黒字なのにリストラをしている大企業の不思議

黒字なのにリストラに取り組む大企業が増えている理由

リストラに取り組む大企業が増えています。

東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。

コロナ禍が直撃した20年は93社。

2年連続で80社以上となるのはリーマン・ショック後の09、10年以来だそう。

黒字リストラは何故行われる?

この中には、業績が黒字の場合がある。

いわゆる「黒字リストラ」です。

なぜ、黒字であるのに社員数を削減するのでしょうか。

その大きな理由の1つが、賃金が高すぎるから。

記者会見などでリストラの理由を聞かれると、企業は「将来を見据えた企業構造の再構築のため」と答えるケースが多くみられます。

しかし、実際には大きな理由は、特に30代後半以降の賃金が経営状態やその社員の働きに比べて高すぎることにあるのです。

例えば、リストラを行うキー局の50代の社員は私がそこの在籍者から聞く限りでは、年収で1800~2800万円が多いそう。

この中には、一般職(管理職になれない社員)もいるようです。

部下のいない、いわゆる非ラインの管理職もこんなに多額の賃金を得ているというのです。

ちなみに、この在籍者は30代前半~半ばの頃、番組制作の部署にいて、年収は残業を含めると、1400~1700万円程だったようです。

日本企業は中小、ベンチャー、大企業まで総じて役員や管理職の数が適正規模を超え、人件費が膨張する傾向にあります。

例えば、「社員1万人の企業ならば役員は10~12人が適正」と指摘する人事コンサルタントが少なくありません。

ところが、この規模の企業の役員数は20人を超えているケースが目立つのです。

管理職になると「通常は全正社員の15~20%が妥当」と人事コンサルタントらの声ですが、調べると35%前後が多いのです。

20%以下はほとんどありません。

中には少数だが、45%を超える企業もあるのです。

人件費が適正ではない

役員や管理職の数や人件費が適正規模を超えるのは、主に次のような理由があるからです。

①総額人件費の管理が杜撰
②新卒、中途の採用で「総合職」として採用するケースが圧倒的に多い。一方で、依然として専門職が少ない。結果として管理職が適正数よりも増えたり、なれない人が多くなる
③年功給を重視した賃金制度のベースとなる職能資格制度を長年導入している
④管理職や役員になる基準が曖昧
⑤降格(管理職を一般職にする)にするのが法律上、難しい
⑥リストラ(この場合は、希望退職制度)を常時行う仕組みを作っていない
⑦管理職や役員へのチェック機能が社内にほとんどない

メディアや識者は「解雇規制の緩和」を唱えていますが、解雇ができない、あるいはしてはいけないといった法律はありません。

そのような判決や判例はないはず。

だからこそ、懲戒、普通、整理と3種類の解雇があるのです。

問題は解雇ができる、できないのではなく、その前の段階で管理職の数を調整するために降格をしたり、基本給の減額がスムーズにできないことです。

本来は、大々的に降格をして、基本給は半額以下にできるようにするべきでしょう。

労組やメディアにも問題が…

企業内労組にも問題があります。

春闘時などに賃金を上げるように経営側に交渉はしますが、管理職や役員のあり方をほとんど指摘しません。

「役員や管理職の数が多い。こんなに多いと、我々組合員(一般職)の賃金が伸び悩む」と批判する労組は1つも存在しないのです。

さらに、メディアにも大きな問題があります。

新聞やテレビ、雑誌、インターネットは大企業やメガベンチャー企業の社長、役員、管理職のスキャンダルや不祥事は盛んに報じます。

しかし、その社長や役員、管理職が上記の①~⑦のいびつで、ゆがんだ組織の中にいることを伝えないのです。

本来は、①~⑦は深刻な問題にも関わらず。結果として、大企業やメガベンチャー企業の社長、役員、管理職はある面では批判を受けることがほとんどなくなるのです。

黒字リストラの背景には、これら一連の問題があります。

なぜか、識者は指摘しません。

メディアも大きくは報じないのです。

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