どうして?”死刑執行”を伝えるのは当日の直前

「死刑執行」を伝えるのはなぜ「当日の直前」なのか…? ほとんどの人は知らない「死刑執行が決まる瞬間」

世界各国で「死刑制度」が次々廃止になっていく中で、日本はいまだに死刑制度が存在している”珍しい国”になっています。

法務大臣は「死刑もやむを得ない」と…

2021年12月21日にも、日本では確定死刑囚3人の刑が執行されました。

死刑執行は2019年12月以来の2年ぶり。会見を行った古川禎久法務大臣には記者からこんな質問が飛んだのです。

「死刑制度の存廃については国民感情とか刑事政策の在り方も踏まえてということですが、日本の国民感情について大臣はどのように受け止めていらっしゃいますか」

この質問に対して、古川大臣は次のように答えました。

「今現在、国民世論の多数が極めて悪質凶悪な犯罪については死刑もやむを得ないと考えていると認識しています。凶悪犯罪がいまだに後を絶たない状況を鑑みたときに、やはり罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては死刑を科することもやむを得ないと思っています。したがって、私は死刑を廃止することは適当でないと考えています」

死刑制度が存続する日本で、その実態や詳細についてあまり知られていないという実情が近年注目されるようになり、死刑制度についての知識や実態を学びたいという人が増えています。

実際、最近では死刑に立ち会った刑務官に取材したマンガ『刑務官が明かす死刑の話』が死刑制度の実態が詳細に描いているとして話題になっているのです。

確かに、『刑務官が明かす死刑の話』ではマンガを通して死刑へのさまざまな知識を学ぶことができます。

たとえば、死刑執行をおこなう瞬間について触れた箇所では、死刑において執行ボタンを押す刑務官は1回の死刑において3~5人だということ。

さらにどのボタンが実際に床をぬくボタンであるかはわからないようにしているといったことが紹介されているのですが、そうしたことを知っていたという人は必ずしも多くはないでしょう。

死刑告知は「当日直前」という現実

今回の死刑執行をめぐる法務大臣の記者会見でも、じつはそんな日本の死刑制度に関する課題や問題が浮き彫りになったのです。

「先月、死刑囚2人が死刑執行の本人への告知が当日直前に行われるという現在の運用は違法だと主張して国に対して訴えを起こしました。それに対して、当時法務省は適切に対応していきたいという回答をしていらっしゃいますが改めて死刑が執行されたことに合わせ、大臣自身は訴えについてどのように対応していきたいというお考えでしょうか」

たとえば記者からはこんな質問が飛んでいます。

じつは死刑執行が死刑囚本人に告知されるのは、執行当日、その直前なのです。

そうした中、2021年11月、死刑執行が本人へ告知されるのが当日の執行直前であるという現在の死刑制度の運用は「違法」だとして、国に対して事前告知などを求める訴えを起こしています。

それに対して、古川大臣に見解を問うた形です。

以下、古川大臣と記者のやり取りです。

古川大臣「本人に対する告知は、執行の当日、執行に先立って行うこととしています。これはそれより以前に告知をすることによって、本人の心情に著しく害を及ぼすおそれを懸念しているからです」

記者「死刑囚の心情に配慮してということですが、事前に告知することに対する影響について今後の対応はどのようにお考えでしょうか」

古川大臣「訴訟については国として適切に対応していくわけですが、お尋ねの告知の時期をどうするかについては、先ほど申し上げたとおり執行日の当日に告知をするという方針に変わりはありません」

果たしてこうした現実について、どう考えるのが「正しい」のでしょう。

もちろん簡単な正解はありませんが、そもそもこうした事実があるということが考えるための第一歩になることは間違いないでしょう。

会見では、次のような質問も記者から飛びました。

「死刑制度は、社会にとって何か良い点があるのでしょうか。何かメリットがあるのでしょうか。社会のために、国民にとって、そういった重大な刑罰は何を意味するのでしょうか」

これに対して古川大臣は次のように答えています。

「先ほどもお答えしましたが、国民世論の多数が死刑の存在についてはやむを得ないものと考えている現状があります。
また同時に凶悪犯罪がいまだ絶えないという現状がありますから、こういう状況を考えたときにやはり罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しては、死刑を科することもやむを得ないと考えています」

死刑の現実を知ったとき、あなたはどう考えるでしょうか。

まずは死刑に関する知識をしっかりと学ぶことが大事であることは言うまでもないでしょう。

刑務官が明かす死刑の話 一之瀬はち(著、イラスト) 竹書房 (2021/4/30) 1,210円

全国の刑務官、約18000人のうち、実際に執行担当に選ばれる刑務官は様々な条件をクリアした0・1%と言われているーー。

メディアでは報道されない謎に包まれた現場で、どのようなことが起きているのか?死刑に立ち会った刑務官から聞いた、知られざる死刑の話を漫画家・一之瀬はちが描く!!

【目次】
第1話 執行担当に選ばれる条件
第2話 死刑に立ち会う刑務官
第3話 死刑囚の暮らし
第4話 死刑のルール
第5話 精神鑑定
第6話 死刑囚の移送
第7話 死刑が決まるまでの流れ
第8話 処遇部長
第9話 刑務所長
第10話 死刑に立ち会う医師
第11話 死刑に立ち会う検察官
第12話 教誨師
第13話 調達係 用度
第14話 拘置所で起こった事件
第15話 コロナ禍の拘置所
第16話 死刑にまつわる都市伝説
第17話 刑務官の過酷な仕事現場
おわりに

おまけ
刑務官の階級を教えて!!
死刑時の装備や道具を教えて!!
拘置所と刑務所の違いを教えて!!
拘置所内の隠語を教えて!!
刑場内を大公開

読者の声

「この本の中で、「執行ボタンを押す確率は、0.1%」とありますが、友人の知人が、刑務官で、それをした事があるそうで、当たる時には当たるんですね。」

「書店で何となく手に取って、内容の濃さにぶったまげた。エッセイ漫画って、超うすめのカルピスくらいに味がないのがふつうなのに、これは原液。死を目の前にした死刑囚たちがどのように行動するのかが、異様なほどリアルに描かれている。」

「死刑囚4人が脱走し、警官に首をはねられた事件が昭和40年代と書かれている。その頃警官が刀持ってたはずがないと思って調べたら、実際は明治時代のことらしい。作者も編集者もなぜおかしいと思わないのか。このことだけで全体の信頼性が低下した。次の版では直したほうが良い。」

ネットの声

「死刑になる人はたいてい複数の人命を奪っている。命を奪われた被害者だって殺される直前まで死ぬなんて思っていなかったであろう。そう考えれば死刑囚が直前に告知されることだっておかしいとは思わない。」

「死刑宣告を前夜にしていた時に、自殺した者が出て結果的に刑の執行が出来なかったから、当日宣告になった経緯がある事を考えれば、仕方ないのでは?」

「そもそも死刑は確定しているのだから、いつか執行されることはわかっている。直前告知でも問題ない。」

 

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