死神の棋譜 奥泉光 (著) 新潮社 (2020/8/27)

名人戦の日、不詰めの図式を拾った男が姿を消した。

幻の「棋道会」、美しき女流二段、盤上の磐、そして将棋指しの呪いとは──。

圧倒的引力で読ませる前代未聞の将棋ミステリ。

――負けました。これをいうのは人生で何度目だろう。

将棋に魅入られ、頂点を目指し、深みへ潜ってしまった男。

消えた棋士の行方を追って、北海道の廃坑から地下神殿の対局室までの旅が始まる。

芥川賞作家が描く傑作将棋エンタテインメント。

「奥泉作品に共通のモード、現実がいきなり夢魔的な仮想現実へ変容していく、は今回も全開である。最後の方の急転直下もミステリとしては合格点である。しかし、事件の全体像についてはその複雑さでどうも腑に落ちない細部があるように感じた、もしかしたら決め手になる表現を見落としてしまったのかもしれない。さて、本の帯に書いてある”地下神殿の対局”もなかなか読ませるし、勝負の世界の凄まじさのイメージ表現としての死神の造形も納得の描写と思う。今回は、恋愛要素もあるので、恋する人のヒリヒリする感じもうまく行っていると思う。評者は一向に将棋を理解していないので、数ページにわたる2箇所の指し手の進み行きがどうもよく理解できなかったのは残念だった。」

「他の方のレビューも見ながら、なるほどその通りと納得。現実と非現実が交錯しながら、物語の一貫した空気感を漂わせ読ませる筆力は、相変わらず圧倒的。ファンにはたまらない1冊なのでしょう。しかし、私のような「ちゃんと現実世界の制約の中で、物語を閉じてほしい」と願う、いわば奥泉作品の限りなく一見さんに近い読者の方々にとっては、「話の展開がどんなに強引でも成立するフォーマットだよね」「ミステリというよりファンタジーに近いよね」と残念に思う部分もあるのでは…。「雪の階」でも全く同じ読後感を抱きました。」

「頭脳だけの勝負を生業とする将棋って怖い世界なんですね、ってことをまざまざと感じ知らされる小説。
もっとも、将棋の知識がなくても楽しめるようになっていて、通常の小説にある、過去と現在、東京と地方というコントラストだけじゃなく、現実とファンタジー、一流と底辺、大義と痴話といったコントラストが話に奥行きを与えている。
ちょっと締め方(将棋風にいうと感想戦)が雑な気もするがレベルの高い小説だ。」


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