようにしましょう。

ツーリング先でバッテリーが上がってしまうと、時間通りに出発できずに仲間にも迷惑をかけます。

乗らない期間が長くなったり、何年も同じバッテリーを使ってバッテリーが弱くなっていたら、充電したりバッテリーを交換するなど、きちんとメンテナンスしておきたいところです。

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