浅草迄 北野武 (著) 河出書房新社 (2020/10/24)

舞台は戦後から高度成長期に沸く東京。

たけし少年の初めての記憶から、オリンピックを経て、学生運動の気運高まる時代の中、新宿を彷徨(さまよ)っていた大学時代まで。

突き刺さるノスタルジーと青春のモラトリアム……。

永遠の名著『たけしくん、ハイ! 』から35年、『菊次郎とさき』から20年。

北野武の原点を描く、渾身の私小説、ついに刊行!

・子どもの「たけし」、青年の「たけし」。なんだかすごく懐かしい。一度も会ったことなんかないのだけれど。――高橋源一郎氏

・作者が大人になるまで。それは僕の生まれる前の昭和の時代。追憶、過去、それを作者は澄んだ目で見つめている。この目と一緒に僕は時代を体験することができました。こんな凄いことってそうはないと思うんだよ。――山口隆氏(サンボマスター)

北野武より、刊行の言葉

著者から読者へ

ここに載っている「足立区島根町」「浅草迄」は、俺が生まれ育っていく過程を思い出しながら書いた私小説です。
これまでこれまであちこちで喋(しゃべ)ってきた話もあるけれど、思い出しながら書くと別の風景っていうか、覚えていたはずのあの時の親や兄弟、友達の声や表情が、「こうだったんだっけ」?と感じ方まで違ってくるのが面白い。
回想がただの「思い出」や「記憶の記録」にならないのは、小説だからこそかもしれない。自分のことを書くのは恥ずかしいことだけれど、小説にすることで自分が、違う世界を生きた「もうひとりの俺」になるっていうのは発見だよね。
時代ってもんは、物価や社会の流行(はや)り廃(すた)りがあるけれども、俺や家族も含めて、「人間」って変わらないんだなってところが面白いと思う。学歴とか格差とか将来への焦りとか、親の愛情とかもね。
オマケの随想「浅草商店街」は、浅草時代に俺が出会った面白い店や人のことを書き下ろしたんだけど、これだけは「あの時」だけしか存在しなかったバカバカしいことばっかり書いてある。
まあ、小説も含めて、どれを切っても俺の頭の中の「絵」を「文字」にしていったわけで、笑ったり呆れたり、ちょっと昔懐かしくなったり、読んでみてくれるだけで有難いです!

2020年9月 北野武

「たけしが一番古い記憶を辿る事から始まり、大学を中退してフランス座のエレベーターボーイとして働く直前までを描いている。
「たけしくん、ハイ!」や「菊次郎とさき」で描かれたエピソードと重なるが何度読んでも面白い。高校~大学のエピソードは色んな所で本人が語ってはいたが、こんな感じでまとまって読むことが出来たのは初めてだと思います。
特に昭和20年代後半から昭和40年前後の戦後の東京、下町を記憶を辿りながら語られていて当時の今とは違う意味での雑多を感じる事が出来て良かったです。
刊行は先だがこの後のエピソードを描いた「フランス座」を読むことでコメディアンとして成長していく様、特に当時既に斜陽だった浅草の演芸会のエピソードと併せて読むことができるので是非続けて読んで欲しいです。」

「まず、日経の書評にあったように「文学」としての文体を70代で獲得したのが驚き。毎晩朝まで書き続けた努力も凄い。内容も青春のモラトリアムをここまで思い出に流されずに、イライラも含めて書ける誠実さに感動。若い人にとって未来はいつも不確定で危うく可笑しなものなんですね。
コロナ禍の読書としても救いがある。
最後にノンフィクションと私小説を混同して軍配をどちらに上げるか考える読書は、とても寂しい読み方だなと思いました。実用書の読み方を小説に当てはめられたら、小説家はつらいはず。作家の肩書のある方のレビューなのに。」

「ビートたけしの私小説。今までのエッセイなどで知っている話も多いけど、それでも楽しめる。
親の話や、ラグビーの松尾氏、長嶋茂雄氏のエピソードは何度読んでも笑える。
フランス座以降の話は色々な場所で語られているけど、それ以前の学生時代の話なども面白いのでおすすめ。」


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