仮面ライダー…実は土壇場…2号の登場は起死回生のアイデアだった!?

特撮作品の舞台裏。初代『仮面ライダー』の「2号」登場は起死回生のアイデアだった!

日本発のコンテンツ“特撮”は、今なお多くの人たちの心を熱くさせています。

映画『シン・ゴジラ』や『シン・ウルトラマン』の大ヒットは記憶に新しく、「仮面ライダー」シリーズや「ウルトラマン」シリーズは、生誕から50年以上を超えた今も老若男女を問わず変わらぬ人気を誇っています。

『日本特撮トンデモ事件簿』には数々の特撮作品にちなむ“知る人ぞ知る事件”の数々をまとめた、特撮ファンをワクワクさせてくれる本書。

その中から、昭和、平成を経て、令和になった今も続く「仮面ライダー」シリーズの元祖、初代『仮面ライダー』の逸話を紹介します。

スタントシーンでの大事故も…順風満帆ではなかった初代「仮面ライダー」

バイクレーサーの本郷猛と世界征服を企む敵組織「ショッカー」との戦いを描いた、1971~1973年放送の『仮面ライダー』。

特撮の代名詞的な作品だが、「放映開始当初から順風満帆であったわけではない」そうです。

当初は低予算で、撮影は「廃屋といった方がいいほどのあばら屋」と表現されるほどのスタジオで行われていました。

3K(汚い、危険、厳しい)の環境下でスタッフは働き、スタントシーンの撮影も仮面ライダー1号に変身する本郷猛を演じる藤岡弘(当時)本人が「たびたび」担当。

そんな「劣悪な環境」では悲劇も起きました。

放映開始数日前、スタントシーンの撮影で藤岡さんが大事故に見舞われたのです。

バイクで転倒した藤岡さんは「左足大腿骨粉砕骨折で全治6カ月」の怪我を負ったのですが、それでも撮影を続けねばならず、当時「第一三話までの四話ぶん」(原文ママ)を撮り終えていたため、「撮り終えたフィルムを流用したり、物語の語り部役としてバイクチームのメンバー滝和也(実はFBI)などの新メンバーを登場」させるなどして、ピンチを乗り越えたそう。

ヒーローを死なせてはいけない。起死回生のアイデアだった「2号」の登場

試行錯誤しながらの撮影が続く中、スタッフたちは「緊急会議」を重ねていました。

結果、苦肉の策として出たのが劇中で一文字隼人が変身する「仮面ライダー2号が新しい主役として登場する」アイデアだったのです。

しかし、会議では上層部のスタッフから「この際、仮面ライダー1号は殺してしまってもよいのでは」と、思わぬ声も飛び出しました。

物語自体「誰かが殺されるたびにそれが伏線となって新しいドラマが生まれるのが特徴」だったため、アイデア自体に「違和感」があるとは言い切れません。

しかし、上層部の意見に対して、プロデューサーが「ヒーローを死なせてはいけない……子どもたちの夢を壊すことになるから」と反対。

「1号を死なせず、2号が登場」という展開が実現したのです。

仮面ライダー2号が登場したのは、第14話「魔人サボテグロンの襲来」。

斬新な展開も功を奏したのか、放映開始の1971年4月に“8.1%”だった視聴率は、9月で“21.6%”に。

初年末の12月には“30.1%”まで跳ね上がり、のちの歴史に繋がる大人気番組となりました。

本書では「仮面ライダー」のみならず、『月光仮面』や『鉄腕アトム』、「ウルトラマン」シリーズ、「戦隊ヒーロー」シリーズなど、特撮作品の裏側をいくつも紹介しています。

特撮作品はスタッフたちの並々ならぬ努力による“工夫”の賜物でもあります。

舞台裏の逸話を知れば、愛着ある作品の味わいもまた違ってくることでしょう。

日本特撮トンデモ事件簿 桜井顔一 (著), 満月照子 (著) 鉄人社 (2022/10/29) 2,090円

特撮とは、合成、ミニチュア、大爆発、CGなど、特殊撮影といわれる映像表現のことです。

本書で取り上げる特撮は元祖『ゴジラ』『ウルトラマン』といった定番なものから、ドリフ映画や不良番長シリーズといったマニアックなものまで、多種多様です。

また、事件の定義も様々で、『ウルトラセブン』第一二話や『獣人雪男』といったお馴染みの入門系の封印作品もあれば、「マイティジャック」がわずか一クールで打ち切りになったことよりも、主演俳優の二谷英明が隊員服の装着を拒否した裏話のほうを事件として扱うなど、広範囲にわたっております。

このようにセレクトされたトンデモな事件の数々は、一般のファンはもちろん、大抵の事件は知ってるぜというマニアの方々にも、楽しく読んでいただけるのではないでしょうか。

撮業界の裏面を探りつつ、未解決の事件には読者がそれぞれ推理・探求してもらえると何よりです。

一章(一九四〇~五〇年代)
元祖封印作品『獣人雪男』は本当に差別的なのか?
ヒーローの元祖『月光仮面』は事件だらけ
実写版『鉄腕アトム』衝撃のエンディングシーンの謎を探る
謎多き『豹の眼』ジャガー退場事件

二章(一九六〇年代)
実写版『鉄人28号』フォルム突然の変更事件
ヒーロー、象に踏まれて死ぬ! ――『快傑ハリマオ』
『大群獣ネズラ』製作中止と実録ネズミ島事件
クレージーキャッツの『大冒険』は製作の裏がもう大事件
『ウルトラQ』第二話「五郎とゴロー」薬品名変更事件
『ウルトラQ』の彷徨う最終回「あけてくれ!」お蔵入り事件の真相
実写版『忍者ハットリくん』ケムマキ役が杉良太郎の都市伝説
「ケロイド状の人間」をモデルにデザインされた「ひばく星人」が大問題に ――『ウルトラセブン』
猫型ヒーローのゲノム『豹マン』『シルバージャガー』お蔵入り事件
『妖怪百物語』のシャレにならない刺殺事件
『マイティジャック』主演の二谷英明コスチューム拒否事件
やりたい放題の末、中途半端に終わったトンデモ作品 ――『キイハンター』
『怪奇大作戦』にまつわる怪奇 第二四話「狂鬼人間」の欠番
いかりや長介の出番が非常に少ないドリフ映画の謎 ――『ドリフターズですよ! 冒険冒険また冒険』
特撮ありのトンデモ映画『不良番長』女優食いまくり事件

三章(一九七〇年代)
神回に盗作疑惑があっても『スペクトルマン』が愛され続ける理由
全国各地で死亡事故が多発 『仮面ライダー』はハーメルンの笛吹きに変身した
新作とリバイバルで凌いだ「東宝チャンピオンまつり」の罪
虎錠之介役男優の怪死事件と、代役が馬に乗らなくなった理由 ――『怪傑ライオン丸』
子供から訴えられた悲しき変身ヒーロー『超人バロム1』
未来の日本の運命を予告する“本モノ”のトンデモ放送禁止作品 ――『愛の戦士レインボーマン』
メディアから“仕方なく”抹消されたヒーロー『突撃! ヒューマン!!』
『恐怖劇場アンバランス』はこうしてお蔵入りになった
被爆者に対する差別表現が問題となった封印作品『ノストラダムスの大予言』
ウルトラの母がタイの伝説神「白猿ハヌマーン」を蘇らせるトンデモ作品 ――『ウルトラ6兄弟VS怪獣軍団』
ドリフ最後の映画に二つのエンディングがあるって本当? ――『正義だ! 味方だ! 全員集合!!』
『西遊記』猪八戒役・西田敏行多忙事件

四章(一九八〇年代)
ヒロインの失踪事件と「未来派SM作品」と化した神回 ――『超電子バイオマン』
『宇宙刑事シャイダー』はなぜヒロインのパンチラをウリにしたのか
幻の特撮ポルノ映画『高野聖』はなぜ「裏ビデオ」として流通するに至ったか
東映魂の炸裂した月曜ドラマランド版『ゲゲゲの鬼太郎』はほぼ戦隊ものだ
幼女誘拐連続殺人犯・宮崎勤と『ギニーピッグ』捏造報道事件
『魔法少女ちゅうかなぱいぱい!』主演女優、愛の逃亡事件

五章(一九九〇年~現在)
日本特撮史に残る悲惨なまでに不入りの上映会 ――『8マン すべての寂しい夜のために』
『激走戦隊カーレンジャー』、新メンバースピード降板事件
「酒鬼薔薇事件」の影響で打ち切られた『エコエコアザラク』
レッドとグリーンの熱愛スキャンダル事件 ――『宇宙戦隊キュウレンジャー』
「戦隊ショーのお姉さん」セクハラ・パワハラ事件 ――『騎士竜戦隊リュウソウジャー』

六章 グリーンリボン賞
★暴動から爆発まで、トンデモ作品と事件だらけの「グリーンリボン賞」!
インタビュー・井場宏&伊丹ローズ
★爆弾を作った男/柳原寿之インタビュー
★爆発現場でカメラを回した男/証言・横山健二
★思い出のアルバム・グリーンリボン賞

…など多数

「マニアの間では周知の内容も多いですが、初見の話もあって驚きもありました。何より、こうして纏められるとありがたいものですね。特にこの業界はある特定のプロダクションによる一強で、そこから仕事をもらえなくなることが致命的なダメージとなるため専門ライターはネガティブな記事を書きません。本書はそういったプロパガンダな状況に一石を投じるのかも知れません。その意気込みを買います。」

「日本特撮とのタイトルどおり、ウルトラマン始めいわゆるヒーローものの定番ももちろんありますが、不良番長シリーズやドリフ、クレージーキャッツなどもラインナップされているのが楽しい。」

「幼い頃に突撃ヒューマンを見ていたことを薄っすら覚えている世代です。快傑ズバット、バロム1など幼い頃見ていた番組の裏話をこの年になって読むとは思いませんでしたが、一本一本の記事がなかなかボリュームがあるのですが、筆者の文章が巧みでかなり面白く読むことができました。目次を見て興味がある方にはお勧めできる一冊です。」

ネットの声

「苦肉の策でライダー2号に変身ポーズを付けたら、それが子供たちに受けたとか。
ライダーカードが欲しくてライダースナックを必死に食べてた(親が厳しかったので残すのは許されなかった)世代の者です。」

「仮面ライダーは年間を通して違和感無く見てましたが、キカイダーは夏場になると全身タイツのようなコスチュームに子供心に「キカイダーも暑いのだろう…」と妙に納得しながら見てました。
模型を飛ばす糸が見えようと、大きさの合わない合成を見ようと、無かった事 見えなかった事にして楽しんでいたなぁ。」

 

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