この部屋から東京タワーは永遠に見えない 麻布競馬場 (著) 集英社 (2022/9/5) 1,540円

東京に来なかったほうが幸せだった?

Twitterで凄まじい反響を呼んだ、虚無と諦念のショートストーリー集。

「3年4組のみんな、高校卒業おめでとう。最後に先生から話をします。大型チェーン店と閉塞感のほかに何もない国道沿いのこの街を捨てて東京に出て、早稲田大学の教育学部からメーカーに入って、僻地の工場勤務でうつになって、かつて唾を吐きかけたこの街に逃げるように戻ってきた先生の、あまりに惨めな人生の話をします。」(「3年4組のみんなへ」より)

「『30までお互い独身だったら結婚しよw』。三田のさくら水産での何てことのない飲み会で彼が言ったその言葉は、勢いで入れたタトゥーみたいに、恥ずかしいことに今でも私の心にへばりついています。今日は、彼と、彼の奥さんと、二人の3歳の娘の新居である流山おおたかの森に向かっています。」(「30まで独身だったら結婚しよ」より)

「私、カッパ見たことあるんですよ。それも二回。本当ですよ。桃を持って橋を渡ると出るんです。地元で一回、あと麻布十番で。本当ですよ。川面から、顔をニュッと目のところまで突き出して、その目で、東京にしがみつくために嘘をつき、人を騙す私を、何も言わず、でも責めるようにじっと見るんですよ。」(「カッパを見たことがあるんです」より)

14万イイネに達したツイートの改題「3年4組のみんなへ」をはじめ、書き下ろしを含む20の「Twitter文学」を収録。

【推薦コメント】
面白すぎて嫉妬した。俺には絶対に書けない。
――新庄耕さん(小説家・『狭小邸宅』『地面師たち』)

「色褪せた哀しみや諦めで彩られた文章が味わい深い本書。
色褪せてるのに彩り?と、矛盾を感じさせてしまう評価ですが、読んでみると本当にそんな感じなのです。
Twitter投稿時の画面上に映る横書きフォントとは違う、縦書きの活字で紙の上で表現される言葉たちは、Twitterに投稿されてたそれらとはまた違った味わいです。
文字はなるべくフィジカルで味わいたい私としては、是非とも紙で綴られた本で味わって頂きたい逸品です。」

「どんよりした話だけど、暗い気持ちにはならない。これを読むと現実を受け入れつつ頑張ろうと思えるので、究極の自己啓発本だと思う。」

「定時に帰れてやりがいのある仕事で、生活に不自由しない給料をもらい、首都圏の庭付き一軒家と趣味の車を3台持ち、素晴らしい妻と可愛い娘がいて、何も不満がない。そんなわたしもこの本を読むと少しだけ死にたくなります。」

「地方出身で大学からの東京の自分には突き刺さった。自分もこんな人生になるのかと不安に思った。
上を見るとキリがないこの人生を、どう楽しく生きるかこれから友達に相談します。」

「地方出身、上京組の大人が読むと心が抉られる。でも、また読んでしまう。ペンネームの由来が最後に書いてあって、深い。」


(↑クリックするとAmazonのサイトへジャンプします)

 

おすすめの記事