不死身と思っていた電撃ネットワークの南部虎弾が亡くなった…

南部虎弾さん死去 

「毎日焼酎のソーダ割を10杯くらい飲んでます。妻からは“腎臓返して”と…」

昨秋語っていた闘病生活

過激パフォーマンス集団「電撃ネットワーク」のリーダー・南部虎弾(とらた)さんが、1月20日に脳卒中のため亡くなった。

享年72歳。

かねてより糖尿病を患っていた南部さんは、妻からの腎臓移植によって身体が回復、「死ぬまで舞台に」と語っていたのですが……。

2019年に腎臓移植手術を

生きたピラニアをエイヤと飲み込んだり、睾丸にひもで結わえたコンクリートのブロックを持ち上げたり――。

観客が目を丸くする体を張ったビックリ芸の主は、糖尿病の悪化で足の甲が壊死しても、心臓にバイパス手術を受けても、なおステージに立ち続けました。

そんなタフな、というか無茶な男の最大の試練は、2019年の腎臓移植手術でした。

臓器の提供を申し出た妻

南部がそもそも人工透析を拒んだワケは、

“週に2、3日、何時間も拘束されたら地方公演や海外ツアーに行けなくなる”

というもので、糖尿病を克服するためはり治療や電気治療なるものにまで頼ったというのです。

これに19歳年下の妻が見るに見かねて臓器の提供を申し出ました。

「絶対にうまくいくはずがないと思っていましたよ。カミさんとの血液型がまったく違ったので」

とは南部ご本人。

彼の血液型はきわめて珍しいRhマイナスO型。ドナーとなる妻はRhプラスA型で、

「何度も適合試験を受けたのですが、拒絶反応を起こす『危険率』の数値がなかなか下がらない。そのため手術の予定は延期に延期を重ねました。血のつながった親族にいったんは望みを託したものの、唯一適合しそうな弟はC型肝炎持ち。ドナーとなるには不適格でした」

薬の服用などによって危険率の問題がクリアされたのは、移植手術を受けると決めた日から半年後でした。

それから4年が過ぎたのですが、幸いなことに、

「夫婦とも元気ですよ。カミさんは手術の数日後には退院して、病室のベッドに横たわるボクの世話をすぐにしてくれたほど。ボクの体調もバッチリです。酒も毎日飲んでいますので」

「腎臓を返してよ」

酒?

大丈夫なのか。

「血糖値が上がらないように焼酎のソーダ割りを飲むことにはしています。1日10杯くらいです。ストレス発散になるから、酒はどうしてもやめられない。臓器の提供に際してたばこをすっぱりやめたカミさんからは“腎臓を返してよ”なんて言われております」

見事な復活を遂げた南部さんでしたが、アルコールで健康維持なんていう芸のネタみたいな話では済みません。

「オゼンピックという糖尿病の治療薬を週に1回、注射しています。おかげで安定的に血糖値を抑えることができているんです。ただ、この薬は食欲抑制効果もあることから、近頃はダイエットのために使う若い子が増えていると耳にします。ちょっと不安ですね」

「移植に対する理解と認識が不足している」

若者を心配するとはこれまた殊勝なこと。

「いえ、この薬が足りなくなってしまったら、ボクはくたばっちゃうかもしれないから」

そう言って南部さんは笑うのですが、

「自分が今、こうして生きていられるのは腎臓移植のおかげです」

と一転、真面目な顔に。

「日本は医療大国なのに、30万人というすごい数の人が延命治療といえる人工透析を続けています。これは、移植に対する理解と認識が不足しているからではないかと思うんです」

南部さんは21年、一般社団法人「腎臓移植をすすめるネットワーク」を妻とともに設立。講演などを通じて腎移植の普及を図っています。

もちろん、過激パフォーマンスも継続中。

10月6日に東京都新宿区の東急歌舞伎町タワーで無料ライブを開催し、さらに11月26日には同じく新宿区のイベント会場バトゥール東京で、中村ゆうじや鳥肌実らをゲストに迎えて「電撃大忘年会」と題するイベントを開きます。

「映像や加工、配信の技術の進歩とともにウソと現実の区別がつきにくくなっている。そんな今だからこそ、生のパフォーマンスの価値は高まっていると思います。ステージで悶える僕らを見て“自分たちももうちょっと踏ん張ろう”と思ってもらえるようなネタをやりますよ」

舞台で体を張る。

腎移植の有効性をなにより雄弁に物語る行為ではないでしょうか。

ネットの声

「血液型が違っても腎臓移植が出来ることすら知りませんでした。私は子供の頃から病弱で入院もよくしましたから同じ病室仲間が死ぬことも重篤になるのも経験しました。私は違いますが先天性の腎臓疾患の子供が少くありませんでした。また小児病棟の私達を可愛がってくれていた病人仲間の高齢女性が結局人工透析を受けて不自由な生活を送っているのを理不尽な気持ちで見ていました。提供者等問題山積ですが移植の選択肢が増えると良いなと思いました。」

「売りにしていた南部虎弾さん。私生活も一般人が考えられない様な生活だったのでしょうか。糖尿病が悪化した時点で腎臓が悲鳴を上げていたと思ます。運良く奥さんから腎臓を提供して貰って手術も成功して生活も安定したのに酒を止める選択は何故出来なかったのだろう。亡くなった本人は自分のやりたい事をやって来て亡くなったのだからある意味本望だろうが、腎臓を提供した奥さんの決断は相当なものだったでしょう。奥さんから繋いで貰った命を大切にしなかったのは他人から見ると何故としか思えてならない。ご冥福をお祈りします。」

「透析目前で腎臓病でなく心不全で亡くなった母に、私も提供がちらついていましたが、移植しても6年ぐらいしか使えない可能性もあると読んだのと、母が、提供後は定期検診も続くし、自分の子どもたちが万一将来必要になったときのためにもとっておきなさいと言っていたので申し出ませんでした。もちろん必要にならないのが一番ですし適合するかもわかりませんが、親より未来ある子どもにと言ってくれた母に感謝です。」

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