BALMUDA Phoneが残念なワケ…デザインと値段を天秤にかけても分が悪すぎる

BALMUDA Phoneには何が欠けているのか 「デザイン」と「新規参入」のジレンマ

11月16日、バルミューダは自社開発スマートフォン「BALMUDA Phone」を発表しました。

「私たちの手は、板状のものを持つために造られていません」と主張

しかし、SNSなどを見る限り、その内容を素直に喜んでいる人は少ないように見受けられます。

では、なぜBALMUDA Phoneを物足りないと感じているのでしょうか、その点を分析してみます。

そこからは「スマホとはどのような製品なのか」ということが見えてくると思うからです。

バルミューダに求めていたものが欠けていた

今回のBALMUDA Phoneについては、バルミューダのブランド価値を活かせていません。

よくない商品です。

強い購入意欲を持つことはないでしょう。

なぜなのか?

「高い」「スペックが低い」といった意見が目立ちますが、それは現象の一部を切り出したものに過ぎません。

本質的な話をするならば、「バルミューダに求めていたものが欠けていた」からでしょう。

バルミューダは、形にこだわった製品を作る一方、コアな変化を追加することで他の家電メーカーに対抗してきました。

けっして多機能なわけではなく、コア機能一本勝負といってもいいでしょう。

一番有名なのは「BALMUDA The Toaster」。

蒸気を併用しつつ温度コントロールを行うことで、パンの種別に合わせて美味しい焼き方ができます。

筆確かに「今までのトースターとは違う体験」を得られます。

では、BALMUDA Phoneはどうでしょうか。

普通のスマホにしか見えないのです。

もちろん、持ちやすいでしょう。

形もかっこいい。

スケジュールアプリも使いやすく、呼び出しが楽なのだろうと思えます。

しかし、それはそんなに特別なことではないのです。

スマホには多数のアプリがあって入れ替えられるし、形もいろいろあります。

「今のスマホには選択肢がない」と、バルミューダの寺尾玄社長は話していましたが、そこにはちょっと同意しかねるところがあります。

バリエーションはあるのですが、価格や必要な機能などの課題もあり、選択に偏りが出やすいだけなのです。

そもそも、なぜ市場にこれほどスマホケースがあるかというと、そこに個性を求めている人が多いからでもあるのです。

その市場価値を軽く見てはいけません。

逆に、マイナーでケースの少ないスマホは「個性を演出できないスマホ」だと思われかねないのです。

表裏一体の状況といっていいでしょう。

「ディスプレイ部分を含めてどこにも直線がない」。

では、それは本当に、このスマホでしかできない体験なのでしょうか。

また「スマホが直線的である」ことがペイン(苦痛な)ポイントだったのでしょうか。

もっと言えば、同じようなサイズではるかにスペックが良い「iPhone 13 mini」より高い値段で売られることに対する説得力を持ちうる体験なのでしょうか。

多くの人にとってそれが感じられないから、BALMUDA Phoneを評価する声が少ないのでしょう。

「体験で語るデザイン」が不足している

ここまで、あえて「デザイン」という言葉を使わずにきました。

デザインとは一般に「形」のことを指すことが多い。

特にスマートフォンのような製品ならなおさらです。

デザインとは「どういう体験ができるのか」ということ全体です。

形はとても重要なもの。

画面表示やアプリの動作も同様。

ソフトとサービスが製品の完成度を決める上で重要な要素になってくると、この領域も当然デザイン、ということになるのです。

BALMUDA Phoneは、形とソフトの工夫の面で独自のことをしています。

しかし、それだけではまだ「デザイン」としては不足。

そのスマホを買うとどういういいことがあるのか、という点をわかりやすく示すことや、そのための仕掛けも、いまや「デザイン」の範疇に入るのです。

例えば、新しいスマホへの移行が簡単になるソフトを作ることは付加価値の1つに過ぎないのですが、箱を開けると転送ケーブルがまず目につき、「ああ、これでつなげばいいのか」を分かるようにしてあり、さらに、ケーブルをつなげばそれだけで移行作業が始まったりすると、これは確実な「体験のデザイン」と言えるでしょう。

BALMUDA Phoneが主張するように、現在のスマホの大きさや形への不満を解決する、というのは1つの方法論かと思います。

しかし、それを「形としてのデザイン」に頼って表現してしまっても、「ああ、コンパクトなスマホだな」で終わってしまうのです。

これを買うとどういう体験ができるのか、どう今までと違うのか、という「体験のデザイン」が求められます。

そういう意味では、あの形状は特徴的ではあるのですが、本来のターゲットユーザーがどこか、見えづらいのです。

背中が丸いスマホは過去にもいくつかありましたが、今は少なくなりました。

なぜなら、机の上に置いた時にくるくる回りやすく、安定しないから。

見かけなくなった形状には、一定の意味があるのです。

アンケートを取れば、「スマホは大きくて持ちづらくなってきた」と答える人は確かに多いでしょう。

「デザインも画一的だ」と答える人も多いと思います。

そうした顧客を狙うのはもっともなやり方です。

しかしそれは、ファストフードの顧客にアンケートをとれば、必ず「ヘルシーなメニューを」「サラダセットの充実を」という要望が出てくるのと同じです。

重要であり絶対求める人がいるのですが、主ではないですし、求める場が違うこともあります。

意外と、別の新しい真逆の要素がヒットの要因になることもあるのです。

ふんわりした言葉ではなく、「何に困っている人に」「どんな体験を提供するのか」という点をテコにし、ソフト、サービス、形状をセットで考えて、初めてある種の価値が提示できます。

ただ、それを毎回やるのが大変だから、各社は大量のマーケティング調査をし、ラインアップをシリーズ化し、ユーザーシナリオを作ってカタログを埋めていくのです。

あまり面白味のないやり方に聞こえますが、逆説的に言えば、そうした手法を抜け出るには圧倒的なパワーが必要ですし、失敗も覚悟しないといけません。。

独自性の前に横たわる「量とコスト」の論理

実際のところ、スマホとしてベーシックな価値で差別化するのは意外と難しいものです。

なぜなら、汎用機であるスマホにとって、ベーシックな部分は当然「誰もが求める=どのメーカーも求める」ものだからです。

Androidであるわけですし、プロセッサもQualcomm。

そうしたプラットフォームの上に乗るからには、できることの選択肢は限られてくるのです。

ソフト的に見ても、本当にコアな部分は手を入れづらく、無理にやろうとすればするほど長期的なメンテナンス性で苦しむことになります。

ディスプレイなどで独自パーツを使っているために高価になった、という部分があるようですが、価格差の理由とするには目立ちづらい部分です。

サイズが下がった上にインカメラがパンチホール処理なのはあまり好きではないところです。

9:16の画面比も、より縦に長いスマホが増えた結果新鮮味をもって見えますが、冷静に考えれば以前はよくあったものでもあります。

実際には「作れる中での最適解」だった、ということなのでしょう。

こういう部分で、一定の思想をもって特別なパーツを選んで使うと、それは1つのストーリーになりやすく、消費者の目にも説得力なって見えてくるのです。

しかし、それには「数とコスト」も重要だし、変化が見えやすいことも重要です。

特別なものを作るにはそれだけお金がかかり、スマホはそれを量産効果でカバーする場合がほとんど。

今回のBALMUDA Phoneが高く見えてしまう背景には、自然な形を目指したがゆえにそうした部分での独自性が薄く感じられ、「SoCの性能などから判断するとかなり割高に見えてしまう」ことがあるように思えてなりません。

「スマホの外で勝負をかける」手もあったのでは

スマホに新規参入するメーカーにとって、ハードルはたくさんあります。

京セラのように経験豊かなパートナーを国内に見つけられたのはバルミューダにとってプラスだったでしょうが、そこでできることもまた限られてくるのです。

現実的選択は悪いことではありません。

ビジネス的に見れば、BALMUDA Phoneは、大量に在庫が残ってしまう事態さえ防げれば、ソフトバンクとの関係もあってシュアな状態で終えることができるかもしれません。

うがった目で見れば、「価格高めで保守的なハードウエア」はそうしたビジネスありきにも見えます。

しかし、きっと彼らはそう思われたくないはずなのです。

問題はそれをどう見せるか。

スマホの中だけで説得力のある違いを作れないのなら、「外」を生かしてもいいでしょう。

もっともわかりやすいやり方が「価格」です。

パーツから見える納得力の高い値付け、というのはそういう部分だと思われます。

BALMUDA Phoneがせめて6万円台で買えていれば、形状の特徴が「納得のデザイン」になっていた可能性は高いのです。

売り方もあるでしょう。

今回の施策の中でも感心したのは、直販の場合、スマートフォンであっても、同社の特徴である「30日返金保証キャンペーン」をやったこと。

そうした施策は、企業としての一貫性を考える上で重要な点と言えます。

IoT的なものでなくても、同社の家電との連携があっても良いのかもしれません。

BALMUDA Phoneの中からしか読めないレシピが提供されるとか、食材通販があるとか、サポートを受けるときに手間が1つ2つ減るとか、そういう話でもいいのです。

スマホ初参入のバルミューダに、「ハードの特異性」でもともと期待していない人も多いでしょう。

楽しみにしていたのは、そういう「なぜスマホまでバルミューダにするのか」という理由づけであり、演出だったのです。

それがあまり見えなかったのは残念と言っていいでしょう。

寺尾社長の言うように「すでに複数台の開発に着手」「スマホとはいえないようなサイズのものも」ある、ということなら、あえてスタンダードよりそちらを先に出し、すぐにスタンダードもアピールする……というような、順番を入れ替える作戦が良かったのではないでしょうか。

同社がデジタル機器で長くやっていくつもりなら、別にスタンダードから始める必要はありません。

スタンダードには信頼が必要。

信頼は、そのままストーリーになり、自社製品に込められた思いに付加価値をつけるドレスになるのです。

スタンダードこそ、同社が本当の意味で満を持して切るべきカードであり、それは初手ではなかったのではないかとも思えます。

ネットの声

「せめて高くても7万台ならね、他に比べてちょっと高いけどバルミューダってブランドだし良いかな?って気持ちになる人もいるとおもうけど、スマホさほど詳しくない一般人が10万超えるandroid機を買うかな?その値段ならiphone買うってのがほとんどじゃないかな?更にソフトバンクなら14万超えるし…なんかiphoneに対抗してドコモがプラダフォン、auがIS03を出してきた事を思い出してしまった」

「バルミューダって大手家電メーカーにはないが一部ユーザーが求めていた機能とデザイン性が合わさったことにより話題になって結果的にデザイン性だけで購入してくれる人も増えたって認識。このスマホは素人眼にはiPhone3Gっぽい懐かしいデザインだなって思ったし、ニッチな機能も不足している様に思える。いっそのことフリスクぐらいのサイズの超ミニミニスマホでも作ったほうが需要ありそう。」

「欲しいと思う要素が一つもない。無料だったとしても。デザインもカッコいいとは思えないし、スマホケースも選べない。他の製品までカッコよく思えなくなってきた。」



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