GAFA神話終焉の前兆?米国IT企業の株価急落

GAFA神話終焉のワケは「ネット広告の限界」だけじゃない!Twitter、Netflixも同じ

米国IT企業の株価急落 バブルの崩壊か

コロナ禍で業績を伸ばしてきたアメリカのIT企業が、ここのところ軒並み株価を落とし始めています。

GAFA神話の終焉(しゅうえん)、そしてネット広告の成長の「限界」が訪れているかにも見えますが、実際のところどうなのか。

情報を整理し考察してみたいと思います。

直近のIT企業株下落の最初のきっかけは先週、写真共有アプリのスナップチャットを提供するSNAPの決算発表でした。

発表された数字が「すでに引き下げられていた業績見通しさえ下回った」ということから、SNAPの株価は40%安と大幅に値を下げました。

続いて、7月22日にツイッターが第2四半期の決算を発表しました。

こちらは広告収入が増えたとはいえ、わずか2%増と市場予想を下回り、純利益が赤字に転落しました。

そして、7月26日にアルファベット(Googleの親会社)が4~6月期決算を発表。

純利益14%減と、市場予想を下回りました。

アルファベットによれば、インフレとそれに伴う景気後退予測で企業が広告費を見直す傾向が強まっていると言います。

アルファベットの株価についてはすでに先週から下落が始まっていたこともあり、決算発表の後は夜間取引で逆に、株価が5%ほど上昇しました。

投資家心理として「思っていたよりもマイルドな結果だった」ことが安堵を与えた様子です。

さらに、7月27日にメタ(旧フェイスブック)は、第2四半期の純利益が前年同期比で36%減少したと発表しました。

これも市場予測を下回り、メタの株価は夜間取引で4%下落しました。

SNSのアクティブユーザーはフェイスブック、インスタグラム、WhatsAppなど合計で増加しているものの、広告の平均価格が前年比で14%下がっているといいます。

米ハイテク株成長の限界を象徴する 二つの事件とは

時間軸を半年ぐらいさかのぼってみると、アメリカのハイテク株の成長の限界として二つの象徴的な事件がありました。

一つは、今年の2月3日に起きました。フェイスブックで1日当たりの利用者数が減少したことを報告したメタ社の株価が、1日で約26%減少する「メタ・ショック」が起きたことです。

もう一つは、動画配信大手のネットフリックスです。

こちらも4月20日に会員数が過去10年で初めて減少に転じたことを公表して、株価が1日で35%下落しました。

これらの現象を眺めると、確かにアメリカのハイテク大手各社は、コロナ禍の巣ごもり需要を背景にわが世の春を謳歌していました。

そこから転じて、今年の春から夏にかけて成長の限界を迎え、アフターコロナと景気後退で一斉に勢いを落とし始めているように見えます。

この「アフターコロナと景気後退」は、アメリカIT大手の株価下落をもたらす要素ではあるのですが、ここで見落としてはいけない、もうひとつ重要な要素が存在します。

米IT大手を襲うのは 成長の限界だけではない

それは、「お互いがお互いの収益源に対して手を出し始めたこと」です。

それまでIT大手にとってブルーオーシャンだった自分の得意領域が、血で血を洗うレッドオーシャンに変質し始めているのです。

要素を整理してみましょう。SNAPの凋落やツイッター、フェイスブックのスローダウンの背景にあると言われるのが、中国資本のTikTokです。

各社の決算発表のコメントには、TikTokとの競争激化が収益減少要因として必ず登場します。

若い世代のユーザーを中心に、新しいサービスに顧客を奪われているのです。

グーグルの親会社であるアルファベットは、減益の要因について「企業が広告費を見直す傾向が強まっている」と公式発表していました。

実は、グーグル事業よりも動画配信ビジネスのYouTubeでの悪影響が響いたようです。

そしてYouTubeへの広告出稿が鈍化した背景には、ツイッターなど競合するSNSにおける動画投稿市場が広がったことが影響だとされています。

SNSがYouTubeの収益を奪っているのです。

そのアルファベットですが、広告収入は減少した一方で、クラウドサービスの収入が市場予想よりも高かったことで売り上げは市場予測を上回りました。

ここも面白い点です。

実は、マイクロソフトはアルファベットと同じ日に決算を発表して、売り上げ・利益ともに市場予測を上回っていました。

しかし、そんなマイクロソフトが唯一市場の期待に応えられなかったのが、クラウドサービス分野です。

クラウドサービスにおけるアジュールの成長が、予想よりも低かったのです。

つまり、マイクロソフトの成長余地をアルファベットが奪った形です。

今度は、ネットフリックスに目を移してみましょう。

実は、利用者減少の最大要因は、ウクライナ侵攻によるロシア・ウクライナでの利用者減少でも、アフターコロナによる巣ごもり需要の消失でもなく、ダイレクトな競合サービスである「ディズニー+」の躍進にあるようです。

「ディズニー+」は、古くからあるディズニーのコンテンツに加えて、買収によって権利を得たマーベルやスターウォーズといった強力なコンテンツを武器に拡大を始めています。

同じく強力なコンテンツに強みを持つネットフリックスにとっては、同じ戦い方で同じ市場を取り合う初めての強敵の出現ということになるわけです。

成長の限界というよりも、顧客が奪われ始めているのです。

さらに、ネットフリックスは戦い方を変えるために安価な広告付きプランの導入を来年度にも始めようと考えています。

これはもともと1000円を切る価格のサービスだったところから値上げを繰り返した末に、インフレ経済に突入し加入者の減少を迎えてしまったことへの対抗策です。

確かに、広告事業への参入は有効性が高いと思われます。

一方で、このニュースの大きなポイントはネットフリックスが組んだ「相手」だと、私は思います。

実は、その広告付きプランの開発で、ネットフリックスが組んだ相手はマイクロソフトだったのです。

要するに、ネットフリックスはグーグルと組むことができなかった。

それは新しいネットフリックスの広告付きモデルが、グーグル陣営のYouTubeとダイレクトに競合して収益を奪うことを危惧しているからでしょう。

米IT大手の株価下落 「レッドオーシャン化」が一要因

こうして要素を並べてみると、成長の限界とは別のもう一つの収益減少要因が見えてきます。

アメリカのIT大手各社のビジネスについて、お互いの収益を奪い合うレッドオーシャン化が始まったのです。

さらに言えば、IT各社はまだこれから始まるメタバースに関しても一斉に侵攻を始めています。

冒頭でお伝えしたメタの大幅減益に関しても、メタバース関連への投資がかさんでいることが一つの要因です。

序盤戦ですでに、メタバース事業は各社ともレッドオーシャンです。

もちろんレッドオーシャン化のきっかけはこれまでの事業の柱の成長の鈍化によって、各社とも自分と近しいビジネスの隣接領域へと手を伸ばそうと考えたからです。

ですから、成長の限界が競争激化のきっかけを起こしていることも事実です。

とはいえ、これから起きる未来を考えると、成長の限界とレッドオーシャン化ではそこから導かれる未来が違ってきます。

後者が引き起こす未来、それは業界の再編です。

つまりGAFAと呼ばれる4社の寡占構造が崩れ、業界地図が大きく変わる可能性が見えてきた。

それが、今起きているアメリカIT株の下落の一番大きな不安要因なのではないでしょうか?

ネットの声

「GAFAのうちAppleはまだまだ強い。独自規格で完結した製品なので、他社との差別化が図れる。ハードの買い替え需要は続くので、ソフトに依存した他社とは違う。逆にAmazonは小売り事業があるが、人件費が増大しすぎて苦しい。」

「GAFAと言いながら、GoogleとFacebookの広告収入に勢いがなくなってきたって話。それだけで再編とか短絡じゃない?両社ともに収益源のネタバレ山ほどある、特に天才数学者が集結したGoogleは豊富だよね。」

「ネット広告はもう頭打ちでしょう。黎明期と違ってこれ以上広がる要素がない。しかも景気が悪くなれば企業も広告費から削っていくでしょうし。動画を見てていちいちカットインしてくるあのうざいネット広告が企業に貢献してるとは正直思えないんだよな」

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