国産クーペ5選…今見ても1960年代のクルマが美しすぎる

昔のデザイナーってヤバくないか!? 50年以上前とは思えない1960年代の「美し過ぎる」国産クーペ5選

いまでも語り継がれる伝説のクーペは1960年代のクルマだった

近年は、旧車のなかでも1980年代を中心としたネオ・クラシックカーブームが続き、市場も盛況のようです。

たしかにこの時代には個性的なクルマが多く見られましたが、さらに20年ほど遡った1960年代もじつは名車の宝庫でした。

そのようななかから、ここではスタイリッシュな2ドアクーペ5台を選んでみました。

世界を目指した高級グランツーリスモ

まずは、定番であり鉄板のトヨタ「2000GT」から。

当時、国際的に通用するクルマの製造を計画していたトヨタが、「国産初の最高級GTカー」を謳い、純国産にこだわって1967年に登場させた、文字どおりの名車です。

ヤマハとの共同開発による直列6気筒DOHCエンジンを搭載したボディは、典型的なロングノーズ・ショートキャビンの佇まい。

対米輸出の法規に対応したリトラクタブルランプは、抑揚のあるボンネットと見事にマッチングしており、固定式のフォグランプとの組み合わせが独自の顔付きを生み出しました。

サイドはシンプルな面で構成され、ドアのカットラインの美しさも見所。

スポイラーを兼ねたようなシャープなエッジを持つリヤパネルも特徴的です。

この、どこかジャガー「Eタイプ」を彷彿させるスタイリングは、社内デザイナーの野崎喩によるもの。その才能には、いまさらながら驚きを隠せません。

宝石のように輝くボディを持つエレガントクーペ

2台目は日産の初代「シルビア」です。

すでにデビューしていた「ダットサン・フェアレディ」をベースにした同車は、1964年の東京モーターショーに「ダットサン・クーペ1500」の名で出品、翌年の正式発売となりました。

社内の木村一男のスケッチを元に、当時の日産デザインのアドバイザーであったアルブレヒト・フォン・ゲルツが助言を与えたスタイルは、「クリスプカット」と呼ばれる継ぎ目を廃したボディが秀逸。

実際、ノーズからショルダー、リヤエンドまで続く広いカット面の美しさは他に類を見ません。

加えて、丸目4灯と多層フィンによるフロントグリルはじつにエレガントですし、そもそも、ノッチバッククーペスタイルのプロポーションが絶妙です。

ほぼハンドメイドで、わずか554台の製造という点も同車の価値を高めているのかもしれません。

宇宙船のような超未来的クーペボディ

3台目はマツダの「コスモスポーツ」です。

世界初の2ローター・ロータリーエンジンを搭載した同車は、1963年の東京モーターショーへのプロトタイプ出品を経て、1967年にデビューしました。

走るというより、飛ぶ感じ」という言葉を具現化した未来的なスタイルは、若手の社内デザイナー小林平治によるもの。

丸いランプやラウンドしたリヤガラス、強く明快なキャラクターラインには「360クーペ」や初代「キャロル」の影響が見られ、同車を手掛けた小杉二郎の下での経験が生きたと言えそうです。

伸びやかで長いリヤオーバーハングと、キャラクターラインと平行するフロントフェンダーラインの組み合わせは、わずか1165mmの全高とともに、どこか宇宙船を思わせるほどの個性的スタイル。

イメージカーとして、当初は市販の予定がなかったという縛りのなさが功を奏したのかもしれません。

繊細で優雅な和製イタリアンクーペ

次はいすゞの「117クーペ」です。

1960年代半ば、カロッツェリア・ギアは積極的に日本のメーカーと接触を持っていましたが、企業のイメージアップを図りたいと考えていたいすゞは、「フローリアン」の派生車のデザインを、チーフデザイナーであったジウジアーロに委託。1968年に発売されたのが117クーペです。

2ドア、4シーターのファストバックスタイルは完璧なプロポーション。

前後ホイール部で大きな抑揚を持つフェンダーはいかにも当時のイタリア車を思わせる美しさです。

また、意外なほど大きなキャビンは現代的なサイドグラフィックを持ち、その実用性の高さにジウジアーロらしさを感じます。

先のシルビア同様、ほぼハンドメイドとされる丸目の初期型の評価が高い同車ですが、量産版である角目の後期型も独特の個性を感じさせました。

軽自動車とは思えない2シータースペシャリティ

さて、最後は発売がギリギリ1970年代になりますが、あえてスズキの「フロンテクーペ」とします。

ホンダの「Z」など、スペシャリティで高出力の軽自動車が続々と登場していた当時、スズキが満を持して送り出したのが、1971年登場のフロンテクーペです。

3代目の「フロンテ」をベースに、軽自動車初の2シータークーペとしたボディは、先出のジウジアーロの案を元に、スズキのデザイナーがまとめたもの。

もともとは1.5ボックス的で背の高い提案でしたが、そのエッセンスを巧妙にクーペスタイルへ落とし込みました。

ブラックの枠で締めたフロントグリルから、フェンダーを通ってルーフに続く一筆描きのような美しいキャビン形状。

ボディ中央を走るキャラクターラインによるサイド面のアクセント、そして大胆に切り落とされたリヤエンドなど見所は満載。とても当時の軽規格とは思えない仕上がりでした。

シンプルに美しさを追求した時代

さて、こうして1960年代のグッドデザインクーペを振り返ると、その美しさや大胆さにあらためて驚かされます。

恐らく、まだ大規模なマーケティングが開発に導入されていなかった当時、社外のカロッツェリアはもちろん、社内デザイナーであっても、ひたすらに純粋な「美しさ」を追求していたのではないでしょうか。

そのシンプルな美の追求姿勢に、もしかしたら現在のカーデザインのヒントがあるかもしれません。



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