日本人の勘違い!?身長160センチで体重64キロは肥満だよね?痩せなくていいって説も

「身長160センチ体重64キロ」は痩せなくていい…日本人のイメージする「肥満」は医学的には間違いです。

「ダイエットは健康にいい」は本当でしょうか。

医師の大脇幸志郎さんは「医学的にいえば、日本人は平均的にすごくやせている。ほとんどの人は世界標準の『肥満』にはあたらない。むしろ最高に健康的な体重の人まで『肥満』としている恐れがある」というのですが…。

「体重を減らしたほうがいい人」は日本人の4%に過ぎない

最新医学に基づいて、冷静に科学的にダイエットを考えるとしましょう。

最近の肥満研究にくわしい医師があなたを見れば、おそらく「あなたが体重を減らす必要はありません」といいます。

例外的に「体重を減らしましょう」といわれる人は日本人の中に4%ほど(注1)しかいません(あなたがその4%だったとしても、この先の話はまったく同じように当てはまります)。

なぜなら、日本は世界の高所得国の中では数少ない、やせた人ばかりの国だからです。

そもそも健康的な体型はどれくらいなのでしょうか。

体型の目安としてよく使われるのが、BMI(体格指数)という数字です。

「体重÷身長÷身長」がBMIです。

身長はメートルで表します。つまり、体重64キロで身長が160センチ、つまり1.6メートルの人なら、BMIは64÷1.6÷1.6=25という計算になります。

世界保健機関(WHO)が決めている基準で、BMIが25以上を過体重(overweight)、30以上を肥満(obesity)といいます。

日本肥満学会の定めた基準ではBMI18.5未満が「低体重(やせ)」、BMI18.5以上25未満が「普通体重」、BMI25以上が「肥満」とされています。

日本の「過体重」実は太っていない

ややこしいのですが、この意味での「過体重」「肥満」という専門用語には決まった日本語訳がなく、いろいろな訳語が当てられています。

まず「肥満」のほうは、「太っている」よりもはるかに強い意味だと思ってください。

「過体重」のほうは聞いたこともないかもしれませんね。

「肥満というほどではないが、理想的な範囲よりは重い」という意味合いの言葉です。

「ちょい太り」とでもいえばいいでしょうか。

英語の文章ではこの「過体重」が断りなく出てくるのですが、こうした微妙なニュアンスを知らない人が「太りすぎ」とか「重すぎ」と訳したりすると、わけがわからなくなります。

「肥満」と「太りすぎ」ではどちらが太っているように感じるでしょうか?

「太りすぎ」のほうが太っているように思えませんか?

でも、逆なのです。「肥満」より強い日本語がないから、しかたなく「肥満」と訳しているだけです。

逆に「過体重」のほうは「太っているというほどでもない」という意味なのです。

ところがどっこい、日本肥満学会は、このややこしい「過体重」を「肥満(I度)」と訳し、「肥満」を「肥満(II度)」としてしまったのです!

なんとも言葉に鈍感なことです。

医師は理系だから仕方ないのかもしれませんが、こんなふうに安直に専門用語を定義すれば誤解する人が多くなります。

そのせいで、海外で肥満とかダイエットについて書かれた文章が日本に持ち込まれたとき、おかしな具合になっているのをよく見かけます。

BMI25くらいのほうが長生きする

日本人で身長160センチ、体重64キロといえば、明らかに太っているといわれそうですが、世界的には太っているというほどでもないのです。

おまけに、じっさいのデータを見ると、過体重の基準すら厳しすぎるらしいのです。

1990年代以来何度も繰り返されている研究では、全体として、少し太っているくらいのほうが長生きするという結果が出ています。

BMIと死亡率の関係を統計解析すると、だいたいいつもBMIが25前後の人の死亡率がいちばん低いのです。

【図表1】小太りのほうが長生きする出所=『運動・減塩はいますぐやめるに限る!』

日本人の感覚だと小太りくらいの人が、医学的には最高なのです。

日本の肥満基準は明確なデータに基づいていない

だとすれば、日本の基準のようにBMIが25の人を「やや重い」と分類してしまうのはおかしいですね。

しかし、BMI25がベストだとすれば、少し幅をもたせて23~27くらい、つまり身長160センチなら60~70キロくらいを標準とし、それより重ければ過体重としてもいいはずです。

BMI25とか30を肥満と呼んでいる現行基準は、明確なデータに基づいているわけではないのです。

まとめます。医学的にいえば、日本人は平均的にすごくやせています。

ほとんどの人は世界標準の「肥満」にはあたらず、せいぜい「ちょい太り」までです。

しかも、世界標準の「ちょい太り」でさえおそらく厳しすぎ、むしろ最高に健康的な体重の人まで含めてしまっているかもしれません。

アメリカの肥満問題はケタ違い

そんな日本に対して、太っている人が多い国の代表がアメリカです。

アメリカは全国平均BMIが25を大きく超えています。

つまりBMIが25なら「ちょい太り」どころか「かなりスリム」というべき国です。

イメージしにくいなら、グーグルの画像検索に「fatpeople(太った人たち)」と打ち込んでみてください。

ケタ違いの写真がずらっと並びます。

「fatpeople」という言葉そのものは、太っている人を見下すニュアンスがあり、他人が見ている場所で使うのはおすすめできないのですが、だからこそ、あけすけに現実を見せてくれます。

「アメリカ式のダイエット」日本人はやるべきでない

そんなアメリカは、日本とはケタ違いに肥満に悩んでいる国ですので、ダイエットにもケタ違いに熱心です(それでもあの体型になるのがアメリカ式のダイエットなのですが)。

その結果、あやしいダイエット法を売り物にしていたデューク大学の教授が患者を「事実上の性奴隷」にしていたとして訴えられた例があるほどです(注3)。

注3 アラン・レヴィノヴィッツ『さらば健康食神話 フードファディズムの罠』ナカイサヤカ訳(地人書館、2020年)

ダイエット本は数え切れないほど出版されています。中身はやはり、あやしいものです。

そもそも、画像検索で無数に出てくるあの人たちが日本人なみの体型になりたいと思うのが無茶ではないでしょうか?

だから、アメリカのように高度の肥満が問題になっている国では、減量手術がよくおこなわれていて、エビデンスもしっかりしているとして医師にも人気です。

元大関のKONISHIKI(小錦八十吉)さんが食事療法と減量手術で100キロ以上減らしていましたね。

それくらい強力な方法です。

減量手術というのは脂肪吸引のようななまやさしいものではありません。

胃を切って縮め、たくさん食べられないようにするのです。

もちろん手術ですから、それなりにリスクはあります。

100キロ減らしたいとか、それくらい強い理由があるときにはじめて考えるべき選択肢です。

日本でもやっている病院はあるのですが、日本肥満症治療学会が厳しい基準を設けて、気軽に手術をしないよう注意をうながしています。

こんなふうに、アメリカで話題になっている「肥満」の問題と、日本人がいう「やせたい」の意味はまったく違います。

だから、日本人にアメリカ式のダイエットはたぶん当てはまりません。

たまにアメリカで流行りのダイエット法を日本に持ち込んで「海外ではこれが最新トレンド」などと説明する人がいますが、愚おろかなことです。

運動・減塩はいますぐやめるに限る! ―「正しい健康情報」の罠 大脇幸志郎 (著) さくら舎 (2022/3/10) 1,760円

運動ではやせない! 塩で血圧は上がらない!

ちまたには「健康には××がいい」「××をとると体にいい」といった健康情報があふれており、私たちはそれに翻弄されている。

しかし、世に出回っている健康情報の大部分はでたらめ、と著者は明かす。

実際には、運動ではやせない/塩で血圧は上がらない/油はやせる/サプリメントは必要ない/DHAで認知機能低下は防げない/自律神経を自力で整えるのは幻想/健診・検診はムダ/健康寿命が伸びると不健康な期間が長くなる/そもそも「免疫力」は実在しない!

人間の体はとてもうまくできており、具合が悪いところは感じるようになっている。

知らないうちに進行し、症状が出たときには手遅れになっているような怖い病気はそれほど多くない。

健康に気をつけなくても人は平均して80代くらいまで生きられるのだ。

健康情報に振り回されるのをやめ、好きなものを食べ、気ままに暮らすほうが幸せになれる。

目からウロコの「アンチ健康実用書」!

「現代人は清潔になり、食べ物に困らず基本的に健康に悩まされることはない。それでも健康を気にするのは小さな差をまるで大きな差があるようにふるまっているからで、そんな情報で時間を浪費するのは幸せからは最も離れたことであると。そういう無駄なことをせず、自分の人生をちゃんと生きよう。自分のやっている仕事をもっとちゃんと遂行しよう。そんな勇気をもらえる一冊でした。本書の内容には同意するものの、本書は捨てずに本棚の隅っこに置いておきます。」

「減塩や運動、食事などでわれわれの頭にこびりついている錆を落としてくれました。本の題名はともかく、中身は引用文献もあり、まじめな本です。いかにわれわれが健康産業に影響されているか思い知らされました。」

「最初は健康、医療に沿った内容ですが、最後の8、9章にて既刊の著者の本とは雰囲気が異なり人生哲学に近い記述にて終了します。これが個人的には興味深かったですが賛否の分かれる内容だと思いますし、東大を出て医師という安全圏な立場だから出てくる発想とも思います。また記述の中にバカという表現が何度か出てくるのは意図的だとは思いますが読んでいて気持ちの良いものではありませんでした。しかし総合的には批判覚悟で攻めた内容で面白い一冊でした。」

 

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