経営者が原因!?日本人の給料が上がらない理由 

なぜ「日本人の給料」は全然上がらないのか?

じつは「経営者」が最大の原因だった…!

日本の賃金低迷が深刻な状況となっています。

岸田政権はあの手この手で賃金アップを試みているのですが、目立った成果は上げられないでしょう。

賃金というのは政策ではなく企業の業績で決まるものであり、業績拡大を実現できるのは経営者だけだからです。

ところが、日本の上場企業経営者が置かれている環境は甘く、現状のままでは賃金は上がりようがありません。

賃金が安いのは経営戦略に原因がある

日本の実質賃金は過去20年にわたってほとんど横ばいの状態が続いています。

同じ期間で諸外国の賃金は1.5倍以上に上昇したので、日本と諸外国の差は広がるばかり。

私たちが普段、消費する製品の多くは輸入で成り立っていて、日本だけ賃金が上がらないと、国民生活は窮乏するのです。

日本の賃金が抜き差しならない状況になっていることから、岸田政権は賃金上昇を政策の主眼に据え、賃上げ税制の実施などを検討しています。

岸田政権が賃金に着目したこと自体は評価できますが、経済界に対する要請や税制だけで賃金を引き上げることは難しいでしょう。

その理由は労働者の賃金は税制で決まるわけではなく、企業の業績でほぼ一意的に決まってしまうからです。

経済学的に見た場合、賃金は企業の生産性が向上しない限り上昇しません。

生産性は企業が生み出した付加価値を労働力(労働時間と社員数の積)で割った数字。

生産性を上げるには、付加価値を高めるか、社員数を減らすか、労働時間を減らすかの選択となるのです。

社員数や労働時間の削減には限度があるので、基本的に生産性を上げるには付加価値を高める必要があり、日本と諸外国の生産性格差も、多くが付加価値要因です。

企業が提供する製品やサービスの付加価値を決めるのは、どのような製品を誰にいくらで売るのかという企業戦略であり、労働者の働き方ではありません。

そして企業戦略を決めることができるのは経営者だけです。

日本の賃金が安かったことには様々な理由がありますが、突き詰めて言うと、日本企業(特に日本の大企業)の環境が甘く、高い賃金を支払うだけの付加価値を企業が生み出していないことに尽きるのです。

例えば日本の基幹産業である製造業の輸出単価は1980年代以降、一貫して下落が続いているのですが、これは製造業立国としては異常な事態と考えてよいでしょう。

価格が下落している最大の理由は、従来型の製品戦略を変えることができず、中韓との価格競争に巻き込まれたからです。

一方、同じ製造業大国であるドイツの輸出単価は一貫して上昇を続けており、日本とは対照的です。

ドイツは中韓との価格競争に巻き込まれないよう、利益の出ない分野は捨て、高付加価値な製品へのシフトに成功しました。

同国の成功はEU(欧州連合)によるものという意見が日本では広く共有されていますが、貿易圏だけが理由で製品価格が継続的に上昇することはあり得ません。

ドイツとの違いが経営戦略の違いから生じていることは明白です。

日本は望んで安値販売を行ったのではなく、従来の経営戦略を変えられず、結果的に製品競争力が低下し、値引きせざるを得なくなりました。

そして、すべてのシワ寄せが社員に賃金に向かっているというのが偽らざる現実です。

「日本企業だけがダメ」という異常事態

こうした状態から脱却するには企業の経営戦略を変えるしかなく、これを実現できるのは経営者だけです。

日本の場合、大手企業を頂点とする重層的な下請け構造が形成されているので、大手企業の経営動向が経済全体を左右します。

結局のところ大手企業の経営者が変わらなければ、中小企業も含めて賃金は上昇しません。

ところが、日本の大手企業経営者が置かれている環境はあまりにも甘いのです。

日本企業全体の売上高は1990年代以降、140兆円前後で横ばいの状態が続いています。

一方、米国企業は同じ期間で売上高を3倍以上に拡大しました。

日本だけが売上高が横ばいになっており、相対的に見れば完全に減収です。

売上高というのは企業にとって生命線であり、売上高が伸びなければ付加価値の絶対値も増えず、賃金の原資を確保できません。

日本企業は薄利多売になっているとよく指摘されますが、厳密に言うとこの解釈は正しくありません。

日本企業は価格を下げているにもかかわらず、売上高が伸びていない状態であり、薄利多売どころか、薄利でかつ小規模販売を余儀なくされているのが実態です。

諸外国の企業が売上高を大きく拡大させる中、日本企業だけが横ばいを続けているというのは、明らかに日本企業の経営戦略に問題があると考えてよいでしょう。

ではなぜ日本企業の経営者は正しい経営戦略を立案できないのでしょうか。

最大の理由は、ガバナンスの欠如にあると考えられるのです。

この問題はかなり前から指摘されており、歴代政権もガバナンス改革を続けてきたのですが、十分な成果が上がっているとはいえません。

もしガバナンスがしっかりと機能していれば、業績を継続的に拡大できない経営者は無能と見なされ、退任を迫られているはずです。

日本企業だけが売上高を伸ばせていないという現実を考えると、大手企業の経営者として十分な能力を有していない人物が経営の舵取りをしている可能性がどうしても否定できないのです。

ソニーやシャープのように経営者が代わっただけで、あっという間に業績を回復させるケースが多いという事実も、経営者に問題があるという説を裏付けています。

ガバナンスの重要性

ひとくちにコーポレートガバナンスといってもそのあり方は様々です。

日本社会では短絡的に米国流経営をコーポレートガバナンスと見なす傾向が強いのですが、それは物事の一面に過ぎません。

欧州には欧州のガバナンスがあり、米国とは異なる形で経営者に対して厳しい責務を課しています。

基本的な価値観が根本的に違っているものの、中国には中国のガバナンスが存在しており、やはり業績拡大に貢献しています。

米国流(アングロサクソン流)のガバナンスは基本的に株主の利益を尊重するという流れで形成されています。

株式会社というのは、株主が会社の所有者であると明確に位置付け、その所有権を自由に売買できるよう「意図的に」作られた仕組みです。

もし会社の所有権を自由に売買することを望まなければ、別の会社形態を選択すればよいだけであり、米国ではパートナーシップなど株式会社以外の会社形態はたくさんあるのです。

わざわざ株式会社を自主的に選択した以上、所有者である株主の意向を尊重するのは当然の義務であり、株主価値を最大化するのが経営者の仕事であるとの解釈が成立します。

基本的に米国型のガバナンスはこうした仕組みで成り立っており、経営者には株主からの厳しいチェックが入り、十分な収益を上げられない経営者は辞任を迫られるのです。

企業は高い収益を維持できるので、結果的に従業員にも高い賃金を支払うことができるという流れです。

一方、欧州のガバナンスは米国型とは少々異なります。

企業経営に対して国家が介入する余地が多く、フランスでは多くの上場企業の筆頭株主は政府です。

十分な収益を上げられない経営者は、労働者の生活を苦しめるので、最終的に政府が権限を行使し、経営者を入れ換えます。

ドイツでは、政府が直接、経営に関与することはありませんが、企業経営者には法律的に厳しい制約を課しています。

債務超過を一定期間放置した経営者には罰則が適用されるなど、株主や労働者を保護する流れで会社法が整備されているのです。

債務超過になり経営能力を失った企業を税金で救済している日本とは大違いです。

高い報酬と地位に見合う仕事を

日本の場合、基本的に当事者の契約に任せているという点において米国型に近いのですが、株主による経営チェックは甘く、市場メカニズムが十分に機能しているとは言い難いのです。

近年、導入が進んでいる社外取締役も、お飾りとして著名人を任命するケースが散見されるなど、経営者の保身の道具になっているのです。

日本は株主中心主義ではないという点や、(目的が異なるとはいえ)日本の上場企業の筆頭株主はもはや公的年金と日銀であるという現実を考えると、欧州型にも見えます。

しかしながら、政府が経営に積極的に関与し、結果責任を負うという姿勢は見られません。

結果として日本のガバナンスは極めて中途半端になっており、これが企業の業績に大きく影響しています。

大企業経営者には高額報酬と高い社会的地位が与えられるのですが、それは、企業の業績を持続的に拡大させるという難易度の高い仕事と引き換えです。

業績を拡大できない経営者に対しても、高い社会的地位や高額報酬を与えるといういびつな状態から脱却できなければ、賃上げの実現は不可能です。

本気で日本の賃金を上げたいのなら、企業の経営改革は不可避だと考えられますが、果たして日本社会にその覚悟はあるでしょうか。

ネットの声

「ずっとデフレが続いたので、国内産業全体が守りに入っていますよね。経済の停滞は現状維持ではなく衰退ですから、現実問題として給与制度を維持するだけで精一杯の会社が大半ではないでしょうか。当然、経営者の責任も重いけど、それ以上に緊縮財政で内需低迷を常態化させた国の責任の方が大きいと思います。今春、政策によって賃上げが為されようとしていますが、値上げラッシュが続いていますので、実感を伴うほどの効果は無いとでしょう。沈滞ムードをガラリと変えてくれるような強いリーダーが出てきて欲しいと思う。」

「今の日本に欠けているのは本質的には稼ぐ力であると言っても言い過ぎではない。ただ、一つアメリカやヨーロッパと違うのは、日本は既に人口減少社会に入っていて、放っておいては需要が増えない事だと思う。需要が増える環境下では企業のビジネスモデルも継続しやすい。
その意味で、少子高齢化の改善は日本が抱える問題の大きな要因だと思う。」

「転職すると給与が、下がる。このような状態では。給与なんて上がるはずがない。企業の数を増やさないと需要がなく上がるはずがない。相続税で、自然人を減らし、法人を減らす。本来株式会社の経営者は、利益を風邪ぎ、配当するのが目的。安い給料で使えるのに上がるはずがない。企業数を増やし、働く場を増やさないと給与は上がらない。政府は逆のことをやっている。企業を減らせは、公務員のする仕事が少なくて済む。」

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