どうして?開通した三陸道の250キロ“トイレなし区間”の恐怖

2021年12月に全線開通した青森県八戸市と仙台市を結ぶ三陸沿岸道路(三陸道)。

全長359キロのほとんどが無料区間で、物流網の強化や観光客誘致などにより、東日本大震災からの復興加速が期待されます。

ただ、八戸市から宮城県気仙沼市までの約250キロはトイレの〝空白地帯〟。

自動車道を降り、地域にある「道の駅」などの利用を促す狙いだそう。

果たして不便はないのでしょうか。

地域に立ち寄ってほしい

一般にパーキングエリア(PA)の設置間隔は15キロ、給油所や食堂を併設するサービスエリア(SA)は50キロが目安とされます。

三陸道は大谷海岸インターチェンジ(IC、気仙沼市)以北はトイレを備えたPAがないのです。

理由について、三陸道を管理する国交省東北地方整備局の担当者は「本線を通り過ぎるだけではなく、周辺地域に立ち寄り、被災地の活性化につなげてもらいたいため」と説明します。

「周辺には自治体の観光の窓口である道の駅がたくさんある。トイレの利用だけでなく、地元の物産品なども購入してもらいたい」と語ります。

「事前にトイレ計画」

とはいえ、生理現象はコントロールが利きにくいもの。

大谷海岸ICから約30キロ離れた三滝堂(みたきどう)IC(登米市東和町)に隣接する道の駅のトイレ前で利用者に感想を聞いてみました。

仙台市の40代の男性会社員は「特に不便は感じない。何かあれば三陸道を降りて、トイレを探せばいいから」といいます。

確かに、三陸道のIC間の平均距離は4・6キロ。

東北自動車道は9・7キロだから半分以下となるのです。

街に降りやすい工夫を凝らしているといえるでしょう。

ただ、不安の声はある。東松島市の男性公務員(47)は「ずっとPAもSAもない。トイレに不安が残る。三陸道を降りて、コンビニを探そうとしてもなかなか見つからないこともあった」そう。

気仙沼市の男性会社員(60)は「八戸市まで行く際は、なるべく水分を取らない工夫をしている」と述べ、「子供が同乗した場合などは難しいかもしれない」と不安を口にしました。

一方、岩手県釜石市の50代の自営業女性は事前に〝トイレ計画〟を立てればいいと主張。

「トイレがないなんて前もって分かっていること。ほとんどの区間が無料で使えて、移動時間も短くなったから、地元に立ち寄る位いいでしょ」と記者の不安を一喝しました。

気仙沼市の60代女性も「不便でも仕方がない。事前に分かっていることなんだから」と語ります。

不便とまでは

国交省によれば、三陸道開通に伴い、仙台市─岩手県宮古市間は約2時間短縮し、約3時間で移動できます。

宮古市─八戸市間は約1時間短くなり、約2時間で結ばれました。

八戸市の長距離トラックの男性運転手(49)は「無料だからトイレの利便性まで求めてない」と話します。

石巻市の30代の男性会社員は「何回か〝暴発〟しかかった」と笑い、「知人からは『危なかった』とか『車内でペットボトルを使った』という話も聞く」と語りました。

トイレはやはり必要…無料だけど…

この点について利用者からはSNSで

《いくら足を運んでもらいたいといっても、だからといってトイレを作らないってどうなのかなぁ?》
《地方の高速はどこ行ってもトイレが少ないけど、さすがに250kmの空白地帯はありえないだろ?》
《トイレもそうだけど、給油はどうなってるんだろう? そっちの方が心配》

といった声が多く、それでもなかには

《ほとんどの区間が無料で使えて、移動時間も短くなったから、それほど心配ないんじゃない》
《高速料金がほぼ無料ならインター下りれば良いだけ》
《前もってトイレがないこと把握しておけば、無駄な水分取らなければいいだけだろ。問題なし》

とのコメントもあり、利用者の間でも賛否両論、意見が分かれているのが実情のようです。

ともあれ、利便性が良くなることで、必ずついて回る「日帰り可能」化問題。

それを食い止めるために、あらゆる自治体や地域が、今も知恵を絞っていることでしょう。

ネットの声

「長距離ドライバーです。
東北道が吹雪通行止めで今年何度か三陸道を利用しました。トイレが本線上にないのはなかなかきつかったです。
無料区間なので、買い物や食事するために、途中で乗り降りするのは全く苦ではありません。
手前で降りて、道の駅に立ち寄っても、そのまま次のインターで乗れるような構造になっているようなので、その辺もしっかり伝えて欲しいと思います。
その区間、2ヵ所ほど、トイレ施設の設置お願いします。
その後降りて買い物や食事しに行きますよ!
無料の復興道路なので、なかなか大きい声で言えないのが悩ましいところです。」

「活性化とは、利用者に不便を強いて半ば強制的に遠回りをさせて呼び寄せることなのか?

これを良しとする思考回路に問題があると思うし、そんな人たちが待つところに自然と足が向くかと言えば、答えは出ている。
トイレと自販機を設置することさえ被災地活性化に影響を及ぼすというなら、それに勝る地域の魅力を発掘するのが本筋ではないか。」

「地方の高規格幹線道路にはPAもトイレもないのが普通で、三陸道はほぼ前線が無料区間だしIC降りれば道の駅なり交流施設なり点在してるから一般旅行者としてはあまり不便を感じなかったです。
記載のとおり、用を足すため市街地に降りる事で新たな発見もあったし。

でも、トラックドライバーだと大型車を停められるコンビニも限られてくるから大変でしょうね。」

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