
宇宙空間で死体はどのように変化するのか?
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が宇宙に旅立ったり、全クルーが民間人という宇宙飛行ミッションが成功をおさめています。
人類が気軽に宇宙に旅立てる日が来るという期待がにわかに現実味を帯びてきているのです。
地球とは大きく環境が異なる宇宙という空間で、「もしも死亡するとどうなるのか」という思考実験について、イギリス・ティーズサイド大学応用生物人類学科のティム・トンプソン教授が解説しています。
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地球では腐敗するが…
もし人が地球上で死んでしまった場合、重力により血流がたまり始めて皮膚の表面に死斑と呼ばれる痣が現れるほか、死体の体温が外界の温度まで低下する死冷という現象が生じたり、筋肉繊維にカルシウムがたまって死後硬直という筋肉の硬化現象が生じたりします。
こうした現象に加えて腐敗もまた生じ、腐敗によって腸内のバクテリアが体全体に広がり、体を膨張させ、強い匂いを発します。
この腐敗が続くと軟組織が破壊されることによって、死後硬直が元に戻り、最終的には骨だけが残ります。
これは宇宙飛行士ではありませんのよ。「スーツサット1号」と呼ばれる、廃棄予定だった宇宙服を通信衛星として再利用しようというアイデアから生まれた人工衛星ですわ(現在は運用終了)。cISS Expedition 12 Crew/NASA pic.twitter.com/rnxRaCVtsL
— 宇宙物理たんbot????学術系VTuber (@astrophys_tan) October 18, 2021
宇宙空間では腐敗しない
では、宇宙空間で人が死んでしまった場合はどうなるのでしょうか。
トンプソン教授によると、まず重力の影響を受ける死斑は宇宙空間では発生しないとのこと。
一方、続く死後硬直は身体組織がもたらす結果のため、宇宙空間でも発生します。腸内のバクテリアが軟組織の分解を始める点も同じですが、バクテリアは活動に酸素を必要とするため、酸素のない宇宙空間では分解のプロセスは次第に遅くなります。
「スプートニク」瀕死で帰還した宇宙飛行士の中にエイリアンが入っててそれを軍が研究利用しようとする話。エイリアンがバーンて出てきて闘うのかと思ったら全く違う!!ヒューマンドラマだった…派手さはないけどエイリアンが可愛く見えてきたしいい話だった? pic.twitter.com/TFK1hP0YUz
— 岸れん@A迅 (@94rein) October 26, 2021
ミイラのようになる
地球上では土壌の微生物の助けで分解が進みますが、地球の生命サイクルは他の惑星にはないため、地球と同じようには分解されずに軟組織が残る可能性があります。
さらに、火星のような乾燥した砂漠地帯では軟組織が分解されないことに加え、軟組織が乾燥し、ミイラのような状態になる可能性も考えられるとのこと。
また、温度変化の激しい空間では、凍結や熱傷などにより遺体が損傷する可能性もあります。
トンプソン教授は
「地球上でおきる完全な分解プロセスは宇宙空間では起こらないため、死体は『生きている人間のように見える』可能性が高いと考えられます。私たちが宇宙空間に住み始める際には、新しい死体の埋葬の仕方も考える必要があるでしょう」
と締めくくりました。