日本の高齢者…老後の過ごし方

「何もしない」が3位! 欧米と比較する日本人の老後の過ごし方

仕事と余暇の捉え方の違い

余暇の使い方と楽しみ方
朝日新聞が平成時代に、フランスの保険会社が世界11か国で行った定年後の余暇の時間の過ごし方に関する調査結果を発表しました。

アメリカの第1位は「趣味」で、第2位が「旅行」、第3位が「スポーツ」。

イギリスの第1位は「ガーデニング」で、第2位が「趣味」、第3位が「ハイキング」。

日本の第1位は「趣味」で、第2位が「ボランティア」、第3位が「何もしない」。

ちなみに、フランスの第1位は「趣味」で、第2位が「ガーデニング」、第3位が「読書」。

この結果を見て、驚くことは日本の第3位の「何もしない」でしょう。

日本では、週休5日制になっても、土曜日に勤めに行く人もいますが、これは明治時代以降に生まれた働くことを美徳とする風習が今日まで続いているからでしょう。

中期、長期の休暇を取る欧米と比べ、日本では、国から与えられない限り、人びとは自ら休もうとはしなかったのです。

経済学者の「行動力のエキスは余暇を楽しむ説」

経済学の巨人と称されたハーバード大学の経済学者、ケネス・ガルブレイスは、「余暇の過ごし方には3段階ある」と指摘。

第1段階が「怠惰」であり、無駄に過ごしている時間。第2段階は、「気分転換」で心身ともにリフレッシュする時間、第3段階は、心の平常を養うための「自己実現」。

つまり、やりがいや生きがいを発見し人生を豊かにすることです。

ところが、日本では、1980年代に調査された男性サラリーマンの「リラックス度のデータ」では信じがたい調査結果が残っています。

その時代、日本人男性サラリーマンが精神的に最も安定しアルファ波が出てリラックスしている時間と言えば、「余暇を過ごしている時間や家庭でくつろいでいる時」と思われるかもしれません。

しかし、調査では何と「職場で仕事をしている時」という結果が出ました。

80年代を振り返れば、当時、日本では働けば見返りがあり給与もよく、いろいろなポストも用意されていました。

また、当時は「ワーカホリック」や「猛烈社員」という言葉も流行しましたが、彼ら男性サラリーマンにとって、会社や組織、職場が「安住の地」でもあったのです。

今の時代だからこそ、ガルブレイスの説く第3段階のやりがいや生きがいを発見し、余裕のある人生を楽しんでもらいたいものです。

アインシュタインの遊びと仕事のバランス理論

相対性理論でノーベル賞を受賞したアルバート・アインシュタインは、人生において仕事と遊びについて次のような興味深い格言を残しています。

「人生における成功をAとしよう。仕事をX、遊びをY、そして沈黙をZとすると、A=X+Y+Zが成立する」

職場だけが「人生」または、「安住の地」と思っている人が多い。

そのような人は、退職後苦労するのです。

仕事だけの男性は、正しい事しか書いていないテキストブックのようだと言われています。

どこか息苦しくて、ゆとりがなく面白みがないと言われます。

人間としての行間が狭い感じがするようだ。男の器量は、遊びから生まれるのです。

オランダの歴史学者ホイジンガーは「人間の本質は、遊ぶ人(ホモ・ルーデンス)である」と指摘。

遊びほど人間をまじめにするものはないでしょう。

では、どのようにすればよいのでしょうか。

仕事時間が「オン」なら仕事以外の時間は「オフ」となります。

仕事やビジネスをしていない時間、言い換えれば「オフビズ」時間を充実させることにつきます。

趣味が豊かな男性が存在します。

しかし、そういう人々の多くは単なる「遊び人」ではありません。

そのようなタイブの男性は、独自のスタイルを持っており、あくせくせずに、ゆとりある生活をエンジョイしているのです。

遊びが男性・紳士を大人にするというたとえもあります。

よく遊ぶ人ほど仕事もできる。

年齢に関係なく、遊びは人生後半の大事な伏線となるのです。

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著者について
兵庫県生まれ。札幌大学英語学科・米国ポートランド州立大学卒業。オレゴン州立大学院博士課程修了(Ph.D.)1981年。ハーバード大学・文部省研究プロジェクト客員研究員(1992~3年)。ハーバード・ロースクールにて交渉学上級講座&ミディエーション講座修了。エドウィン・O・ライシャワー博士(元駐日米国大使・ハーバード大学名誉教授)が、ハル夫人と来道の際、講演の公式通訳として各地を随行(1989年9月)。日本交渉学会元会長、札幌大学名誉教授、北海道日米協会副会長・専務理事兼任。主な著書・編著に『サムライ異文化交渉史』(ゆまに書房)、『ハーバード流交渉術――世界基準の考え方・伝え方』(総合法令出版)、『ケネディの言葉』(東洋経済新報社)などがある。

 

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