幽霊は自分自身?脳の錯覚か 「人工的に幽霊を作り出す実験」
幽霊とは一般的には「死んだ人」「成仏出来ない魂」といわれています。
ここでは幽霊の歴史や、本当に存在するのかについて迫ってみました。
目次
幽霊の歴史と文化
日本において、初めて幽霊が資料に登場するのは平安時代後期の文献です。
当時はまだ具体的な姿は描かれていませんでした。
後に伝統芸能である「能」の中で幽霊が登場する作品が出現し、怪談も語り継がれ始めます。
浄瑠璃本の挿絵には「足のない幽霊」が出現するものがあることから「幽霊には足がない」という概念はこの頃には存在していたとされています。
江戸時代になると「怪談噺」などが流行し、江戸の絵師達によって水墨画、浮世絵も多く描かれるようになりました。
絵師である円山応挙が描く幽霊は、足がなく髪が乱れ、青ざめた顔に白装束を着ており、リアリティーのある姿をしており、この姿が「日本の幽霊」の典型と言われるようになったのです。
日本で幽霊といえば「柳の木」がイメージされることも少なくありません。
柳の木は昔から「霊の宿る木」と考えられ、宝暦時代の「祇園女御九重錦」などの浄瑠璃にも柳の精霊が女性に化ける話が描かれています。
昔は風で揺れた柳の枝に頬を撫でられたりすると「柳の精の仕業」と恐れられていました。
柳の霊の姿は江戸時代の奇談集「絵本百物語」に出てくる「柳女(やなぎおんな)」が原型とされています。
他にも「雨月物語」「四谷怪談」など、幽霊が登場する有名な作品が誕生しました。
成仏できず、家に取り憑いた幽霊の主人公が霊媒師の力を借りながら、自分はなぜ死んだのか?成仏できないのか?を紐解いていき、すべての謎が明らかになった時、想像を絶する恐怖が解き放たれるという「私はゴースト」は幽霊が恐怖体験をする唯一無二のホラー映画。アマプラで観れます。死ぬの怖い。 pic.twitter.com/stjDKeEUd9
— DIZ ?? (@DIZfilms) October 6, 2022
心霊写真は「ある脳の働き」
最近は写真加工ソフトの普及のせいかめっきり減りましたが、「心霊写真」は幽霊の存在を象徴するものとして代表的です。
それは写真の中に人の顔のようなものが写っているものですが、これは「ある脳の働き」によるものと考えられるのです。
脳には生命維持のために、限られた情報から素早く結論を出そうとする重要な働きがあります。
この働きが存在しないものを間違って検出してしまうのです。
例えば、壁や天井のシミや柄が人の顔に見える時があります。
顔の認識は生きていく上で大変重要で、友好的か非友好的かが素早く判断できないと危険や争いを招きかねません。
表情を見分けて素早く判断することは脳にとって大変重要な処理なのです。
表情の判断に優れている人ほど、写真の影などを幽霊だと間違えやすいのです。
そのような顔認識や創造的思考は右脳に関連しています。
ある実験によると「超常現象的な体験をしている人ほど右脳が優勢を示している」という結果となっているのです。
また別の話で「幽霊の声を聞いたことがある」というのがあるのですが、これは「フレイ効果」の可能性があるとされています。
フレイ効果とは、変調マイクロ波によって脳内に直接クリック音、変調音、単語が誘発される感覚現象。
その不可解な音を心霊現象と捉えたのだと考えられます。
ホラー好きというと「グロ描写OKなのね」と認識しちゃう人も世の中多いと思うのだけど、実は僕、肉体損壊描写とか痛覚表現とかは結構ニガテなんですよね。
じわじわ迫る幽霊ホラー等の方が
怖いと感じるし、クリーチャーホラーは好きだけど、グロさより造形の面白さとかで気に入る場合が大抵です。 pic.twitter.com/ywbJiEOg9a— ふゆなご (@FuyuNago) October 11, 2022
人工的に幽霊を作り出す実験
いるはずも無い「何か」が側にいるという感覚を「存在の感覚」といいます。
この感覚を生み出す脳の領域について調べた実験があります。
2014年に発表されたこの実験はスイスの研究者達により行われました。
「存在の感覚」を感じたことがあるという沢山の人たちは、脳の神経障害を患っている人が多かったのです。
その患者たちの脳を調べたところ、自己認識・運動・空間的位置の認識を司る部位である、島皮質・前頭頭頂皮質・側頭頭頂皮質の領域で障害があることが確認されました。
また研究者達は脳の神経障害がない健常者を被験者としたある実験を行っています。
この被験者は目隠しをされ、目の前にある機械式アームロボットに人差し指を繋がれています。
被験者がこのロボットを操作すると、被験者の背後にある別のアームロボットも同様に作動するようになっています。
この背後のロボットにはスティックが付いていて、直接被験者に触れることが出来るのです。
雑。英国では幽霊を見かけても基本的に(ああ、いるなあ)で放置するのですが、たまに挙動不審な幽霊がおるわけで、そういうのには教会墓地の土をぶつけるとよいのだそうです。なにか別物が化けている場合は正体が露見するとのこと。図は牧師さんの幽霊。生前より説教が面白いと疑われております。 pic.twitter.com/UUDSfjRQ8Q
— 西洋魔術博物館 (@MuseeMagica) October 10, 2022
被験者が前方のロボットを指で押す動作をすると、後方のロボットも押す動作をし、被験者の背中を押すという仕掛けです。
実験ではロボットが被験者に触れるタイミングを2パターン行いました。
最初は、前後で同時に作動させ、被験者に触れるというもの。
次は、後方のロボットが前方のロボットより0.5秒遅れて被験者に触れるという内容です。
結果は、前者の被験者はあたかも自分で自身の背中に触れたように錯覚したのです。
そして後者においては、なんと得体の知れない「何か」に触れられたように感じられ、気味の悪い幽霊のような気配だったというのです。
この実験では人工的に「存在の感覚」を作り出すことに成功しました。
それは歪んだ感覚運動信号により引き起こされたものであると考えられ、自身の動作が自身のものでは無く、いるはずの無い「何か」のものと錯覚したのです。
すなわち脳は「確実に自身の動作を理解しているわけではなく、自身の動作を見失ってしまう可能性がある」ということです。
脳はいくつかの身体イメージを持っていて、それらは通常では1つに統合されて身体と意識の統一感が保たれています。
しかし脳の神経障害や今回の実験のような錯覚を起こすと、別の身体イメージが現れて自身の身体があたかも他人の身体であるかのように感じてしまうのです。
脳は少しの錯覚で自身の認識が出来なくなり、脳内に存在する「亡霊」を出現させていることがわかりました。
しかし、世の中にはどうしても説明の出来ない怪奇現象は数多く存在します。
それらもいつか解明される日が来るのでしょうか。