赫衣の闇 三津田信三 (著) 文藝春秋 (2021/12/9) 1,980円

ホラーミステリーの名手による、素人探偵「物理波矢多(もとろいはやた)」シリーズ第3作。

戦中、満州の建国大学で五族協和の理想を求めた波矢多は、敗戦に接して深い虚無に囚われ、以後は国の復興を土台で支える職を求めようとする。

抗夫として働く九州の炭鉱で起きた連続殺人事件を解決した(『黒面の狐』)波矢多は、上京して、建国大学で寝食を共にした級友・熊井新市の元に身を寄せる。

新市の父・潮五郎は闇市を仕切る的屋の親分だった。

波矢多は、潮五郎の弟分である私市吉之助から奇妙な依頼を受ける。

私市が取り仕切る宝生寺の闇市、通称”赤迷路”にいつからか現れるようになり、若い女性のあとを付け回す全身赤っぽい男、”赫衣”の正体を暴いてほしいというのだ。

赫衣に出くわした女性たちに話を聞いて回る波矢多だったが、そんな折、私市の経営するパチンコ店で衝撃的な殺人事件が起き、私市に容疑がかかる。

事件の真犯人は誰なのか、そして赫衣の真相とは。

戦後直後の猥雑な風俗のなかで繰り広げられる、無二の味わいのホラーミステリー。

「物理波矢多(もとろいはやた)シリーズ第3弾。時系列としては、『黒面の狐』と『白魔の塔』の間で起きた事件。三津田信三らしい伝承・民俗学的ホラー要素が、土台としてあるけれど、『白魔の塔』よりかはミステリ要素が強い作品である印象。もう少しホラー要素の部分を強めに出してくれたら、なお良い味を出したと思うのだけれどなぁ。。」

「充分に楽しめる内容になっていると思う。少なくとも前作の刀城言耶ものよりは…
以下軽くネタバレすると、今回の被害者は一人。
ただ衆人環視の中での密室が二つ、パチンコ屋さんでの密室殺人が発生する。
また最期の方で、意外な人物が登場する。
ただ、このシリーズには仕方がないのかもしれないが、うんちくが極めて多いのと、事件がなかなか起こらないのが難点か。
闇市のことをほとんど知らなかった自分には面白く読めたが、一通りの戦後史を知らない人には理解不能だろう。
いずれにしろ、動機や犯人の正体共にかなりやり切れさが残る作品である。」


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