家・堀江栞、初めての作品集
有機溶剤のアレルギーのため、岩絵具と顔料、和紙と膠で作品を生み出し続ける堀江栞。
2015年の第6回東山魁夷記念日経日本画大賞展入選作品「さまよう」(2010)で注目された彼女が描く対象は、「傷つけられ、痛みを負い、哀しさや辛さを抱えた存在たち」です。
それらは動物であったり、石や人形でありました。それがパリへの留学を経て、対象が人に拡がり、その集大成として、新作〈後ろ手の未来〉(2021)として結実、本作で「VOCA展2022 現代美術の展望ー新しい平面の作家たちー」においてVOCA佳作賞を受賞し、その作品も収載しました。
傷つけられた者たちの「小さな声」を届けるために表現し続ける堀江栞の作品は、分断が拡がる世界に生きる多くの人たちに声や居場所を与え、流れに抗う勇気と深い共感が得られます。
作品集には、「さまよう」から最新作まで90点余りを収載。芥川賞作家で、NHK『日曜美術館』で司会も務める小野正嗣さんと神奈川県立近代美術館館長の水沢勉氏という、堀江栞作品を長く見続けている2人が寄稿しています。
いま最も注目を浴びる画家・堀江栞の全貌が伝わる一冊です。
堀江さんの絵は、対象に流れた時間そのものを描いているが如く、見ていて吸い込まれそうになる。それは彼女が、岩絵具という自然の鉱物で作られた顔料を用いているのと関係があるかもしれない。一粒ずつの粒子が存在に命を吹き込む。待たれた初めての画集が発売。堀江栞『声よりも近い位置』(小学館) pic.twitter.com/0sHuirI1aE
— Title(タイトル) (@Title_books) March 17, 2022
【編集担当からのおすすめ情報】
「VOCA展2022 現代美術の展望ー新しい平面の作家たちー」で佳作賞を受賞した新作〈後ろ手の未来〉(2021)は、1点が1940×600ミリメートルあり、それが5点で構成される大作です。
この作品の全体図はもちろん、作家の特徴でもある、粒立つが如きマチエールが際立つように部分拡大図も豊富に収録しています。
そのマチエールを、神奈川県立近代美術館館長の水沢勉氏は、「遠近の揺れのなかで、見るものは、絵肌の体験へと誘われることになる。それは、通常の日本画ではあまり例をみない厚さで細い筆で塗り重ねられたマチエールである」と記しています。
堀江栞が訴え続ける世界と、それを表現するマチエールの燦めきにも注目です。
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