一生触れる機会がない「F1」や「GT」マシンに一般人が乗るとどうなる?
レーシングドライバーに聞いたら「意外な答え」でした。
F1やスーパーフォーミュラ、スーパーGTマシンなど、レース専用車両はさまざまなカテゴリーに分類されます。
どれもレース専用に設計されていて、サーキットを速く走ることが前提で作られているもの。
目次
ただ動かすだけなら普通の人でも走らせることができる
こうしたレース専用マシンを一般のドライバーが運転したらどうなるでしょうか。
「動かすことも不可能?」
「速すぎて意識飛びそう?」
など強烈な性能を予測して尻込みしてしまう人が多いのでは。
確かに、サーキットをプロのレーシングドライバーと同じような速さで走らせるのは一般ドライバーには不可能だと思っていいでしょう。
とくに、上位カテゴリーになるほど一般乗用車との性能乖離が大きく、ドライビングは容易ではなくなってくるでしょう。
しかし、ただ動かすだけなら、じつは誰にでもできるのです。
大昔のレーシングマシンはエンジンを高回転型にチューニングし、低速トルクが小さく、また強化クラッチが装着されてクラッチペダルを踏むこともままならないほど重いものでした。
エンストを起こさないように半クラッチを駆使して走り出すのは大変だったのです。
だから、一般ドライバーが試乗すれば確実にエンストを引き起こしていました。
近年のレースマシンは2ペダル化され、ステアリングパドルのクラッチスイッチでアクチュエーターを操作するなど、手順を守れば誰でも動かすことができます。
3ペダルのマシンではクラッチペダルが重く感じるでしょうが、エンジンの制御で十分な低速トルクを引き出せるので、通常の乗用車と同じように走り出せるはず。
シフトアップもダウンもステアリングパドルで行い、走行中はクラッチペダルを踏む必要もなく、むしろロードカーのマニュアルトランスミッション車のほうが難しく感じるかもしれません。
ステアリングには電動パワーアシストが装着され、「重ステ」と言われていた時代のレーシングカーからは想像もできない軽さで操舵できます。
かなり昔エンツォ・フェラーリが真っ二つになる事故がアメリカであってちょっとネットで話題になったけど、運転手はGIZMONDEっていうゲーム機を売ってたスウェーデンマフィアだったんだ…F1のジョーダンGPのスポンサーにもなってたとか pic.twitter.com/bUrOgI4JAO
— はーさん@ドゥカティ????SF848 (@DukeSf848) August 12, 2022
レーシングスピードで走らせるにはスキルと強靭な肉体が必要
しかし、車速が上がってくると、その印象は激変します。
トップカテゴリーのフォーミュラカーやGTマシンは空力性能に優れていて、速度が高まるとダウンフォースが高まり、車体を地面に押さえつけてくるのです。
ステアリングの手応えが増し、安定感も断然高まってきて空力性能の高さを実感できるはず。
だからといって、そのままコーナーを曲がっていける訳ではありません。
レーシングマシンに装着されているレース用スリックタイヤは、本来のグリップを発揮できる作動温度領域が高いのです。
したがって、速度を上げてダウンフォースだけ高めていても、タイヤのウォームアップが正しく行われていないとハイスピードのままコーナーを曲がることができません。
素人ドライバーがレーシングカーを試乗すると、多くの場合でタイヤウォームアップ不足によるグリップ不足でコーナーを曲がり切れず飛び出してしまったり、またはスピンしてしまうことになります。
とくにタイヤが温まりにくい低温の冬場などは危険です。
F1ドライバーとかレース中の肉体的な負担は400m走の選手と同じらしいからな。
400m走を続けながら車運転して車載コンピューター管理して他のマシンとバトルしながら燃費やタイヤを管理してチームと無線で作戦話し合ったりしながら2時間走るとかマジ人外やで— とーみんねむろ@フロントタイヤ交換 (@TMN_Nemuro) July 26, 2015
強靱な精神力と体力が必要
レーシングカーは各パーツが高価でクラッシュしたらとんでない修理費用がかかります。
コクピットはタイトに設計されていて、多くの場合はドライバー毎に専用のシートを作って取り付けます。
さらに5点式以上のシートベルトでガチガチに固定され、息をするのも苦しいほど。
さらにHANSという頸椎損傷を保護する専用の装置にフルフェイスのヘルメットを固定し、腕を動かすことも、首をまわすこともし辛い状況です。
ヘルメット越しに見える視界は狭く、メーターを見ることも難しい。
こんな自由度の少ない運転姿勢でよくレーシングスピードで走らせ、他車と競うことができるなと感心させられるはずです。
さらに、LAPを重ねてタイヤ温度が高まり、タイヤが本来のグリップを発揮しはじめると、強烈な横Gが全身を襲うのです。
たとえば右コーナーで先を見ようとしても頭が左に傾き、黒目を右に向けることもできません。
シフトレバーを操作しようと手を伸ばしても、すぐそこにあるレバーに手が届かないことも。
腕に横Gがかかって思うように動かせないのです。
また、両足は横Gを受けてコーナー外側に傾き、アクセル操作を正確に行えません。
レーシンググリップが発揮され、アクセルやブレーキのペダルを強く踏み込んだら加速Gと減速Gで頭部は前後に振られ、抗することもできないでしょう。
1周もしないうちに全身の筋肉は疲労し呼吸も苦しくなっているはず。
レーシングカーは誰でも動かすことは難しくありません。
しかし、本来のレーシングスピードで走らせるには、特殊なドライビングスキルと高いGフォースに耐えうる強靭な肉体が不可欠なのです。
モータースポーツがドライバーにとって過酷なアスリートスポーツであることを深く認識することができるでしょう。
ただ、一般ドライバーがトップカテゴリーのレーシングマシンをドライブする機会は、国内ではほとんどありません。
今のF1ドライバーに求められてるものって
肉体的&精神的負荷
+
究極のながら運転
なのか— あーるえす@低浮上 (@RSF1R) January 15, 2022
ネットの声
「走り始めが1速2速ではなく、いきなり3速から始まる感じなので、アクセルを吹かし過ぎても吹かなさ過ぎても走らない。ハンドルの遊びが少なく、操作が直接影響するので、少しのブレでもすぐに反応する。その為、通常走行での加速度もあるが、コーナーでの重力加速度が大きく、安定した走行を維持するには、ある程度の体力も求められる。普段からパワステの車に乗っている人は運転が難しいだろう。」
「コメントでは色々想像で語られてるけど、実際に一般人(と言っても自動車のジャーナリストなので一般人よりは技術とかはあるだろうけど)F1マシンを運転した人の感想は、最初はこのコメントにあるようなイメージがあったようだけど、実際のF1マシンは限界のギリギリ手前まではものすごく従順で運転する人の思う通りに動き、乗り心地はこれまで乗ったどんな車より良く、精度感はこの世のものとは思えない・・・だそうです。」
「昔は素人ではまっすぐに走らせることすらできないと言われていた。
でも、そんなわけはないよね。
真っ直ぐに走らない車で早く走ることなんてできるわけがないのだから。
バイクも同じ。
動かすだけなら誰でもできる。
遅く走ったら壊れると言う人もいるけど、SCのペースで走って壊れてたらレースにすらならない。
素人には速く走らせることが困難、、。と言うのが正しい表現だと思う。」