失敗したかも…年金を60歳で繰り上げ受給した人に共通する3つの後悔とは?
公的年金(以下年金)には国民年金と厚生年金があります。年金は終身年金であり、人生100年時代ともいわれる今、老後の生活を送るうえで貴重な収入源です。
その大切な年金の受給で失敗しないよう、今回は「年金の繰り上げ受給」について説明します。
目次
年金の繰り上げ・繰り下げ受給とは
年金の受給は、国民年金・厚生年金ともに原則65歳からとなっており、この原則65歳の受給開始年齢を、60~64歳に早めることを「繰り上げ受給」、66~70歳に遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。
年金の繰り上げには、「全部繰り入れ」と「一部繰り入れ」があり、特別支給の老齢厚生年金をもらっている人は老齢基礎年金を「一部繰り入れ」とすることができます。
「繰り上げ受給」をする場合は年金の受給額が減額されます。減額率はひと月「-0.5%」です。
一方、「繰り下げ受給」する場合は受給額が増額され、増額率はひと月「+0.7%」で計算します。
ただし令和4年4月1日より以下の点が変更になる予定です。
(1)「繰り下げ受給」の開始年齢を70歳から75歳に引き上げることにより、各自60~75歳の間で受給開始年齢を決めることができます。
(2)令和4年4月1日以降に60歳になる人が、繰り上げ受給を受ける場合は、減額率がひと月「-0.5%」からひと月「-0.4%」となります。
年金を65歳→60歳からの支給に繰り上げて運用するという話を最近聞いてなるほどなぁ、と思った。繰り上げによる減額分は3%の利回り運用だと80歳くらいまでは繰り上げの方がパフォーマンスがいいらしい。投資は、健康で長生きするのが最も多くのリターンを得ることができる。規則正しい生活をしよう。
— レイチェル (@rachelcubmike) September 18, 2021
年金の受給額を具体例で見ると
厚生年金保険(第1号)の受給者の平均受給額を年180万円(ひと月約15万円)として、受給額を比較してみましょう。
(1)繰り上げ受給の減額率をひと月「-0.5%」、繰り下げ受給の増額率をひと月「+0.7%」で年間の受給額(万単位)を計算すると、
60歳から繰り上げ受給した場合 年126万円 (原則比-54万円)
65歳で原則通り受給した場合 年180万円
70歳まで繰り下げ受給した場合 年256万円 (原則比+76万円)
そして繰り上げ受給の減額率を令和4年4月からのひと月「-0.4%」で計算すると
60歳から繰り上げ受給した場合 年137万円 (原則比-43万円)
になります。
(2)平均寿命85歳(男女の単純平均)までの累計受給額(万単位)を計算すると、
60歳から繰り上げ受給した場合 126万円×25年=3150万円(原則比-450万円)
65歳で原則通り受給した場合 180万円×20年=3600万円
70歳まで繰り下げ受給した場合 256万円×15年=3840円(原則比+240万円)
になります。
そして平均寿命(男女平均)85歳までの累計受給金額を、令和4年4月からの繰り上げ受給の減額率ひと月「-0.4%」で計算すると、
60歳から繰り上げ受給した場合 137万円×25年=3425万円(原則比- 175万円)
となります。
(3)「繰り上げ受給」と「原則65歳で受給」の累計受給額を比較すると、ひと月「-0.5%」で計算した場合は76歳、ひと月「-0.4%」で計算した場合は80歳で、受給開始からの累計の年金額がほぼ同額になります。
年金繰り下げの有利/不利の計算は現在のゼロ金利を前提にしているので、今後、インフレと金利上昇が起これば話はまったく変わります。金利が大幅に上がれば、繰り上げ受給して定期預金などで運用した方が有利になることもあるでしょう。
— 橘 玲 (@ak_tch) March 12, 2022
繰り上げ受給の利点と注意点は
繰り上げ受給した場合の利点は、以下のことが挙げられます。
(1)早い場合60歳から年金受給できる
一方、繰り上げ受給した場合の主な注意点は、以下の通りです。
(1)繰り上げ受給の減額は一生続き、取り消しができない
繰り上げ受給の変更はできず、65歳以降でも一度減額された金額は戻りません。
ただし、「振替加算」は65歳からの受給で変わりません。
(2)年金の受給権者は国民年金の「任意加入被保険者」になれない
国民年金の加入期間が40年未満の人が年金を増やそうとして、60歳以降に任意加入しようとしても、繰り上げ受給で既に年金を受給している場合は加入できません。
(3)他の年金への影響としては、
「寡婦年金の受給権者」が、老齢基礎年金を繰り上げ請求すると、寡婦年金は失効する
「障害基礎年金」は、受給権発生後初診日がある場合受け取れない
65歳以前に遺族年金の受給権が発生した場合、老齢基礎年金と遺族年金のどちらかを選択をする
などがあります。
年金の繰り上げ受給は、一度選択すると変更はできないため、上記の(1)~(3)のような点で後悔することがないよう、よく検討する必要があります。
年金の繰り上げ支給・繰り下げ支給とも、それぞれメリット・デメリットがあります。
特に繰り上げ受給を考えている人は、減額率は変更されるとはいえ、前項で記述したように注意すべき点があり、慎重に対応する必要があります。
そして金融資産を含め、誰とどこで住むのかなどいろいろな角度から各人のライフプランを作成し、それに合わせた年金の受け取り方を考えてみてください。
もう10年ちょっとくらいすると無産階級の氷河期世代がいっせいに年金繰り上げ受給するので年金制度は崩壊するんだよ。
— いりじうむ192 (@irid192) February 21, 2022
ネットの声
「繰り下げには裏があって65歳の受給金額が基準になるけどそれ以降も会社員として働いていて給料が厚生年金の報酬比例部分と足して47万円を超えていたら在職老齢年金制度によってカットされる、下手すれば全額カットもあり得る、そのカットされた年金額が基準になるから要注意ですね、5年間年金をもらわずに必死に働いて5年後増えている額が予定より少ないってことになったら悲しいよな、それに年金が増えたら介護保険や所得税、健康保険料なども比例して上がるから実際には増額分は半分程度にしかならない、それを考えると元を取る年齢は5歳あと倒しになるだろうね。」
「何歳から年金受給するか?は、ほんと、個々人の置かれた境遇や好みによるかと。人生も70歳を過ぎれば、旅行も食事も、若い頃ほど満足には楽しめない(らしい)し、いつ深刻な病が発覚するかもわからないので、自分なら繰り上げ受給したいなぁ、と今は思っています。
いずれにせよ、受給開始の年齢を決めるにあたっては、安易に判断するのではなく、何歳でどのくらいもらえるか、シミュレーションを入念に比較するのが良く、メリットデメリットを具体的に情報として知ることは大事。
ただ、手取りと税金の計算が面倒くさいのは、何歳になっても変わらない。」
「年金の繰り上げ繰り下げは定期的に話題になるけど、最大の要因である「自分がいつ死ぬか」がわからないから、どうやっても結論は出ない。
強いて言えば、繰り下げで支給額が増えたとしても、その額に応じた税金や社会保険料が課せられるので、思ったほど支給が増えないことがあるということに留意するくらい。
あとは自分の収入や人生観に応じて自分で決めるしかない。」