見知らぬ男に性的暴行された8歳の千恵ちゃん、その後の人生
声を出したら殺すぞーー。
8歳の千恵ちゃんは黙って涙を流していた。
見知らぬ男に押し倒され、背中には草のひんやりした感覚があった。
目次
苦しみがゼロになることもない
大分県の工藤千恵さん(50歳)は、塾帰りの道で見知らぬ男に誘拐され、性暴力を受けた。同級生に被害がばれるのが怖くて不安定になり、体調を崩しがちに。一生、被害者のレッテルを貼られて生きることが嫌になり、自暴自棄になりました。
アルコールやセックスに依存した過去もありのままに話し、実名で講演活動をするのは、被害者の現実を、自分の生き方で証明したいとの思いがあるから。
10月14日に都内で開かれた全国被害者支援フォーラムの講演では、こう語っていました。
「完全に元の状態に戻れないのも現実です。 苦しみがゼロになることもない。過去と共に一生生きていかなければいけません。 だからといって、でも人生は終わりじゃないというふうに今思っています」
工藤千恵さんに勧められて、凛花さんと「プリズン・サークル」観ました。
予告編にもあった、受刑者の「俺は被害者だなって思ってる」という言葉で元カレを思い出した…
傷害致死であろうとモラハラであろうと根底にある暴力の構造は同じで、加害者が自分の加害性に気付くことが一番難しいのだと思う。 pic.twitter.com/fNtNzLGuyB— きのコ 文筆家・編集者 (@kinoko1027) February 29, 2020
新聞は匿名記事だったが、同級生は皆知っていた
工藤さんを襲った加害者は逮捕されたが、それは終わりではなく、長く続く回復への始まりでした。
翌朝、新聞には匿名の記事が載った。しかし、同級生は皆知っていたのです。
「A子って千恵ちゃんなんでしょ?」「暴行って書いてあったけど、けがしてないやん」
ショックは大きく、保健室に通いがちになりました。
家では父親が酒を飲むと、加害者への憎悪をむき出しにしました。
温厚な父が変わってしまったようで、つらかったそうです。
中学に行ってからも、影響は続きました。
2年生の時、友人が「子供のとき、誘拐事件あったよね。あれは千恵ちゃんなんでしょ?」と言ったのです。
こうやってレッテルを貼られたまま生きるしかないのかと自暴自棄になり、非行に走ります。
お酒を飲んだり、夜の街を出歩いたり。バイクに乗せてもらって「このまま死ねたらいいのに」と思ったこともあるそう。
「自分は嫌い、自分は汚れている、私はやらしい、こんな私が幸せにはなれるはずがないとずっと思っていました」
工藤千恵さんとのランチ美味しかったなぁ。
大分の野菜が食べたい!とリクエストしたら、地産地消の素敵なレストラン「Quindici」に連れてってくれました??
菜の花のパスタ、ほんのり苦くて最高?? pic.twitter.com/lm9vq4diuq— きのコ 文筆家・編集者 (@kinoko1027) February 22, 2020
心身が壊れ、依存症に苦しんだ日々
高校を卒業して上京したものの、体を壊しました。
子宮の病気にもなりました。
体調不良が被害とつながっているとは思っていませんでした。
心も体もボロボロとなり、夢を諦めて地元へ帰ったのです。
「性暴力被害は、その人の尊厳を踏みにじります。何十年にもわたって人生に影響を及ぼすこともあります」
回復の道のりはスムーズにはいかず、さまざまな依存症の傾向が出ました。
洋服店で試着して褒められれば、いい気持ちになり、ボーナスを全部使ってしまう。
たくさん酒を飲めることがカッコイイと思い、毎日のように朝まで飲む。
自分を物のように扱った加害者への復讐の気持ちもあったのかセックスにおぼれた。
そんな日々を越え、高校の同級生だった男性と結婚して子どもに恵まれた。
パニックになっても受け入れてくれる家族とともに歩んでいた40歳を迎えたころ、大きな転機がありました。
当事者同士の会合に行ったことです。
「過去を振り返りながら、明るく共感し合える時間が私の心を動かしました。 みんなで食事して、その別れ際にハグをしたんですが、『今まで生きていてくれて、会いに来てくれてありがとう』と言われて、涙が止まりませんでした」
死にたいと望んでいたころから、彼女たちに会うために生きてきたんだと思えました。
被害者支援ボランティアの研修を受け、2014年の春に初めて被害経験を語ったのです。
鹿児島の被害者支援フォーラムでもご講演いただきました性暴力サバイバー工藤千恵さんから、イベントのお知らせです。
その名も、「笑うサバイバー祭」!
幸せに生きるヒントを頂けそうです?? pic.twitter.com/13kJdawEMz— 鹿児島県警察被害者支援室 (@kp_cvso) April 27, 2018
トラウマがあっても笑える日が来る
それ以降、講演で登壇する時は、赤やオレンジなど明るい色の服と決めているそうです。
「被害者は暗い色の服を着て、かわいそうな人」という被害者像に抗うためです。
別世界のことではなく現実のことだと知ってもらおうと、実名にこだわっています。
本当につらかった被害者が実名で話せるはずがない、うそをついているとSNSで中傷を受けたこともありました。
それでも声を上げ続けるのは、過去と向き合うことが自分の回復につながるとの思いからだというのです。
工藤さんは今年、夢だった自分のフルーツ専門店をオープンさせました。
「自分が望めば、トラウマや苦しみを持ったままでも、心から笑える日を迎えられる。回復の先には、光があるんだってことも合わせて伝えていきたい。いつからでも夢を叶えることができる、そのことも、私は証明したいと思っています」
ネットの声
「苦しみは終わらない、元の状態には戻れない、だからといって人生は終わりとは思わない、頷きながら何度も読み返しました。性暴力は魂の殺人とよく言われますが心を殺されて苦しむ人に対して、それでも人生に希望を持ってと言えないもやもやがずっとありました。ほんとは希望を持ってほしいし、味方は大勢いるし、一緒に笑ったり楽しい話をしたりしたいし、っていう気持ちをずっと伝えられずに来ましたが、これからは臆せずそういう気持ちを伝えたいと思いました。
心から応援します。その終わらない苦しみを一緒に受け入れたいです。彼女たちだけの話じゃなく、私たちの話だと思うから。
性犯罪者に厳罰を。被害者が訴え出ることを支持します。」「最近も性犯罪が凄く多いのでもっと厳罰を望みます。子供達に対しては義務教育で護身術や犯罪者に遭遇した場合の対処方法も必要かと思う。
犯罪があってからでは遅いので、避難訓練のように毎月でも訓練を導入してくれたらいいのに
今は共働き世代も多いし子供を守る事も難しい。
早く対策をお願いしたい。」「欲望を抑えられない獣のようなやつは、たくさんいていたずらや暴行を受けて人知れず悩んでいる方は多いと聞きます。本当であれば、楽しい人生のはずが、毎日そのことで悩み依存症に苦しんだりしている。そういう現状を見聞きすると男としては恥ずかしく悲しい。人間とは、欲望を理性で抑えることが出来る世の中で唯一の生き物ではなかったのか。口ではきれいで立派なことを言えるが、誰にでも欲望はあるし衝動に駆られる事だってあるのは良く分かる。がしかしそれをしてしまう人間と言うのは、頭のどこかで回路が寸断されているのだろうか。そういうことから言えば厳しい罰則で縛るしかない。」