テレビで自衛隊・海保特集の「準レギュラー化」が進んでいる「切実な理由」

このところ自衛隊と海上保安庁を扱う番組が増えています。

特に今夏は、陸上自衛隊が舞台のドラマ『テッパチ!』(フジテレビ系)が3カ月弱にわたって放送されたほか、7月6日にゴールデン3時間特番『超絶限界 ~陸上・海上・航空自衛隊ソコまで見せる!? 大百科~』(フジテレビ系)、9月4日にゴールデン3時間特番『超スゴ! 自衛隊の裏側5 陸・海・空! TV初公開連発SP』(テレビ東京系)が放送されました。

連続ドラマも大型バラエティ特番も

16日夜の『沸騰ワード10』(日本テレビ系)でも、海上保安庁の特集が放送されました。

ちなみに同番組は自衛隊と海保の特集を今年2回、昨年6回放送しているので、“準レギュラー企画”と言っていいでしょう。

その他でも、今年1~3月に海上保安庁が舞台のドラマ『DCU』(TBS系)、昨年4~6月に雑誌編集者と航空自衛官の結婚を描いた『リコカツ』(TBS系)を放送。バラエティでも『ジョブチューン』(TBS系)や『ウラ撮れちゃいました』(テレビ朝日系)などで自衛隊と海保の特集が放送されてきました。

そもそも自衛隊は防衛省、海上保安庁は国土交通省の組織であり、任務の内容も大きく異なるのですが、テレビでの扱われ方はほとんど同じと言っていいでしょう。

つまり、制作サイドは両者を同列に扱って企画を増やしているのですが、その理由はどういったことなのでしょうか。

映像のスケールとコストの安さ

テレビ局が自衛隊と海上保安庁の特集を放送する最大の理由は、スケールの大きい映像が撮れるから。

たとえば、『超スゴ! 自衛隊の裏側5 陸・海・空! TV初公開連発SP』は「ブルーインパルスのスゴ技飛行10連発! 最新戦車の禁断内部に潜入」、『超絶限界 ~陸上・海上・航空自衛隊ソコまで見せる!? 大百科~』は「陸自レンジャー&海自最速ミサイル艇&炎! 陸海空自衛官大集合」を見出しにしていました。

また、『テッパチ』は「防衛省全面協力」、『沸騰ワード10』は「海猿 超過酷訓練に密着」を前面に押し出しています。

ブルーインパルスの飛行をはじめ訓練のシーンは圧巻であり、最新戦車の映像もインパクト抜群。

「テレビ初公開」のキャッチコピーがつけられるものが多く、自衛隊や海上保安庁のファンでなくても「見てみよう」と思わされるのです。

さらに、「日本を守るために隊員や保安官が奮闘する」という前提での感動秘話にも事欠きません。

さまざまな職業を紹介するバラエティは少なくありませんが、その中で「自衛隊と海上保安庁は希少かつハートフルな映像を見せられるもの」と位置付けられているのです。

「スケールの大きい映像を撮れるのに、制作費を抑えられる」ことも、自衛隊と海上保安庁の特集が多い理由の1つ。

自衛隊と海上保安庁の撮影は基本的に「通常の訓練に同行する」、あるいは「施設を特別に見せてもらう」という形が多いため、他のロケと比べて制作費を抑えられるのです。

また、放送収入の減少で制作費が抑えられているほか、コロナ禍での取材制限もあり、「長期密着取材や海外ロケが難しくなっている」という背景も見逃せないでしょう。

その点、ピンポイントでの撮影が可能で、広報が段取りをきっちり整えてくれる自衛隊と海上保安庁は、制作サイドにとって何ともありがたい取材先なのです。

「全面協力」が次々に行われる理由

その広報が手厚くサポートしてくれることも、テレビでの特集が増えている理由の1つ。

かつて航空自衛隊の広報室が舞台の『空飛ぶ広報室』(TBS系)というドラマがありましたが、自衛隊と海上保安庁はテレビを重要な広報活動の1つと位置付けています。

それは『テッパチ! 』が「防衛省全面協力」、『DCU』も「海上保安庁の全面協力」を打ち出していることからもわかります。

自衛隊と海上保安庁にとって、「国民の信頼と協力を得る」「隊員や保安官の募集」などの意味で広報活動は重要。

その意味で「凄い」「カッコイイ」「正義の味方」などのポジティブなイメージで描かれるドラマとバラエティは、組織や活動の理解促進とイメージアップに直結するのです。

わかりやすいイメージアップの方法としてあげておきたいのは、ドラマでは美男美女の俳優を集め、バラエティではジャニーズなどの人気者を起用していること。

特に『テッパチ!』は、主演の町田啓太を筆頭に顔も肉体も美しいイケメン俳優たちをそろえ、ヒロインの女性自衛官にも美ぼうで知られる白石麻衣を起用。

彼らが懸命に訓練や災害対応などに挑むほか、仲間との友情や絆を描くことで、親しみや憧れを抱かせる構成にしています。

「陸上自衛隊の広報ドラマ」なんて揶揄する声もネット上に散見されますが、あながち間違った見方ではないのです。

さらに、『超スゴ! 自衛隊の裏側5 陸・海・空! TV初公開連発SP』ではA.B.C-Zの河合郁人が空中給油・輸送機に乗り、『超絶限界 ~陸上・海上・航空自衛隊ソコまで見せる!? 大百科~』ではSexy Zoneの菊池風磨がMCを務めたほか戦闘機に乗るなど、ジャニーズが立て続けに体験取材していました。

もちろん制作サイドがキャスティングしているのですが、「この人なら自衛隊と海上保安庁も喜んでくれるだろう」というニュアンスがあるのは確かでしょう。

その他でも、防衛省が編集協力する唯一の広報誌『MAMORU(マモル)』の表紙を『テッパチ!』主演の町田啓太が飾り、『沸騰ワード10』では自衛隊マニアとしてリポーターを務めるカズレーザーに防衛大臣が感謝状と記念メダルを贈るなど、広く国民に訴えかけられる広報活動が行われています。

鉄道・航空、警察・消防も同ケース

自衛隊と海上保安庁に似た扱いとして多いのは、鉄道・航空関連の特集。各局が「ドクターイエローに潜入」などの特集を放送していますが、その理由は自衛隊や海上保安庁とほとんど変わりません。

警察や消防なども含め、テレビ局も取材先もそれなりのメリットがあるからこそ準レギュラーのようなタームで放送しているのです。

実は昨年、日本テレビは『沸騰ワード10』や『深イイ話』で今年以上に自衛隊と海上保安庁、鉄道や航空などの特集を連発し、業界内では「日テレはうまいことやっている」などと言われていました。

日本テレビがうまかったのは「レギュラー番組の中で準レギュラー化する」という戦略。

映像のスケールが大きくても放送頻度が高すぎると飽きられるリスクがあるだけに、準レギュラー化くらいが自局にとっても取材先にとってもちょうどいいのでしょう。

一方、他局は日本テレビの戦略をそのままマネするわけにもいかず、大型特番やドラマという別角度のアプローチからほどよい頻度で放送。

あるいは、スケールの大きい映像やコスパの良さをあきらめて、動物などの癒しを優先させた戦略を採っています。

最後に話を自衛隊と海上保安庁の特集に戻すと、現在の状況は「増えた」というより「準レギュラーとして定番化された」と言っていいかもしれません。

両者ともに、テレビでの扱いによるイメージアップは欠かせないのです。

ネットの声

「一時期流行った「日本スゴイ系」が減り、そのポジションに「自衛隊特集」が増えている。自衛隊側は知名度向上と採用に期待してるのだろうけど、採用面では成果を上げれていない。タレントやアイドルをお客さんとして自衛隊を紹介するのも食傷気味。正面装備を取り上げるのもネタ切れするので、採用の裏側や後方職の武器科・需品科にスポットを当てるのも面白いはずだ。採用では、予備役が圧倒的に不足している。
有名人を起用せず、一般人が予備自衛官となるまでの過程を番組として成立できないのか。それに海外であるような政治家が予備自衛官でなくとも数日間隊員と同じ生活を送るのも面白いだろう。」

「昔からしたら、テレビに自衛隊がポジティブに取り上げられる時代になったのだと思った。
ウクライナ問題や中国の現実的な圧力と脅威を感じている事、今までの地道な災害救助活動等が認められ、自衛隊員・家族というだけで非難や差別された時代もあったが日本も変わったと思う。」

「憧れて入っても、セクハラパワハラのオンパレードじゃねぇ・・・
規律が大事と言うなら、そこら辺から正していくことが肝心でしょ。
災害が多い日本では、自衛隊という組織は常に必要とされるから、尊敬の念を持たれる組織であってもらいたいと思う。」

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